表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/108

第51話 風立ちてクイント

『三、二、一……新年あけまして、おっめでとぉ~っ!』


 私の念話で年越しカウントダウンを行い、新年の挨拶をした。

 広場も大通りも柔らかな魔導灯に照らされ、真夜中だというのに、国民達が飲めや歌えの大騒ぎだ。

 昼間の誕生祝いのお祭り騒ぎが、そのまま続いている感じではあるが。



 さて、元旦から発売された物が二つある。一つは、午後の女魔王。

 そしてもう一つは、姿見水晶だ。予約券を発行しているので、恐らく大きなトラブルはなく販売出来ると思う。同時に私の姿見写真集の第一弾が(十種入りで大銅貨一枚)お手軽価格で発売された。これは私が様々な衣装を着てポーズを取った立体映像集だ。

 今回は特別に、魔王服姿と鬼人族の伝統衣装姿の二種類を発売した。

 今後の予定では、その季節に合った衣装や、これまでの催し等で着たドレス姿の姿見を、毎月販売してゆくつもりでいる。


 季節もの定番と言えば、夏の水着だよね。他にも女性向けの企画も準備中だ。

 ちなみに大銅貨一枚でおよそ千円程。その半分が私の取り分なので、百万部売れると五億スフィア入ってくるの。クロは八割でと言ったが、それじゃ経済が回らないので却下。私も自分の利益から二割、税金を納めるつもりだ。国民は五年間免税中だが、魔王には当てはまらないのである。


 今後の展開としては、うちの可愛い勇者達の姿見も販売してゆく予定だ。

 幸いな事に、うちには美女と美少女がそろっているからねぇ。げへへ。

 企画ものとしては、勇者シリーズやお姫様、王妃様シリーズなんて良いと思う。各国に打診しよう。

 そして姿見販売に参加したい企業も募集する予定でいる。例えば劇団の花形スターや演目のワンシーンを姿見にしたり、自社製品の広告に使用したり、もちろん我こそはという美男美女も大歓迎である。

 そう、姿見水晶には、様々な可能性が詰まっているのだ。


 その姿見水晶を売るのは、私のお店“桔梗屋”だ。予定してた店舗はすべて動き出し、各地の名産などを販売するアンテナショップとしても機能し、利益も出ている。

 例えば、魔都特産の白アリゲー肉や鬼酒(日本酒)を北部の支店で販売したり、逆に北部特産の肥えたナラーノセント肉(鹿肉)やワインを魔都で売ったりね。


 姿見写真集のデータは、専用の魔道具からデータ水晶に書き込んで販売するので、魔道具を貸出し、桔梗屋のない町でも購入できるようにしたいと、文官が提案していた。


 これって、前世の記憶で便利道具作って商売する異世界転生ラノベのパターンだよね。まぁ私の場合は、魔道具ギルドの提案を乗っ取った感じだけれど。


 

