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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第5話 前世の夫とドワーフ族

 宝物庫から出ると、クロの歩みがピタリと止まった。


「キキョウ様、あなたの前世の夫の一人がまもなく輪廻へ旅立つそうです。お見送りにゆきますか?」

「ぜっ前世の夫の……一人?」

「はい、前世のあなたは大勢の夫がおりましたよ。大半が子種目的の一夜限りの関係でしたけどね。ちなみにお産みになったお子様は五十二名です」


「は…………はいぃぃっ?」


 あの淫乱魔王と子宝魔王って称号はそれのせいか。

 なぁに子宝母さんやってるの前世!


「今着てるそのローブを作られた御仁です。あなたが唯一心から愛した男性ですよ」

「ゆきます」


「早くゆけ!」そう胸の奥から急かす声が聞こえた気がする。


「これから転移します。目的地はドワーフの鍛冶街、ムネ様の館です」


 クロが私の手を握ると次の瞬間、大勢のドワーフ族が集まる大きな館の前に立っていた。彼らは小柄だが筋肉隆々な種族で、私の知るドワーフのイメージそのままだった。


 私の姿に大きなどよめきが起こるもすぐ静まり、皆が腕の筋肉を見せつけるように、ボディービルのサイドチェストのポーズを取りながら館の前にムキムキな道を作った。思わず吹き出しそうになったが、クロがドワーフ流の最敬礼の一つだと教えてくれた。

 ドワーフ族……なんか好きかも。


 館の玄関口には、シュナウザーのようなお髭が素敵な犬人族の執事が待機しており、私達をムネの元へと案内してくれた。


 大きな部屋の小さなベッドに眠る小さなお爺ちゃんが、大勢のムキムキに囲まれていた。私の姿を見て、彼を起こそうとする家族を制止し、静かに彼のそばに座った。


 そして働き者の小さな手を握り、そっと髪を撫でながら彼の名をささやく。


「……ムーくん」


 知るはずもない彼の愛称が自然と口から零れ出る。


 彼は薄っすらと瞼を開くと一瞬見開き、優しげなまなざしで私を見つめてくれた。


「ただいま、遅くなってごめんね」


 彼の負担にならないように優しく抱きしめながら頬ずりし、そっとキスをする。


「ああこれね、ローブありがとう。大切に着るね」


「うん、異世界に転生しちゃったの。あっちも良い世界だったよ」


 手を握り見つめ合うだけで不思議と彼が何を言いたいのか伝わってくる。

 やがて彼は半時ほど眠りにつき、次に目覚めると私の姿に安堵しながら輪廻に旅立った。

 零れ落ちる涙。

 ふと、家族の事を想う。みんなも彼みたいに、どこかで生まれ変わって幸せになってね。



 突如静寂を破り、どかどかとドワーフ達が部屋になだれ込んできた。

 ちっちゃくてふくよかなドワーフのおばちゃんが私に木樽のジョッキを持たせ、そしてワインをどぶどぶと豪快に注いできた。えっなに? 何これ。


「たった今、輪廻に旅立った我らが偉大なる鍛冶王にして大祖父に……献杯。そして転生し、本日帰還された我らが美しき大祖母に乾杯!!」


 代表を務めるヒゲと筋肉の立派なドワーフさんがジョッキを水平に掲げ献杯を、そして高く掲げ乾杯の音頭を取ると、皆も同様にジョッキを掲げ一斉にがぶがぶと豪快に飲み干した。私もそれに習いクロと共にワインをゴクゴクと飲んだ。気が付けばもうそこいら中ドワーフだらけ。皆ガハガハ笑い、がぶがぶ飲み、ムネの無事の転生を祈り酒を酌み交わすのだった。


「こういうの……いいね」

「彼らドワーフの流儀ですよ」

「なんかね……感じたんだよね。大切な人なの……覚えてないはずなのに」

「そう……ですか」


 なんだろう、クロが少し寂しそうに見えた。胸がチクリとする。


「ねぇ、なんとなくなんだけど……前世の私って、あなたと何か約束してないかな」

「してませんよ」

「クロちゃんと再び逢った時、私が何かする約束してなかった?」

「してません」


 ジョッキに口をつけ、プイっとするクロ。

 先程と表情は変わらないのに、こんどは少し嬉しそうに見える。


 二人仲良く壁に寄り掛かり、喧騒を楽しみながら、肉汁溢れる串焼きを片手にくぴくぴとお酒を呑んだ。

 ここにいるドワーフ達のほとんどが、どこかで私と血の繋がってる子孫達だという。

 そんなドワーフ達がムキムキとポージングしながら、どんどんお酒を注ぎにくるので、私のジョッキが空になる事はなかった。今日生まれて初めてのお酒だけど中々に美味しい……一緒に振舞われる肉料理も美味しかった。でももうお腹タプタプ。


 突如肉の弾ける音と共に、目の前の青年が床に転がった。


「若造の分際で、我らが大祖母様にフロントダブルバイセップスとは千年早いわぁーっ!」


 ドワーフってお酒に強いイメージだけど、なんかもう酔っ払いだらけだ。

 ちなみに女性に向けたフロントダブルバイセップスは、ドワーフ流の求婚らしい。


「キキョォォーッ!!」


 突如、奇声なのか私の名前なのか判断しにくい叫び声と共に、人参色のおさげ少女が猪の如く猛進してきた。

 そして私を壁に押し潰す勢いで飛び付くと、もう一度名を叫びながら日本酒臭いディープキスをしてきた。ああ、くちびる