 クイントの修練は順調で、薙刀術はヴァルバロッテも舌を巻く程の才能を示し、空戦能力は勇者に匹敵すると、シルヴィアも太鼓判を押した。

 そんながんばり屋さんのクイントに、こっそりとプレゼントを用意したよ。

 宝物庫にあった彼女に打って付けの装備である。


「こっ……これは……」

「頑張ったクイントにご褒美よ。そして今日からあなたは、私の戦乙女です」


 それは白と紫の戦乙女専用の鎧とランス、そして黄金の薙刀だ。

 どちらも前世の夫、鍛冶王ムネの作品である。

 もし私が翼人族に生まれ変わっていたらと想定し作ってくれたもので、間違いなく世界最高峰の戦乙女装備だ。

 彼女はメインウエポンが薙刀なので、サブのランスは魔法のポシェットに出し入れ出来るようにした。

 更に戦乙女の加護と強化系と防御系の付与を施したアクセサリーを装備させ、鎧と武器にも、強化やリペア等、付けられるだけの付与を施しまくった。


 まさに、威風堂々。

 白き戦乙女装備を纏った彼女には、その言葉がとても似合う。

 そんなクイントが、私の前に両膝をつき、薙刀を私に差し出した。


「戦乙女クイントは、キキョウ様に絶対なる忠誠と、この身と心の全てを捧げ、命続く限りお仕えいたします」


 私は薙刀を受け取り、彼女の肩に剣先を載せ忠誠に応えた。


「クイント、あなたの忠誠を受け取りましょう。生涯、私と共にありなさい」

「はっ! ありがたき幸せ!」


 まるで騎士物語のワンシーンのようだと、ベルテ達が感嘆のため息をつく。

 そして、幼児退行した時のクイントを思い出し、ニッコリ笑顔で暖かく見守るのだった。


 一月も終わろうとする穏やかな冬の日。

 何のアポもなく、御輿に乗ったスカイランド王が魔都上空に現れた。

 八人もの翼人に吊られた華美な御輿に乗る太っちょ王様って、とてもシュールだわ。持ち上げてる彼らが超重そうで可哀想。


 太っちょ王は、封印城の大扉を開けるよう命令してきた。

 だが、中々扉が開かない事に業を煮やし、なんと大扉に向け攻撃魔法撃ちこんできたのだ。

 オイオイオイ、死ぬわアイツ。龍王の宝を攻撃しちゃったよ。

 恐る恐る、玉座の右に立つクロを見ると、あれ、怒っていない?


 大扉が開くと、御輿に乗ったままスカイランドの王が私の前にやってきた。

 でっぷりとした不摂生丸出しの王だ。カリマー様の方がデブちんだが、ずっと健康的に見える。

 そして周囲を護る十人のバルキリーは、容姿の整った美しい娘ばかり。

 この視線は……私への嫉妬心? 私達を地虫と蔑んでるのに、何故?


「余がスカイランド王、ハーガンである。成程、地虫の娘の分際で中々美しいではないか。王子がこだわるのも無理はないな。そなた、余の百三番目の妃にしてやろう。しかも序列は十位だぞ?」


 バルキリー達の視線が更にきつくなった。ひょっとして彼女達は、この王の妃達なのか。


「お断りします。私には大切な相手が既にいるので。それより、そんな事の為に来たのではないのでしょう?」

「ははは、そうであったな。噂に聞く四翼の娘を渡すがよい。さすればそなたを妃にするだけで、この地に手を出すのは赦してやろう」

「お断りします。お帰りください」


 なんかもう、犬猫を相手にしてた方がずっと健全な意思の疎通ができそう。だが翼人族は、これが普通にまかり通るお国柄と民族性なのだろう。


「この国が滅んでもいいと申すか? この地の上空には、既に千人のバルキリー達が、五人で勇者一人に匹敵する精鋭が、余の命令一つで都市を瞬く間に滅ぼすのだぞ」

「クイント!」

「はっ」


 魔王の間上空から、美しい声が響き渡る。

 美しい螺旋を描きながら、ふわりと私の側に降り立つクイントに、この場にいる全ての者が感嘆の声を漏らした。


「おおお……なんという美しき翼か……ただ今より、そなたが余の“正妃”である!」

「お断りです」

「だよねぇ、彼女は私のものよ。誰にもあげない」

「なぜ拒絶する! 神に選ばれし天神王の正妃だぞ!」

「あなたは、もっと世界を知った方がいいわ。この地に来る他国の王は、みんな謙虚よ」

「下手に出ればつけ上がりおってぇ……」

「あなたのどこに下手に出た要素あったのかしら」

「もう容赦せぬ、あの無礼者達を取り押さえろ! 余が直々に躾てやろうぞ」

「クイント、やっておしまい」


 ふとっちょ王の命令で十人のバルキリー達が私に向かって飛び出した。

 だが遅い。既にクイントは私のそばに居ないのだから。

 刹那、先頭の娘の羽根がぶわぁっと舞った。続けて後方の娘の翼も綺麗に切り飛ばされ、羽根が舞う。そして瞬く間に十人全員が翼を失い、大量の羽根がふわふわと、花吹雪のように舞い散った。

 

「なっ……何が起きたのだ……」


 王にはクイントの動きが全く見えなかったようだ。既に彼女は私のそばに戻っており、とても満足げである。

 翼を失った娘達は、放心し動けぬ者。頭を抱えうずくまる者。落ちてる羽根を必死に集める者。完全に戦意喪失状態だ。翼人族にとって、翼を失う事は奴隷落ちを意味する。

 翼の内部を通る魔力の流れは、大きく傷付くと回復魔法でも修復不能なデリケートな存在らしく、そうなると翼人族的に人生終了と同義らしい。

 

「バルキリーは五人で勇者一人に匹敵って謳ってるそうだけど、盛り過ぎでしょ。さて、翼人族の王よ」

「ひぃっ、お前達っ余を護れ!」


 御輿を担ぐ男達は屈強な体躯だが、丸腰で非戦闘員のように見える。クイントが黄金の薙刀を向けると、悲鳴を上げ御輿を落としてしまった。当然、王も一緒に転がり落ち、ごろりんと股間丸出しの無様を晒した。


「おのれえええっ、タダでは済まぬぞぉっ! この街を滅ぼしてやるわ!」

 

 王が取り出した魔道具が輝く。どうやら魔都上空に待機してる千人の戦乙女達に命令を下したようだ。


「後悔するがいいっ、がはははは!」


 そんな小者感溢れる捨て台詞を吐きながら、外に向かって飛び立っ――てない。

 太り過ぎて上手く飛べていない王。まるで水中歩行するダイエット中のおじさんのようだ。


 逃げる王に向け、私は右手をかざし、ぎゅっと握る。

 すると宙より現れた白鬼の白い手が、王をぶぎゅりと鷲掴みにした。


「クイント、シルヴィア、ノエル。バルキリーを殲滅してちょうだい。殺しは可能な限りなしで。しらふじは、全体のサポートをお願い」

「御意に」「了解」「あい」「はーい」

 

 クイントがノエルの手を握り外へと飛び立つ。

 シルフィードを呼び出したシルヴィアは、アーマードランサーモードにチェンジ。

 甲高い音を響かせ、そして轟音を立てながら大扉の外へ飛び立った。

 静かになった魔王の間で唯一雑音を発生させるハーガン王。ブヒブヒうるさい。

 普段なら「殺しますか?」そう冷ややかに言いそうなクロから、とんでもない爆弾発言が投下された。


「キキョウ様。その男、前世のあなたの息子ですよ」

「は……これが?」

「はい、先代スカイランド王は夫の一人です。まだご健在ですよ」

「……ヴァルバロッテ。この男、あなたの異父姉弟みたいよ」

「はい、殺しますか?」


 うわ、温和なヴァルバロッテからそんなセリフを聞くとは思わなかった。


 魔都上空。ノエルはクイントから手を放し、自由落下しながら龍化する。

 翼幅二百メートル近い白き巨龍が現れると、上空へ向け風系攻撃魔法スパイラル・ディザスターを放った。


 攻撃命令を受けたバルキリー騎士団は、皆笑みを浮かべながら魔都へ降下を開始した。

 実はなんと、彼女達のほとんどが初めての実戦だ。普段は自国の奴隷街に向け、空対地攻撃の訓練を行っており、奴隷達が慌てふためき逃げ惑う姿を思い出し笑いする者もいる。

 しかも今回は略奪が許されているのだ。自国の王都より美しく、ずっと豊かに見える都市から、どれほどの財が得られるか仲間と競争である。

 そして奴隷も捕まえ放題で、持ち帰るのが大変そうだ。ならば見目の良い子供を大勢攫おう。などと自分の勝利を全く疑わず、降下する千騎のバルキリー達。


 だが、突然降下先に白き四翼の龍が現れ、巨大な竜巻を発生させた。

 凄まじい暴風にちりぢりになる編隊。そこに何かが猛烈な速度で通り過ぎると、花吹雪のように羽根が舞った。

 何が起きた? 自分の翼が切断され無くなった事に気付いた者は、絶望の悲鳴を上げながら落下してゆく。

 難を逃れた者は見た。淡く輝く四翼の戦乙女の姿を……


「あははははは!」


 クイントは歓喜しながら、逃げ惑うバルキリー騎士団の翼を刈りに刈ってくってゆく。蹂躙の時間の始まりだ。

 バルキリー達が反撃しようにも、クイントの攻撃速度に全く対応出来ていない。

 加速力も旋回力も最高速度も段違いにクイントが上なのだ。

 

「おのれぇっ! この私の攻撃が――」 


 戦乙女の称号を持つ、最も優秀なバルキリーであっても、得意のランスチャージが全く当らない。

 一番の実力者が必殺の一撃を躱され、すれ違いざまに翼をバッサリと刈られ落ちてゆく。

 敵は翼のみを攻撃してくる。すれ違うだけで、次々に翼を失い落下してゆく同僚達。翼を失う恐怖に怯えながらも、なんとか編隊を組み、集団で対応しようとするが、今度は爆音を立て飛行するシルヴィアの圧倒的な突貫力のランスチャージを喰らい、集団ごと吹き飛ばされた。

 凄まじい衝撃波で翼がひしゃげ、羽根がぶわぁっと舞う。そんな白い花がパパパッと次々空に咲いてゆく。


 ノエルは軽い攻撃でも致命傷を与えてしまうので、攻撃には参加せずいた。

 先程、軽く振るった尻尾で、数人が地面に叩きつけられ、頭部が変な方向に曲がってピクピクしている。仕方ないので今は気流を操作し、バルキリー達の逃げ道を塞ぎ、まるで追い込み漁をしてるかのようだ。

 

「なぁなぁ、あの四翼の龍は、もしや天空龍様じゃないのか?」

「ああ、どうして我らの守護龍様が攻撃してくるのだ?」

「何をしてるお前達、攻撃するぞ。一点に集中し突貫だ!」


 だが、自在に大気を操り、圧縮された空気の壁を生み出すノエルの前では、決死の突貫も逆に自身の翼へダメージを与えてしまうのだった。

 翼を失い落下してゆくバルキリー達は、しらふじが水晶星で救助し、城下広場に降ろしてゆく。大怪我を負った者も回復魔法をかけて一命を取り留めた。

 翼を失い戦意を喪失した娘達はうずくまり、抱き合いながら震えている。中には半狂乱になり、片翼を残す者から翼を奪おうとする娘もいる。


 そんなカオスの中、屋台のおっちゃんは、食欲をそそるいい匂いをさせながら、渋い声で「あれ、食うかい?」誰も聞いてないよ、おっちゃん。

 冬の魔都ミモリに桜の花びらのごとく、ひらひらと羽根が舞い散ってゆく。

 子供達は大喜びで羽根を拾い集め、ダメな大人達はそんな光景を肴に、昼間から酒を楽しんだ。


「さて、ハーガン王。趨勢は決しました。あなた方の負けです」

「バカな事を言うな、我がバルキリー騎士団は無敵である!」


 水晶星で外の様子を見せ付けても、王は頑なにそれを認めようとしなかった。


「じゃあもういいです。全員、羽根布団の材料になれば、嫌でも認めるでしょう」

「なっ羽根布団だとぉっ! ふざけるなぁぁっ!!」


 コルセアに教えてもらった、翼人族を侮辱する最も効果的な言葉。それが「羽根布団の材料」だ。

 彼らは奴隷落ちした翼人族の羽根を嬉々とむしり取り、自分の寝具の材料に使う。とても性根の腐った連中なのである。

 私が左手を王に向けると、宙に白鬼の左手が現れる。


「ハーガン、私はあなたの母親失格だけれど、せめて親として息子を躾るわね」

 

「母親だとぉっ? なっ何をするか、無礼者っ! ぎゃあああああっ!」


 ジタバタする王の翼をむんずと掴み、ブチブチブチィっと、引き千切って差し上げた。

 その光景を前に臣下達がドン引きしている中、クロとハイベルだけは楽しそうだ。ロリ声でヒッヒと笑いながら茶をすすっている。そして、翼を失いうずくまる弟に冷ややかな視線を送るヴァルバロッテ。


 外が静かになり、一番に戻ってきたシルヴィアが苦笑いしながら「バルキリー弱すぎ。噂が一人歩きして、連中は増長してたんだろうね」そう酷評した。

 自覚して無さそうだけど、シロ君も相当強いんだけどね。ガチでやりあったら私、絶対に勝てないよ。


「この完全勝利を、我が最愛のキキョウ陛下に捧げます」

「ありがとう。見事でしたよ、私の愛する戦乙女クイント」

「有難きお言葉、光栄の極みにございます」


 戻ってきたクイントは、とても誇らしげである。

 ふと……ここに来た日のコルセアの言葉を思い出し、クイントは笑みを浮かべた。

 読んでいただき、ありがとうございます。(キキョウ)

 サブタイトルの元ネタは、小説ヴァンパイアハンター2風立ちてDです。

 ちなみにクイントという名前は、ホンダの自動車が元ネタです。

 それにしても、前世の息子がいて、私に正妃になれって迫るとか頭痛い。

 ちなみに現存する子供は三人のようですね。

 これは元夫である、スカイランドの先王にちょっと文句言わないとだめね……

 あ……母親失格な私に、その資格はないなぁ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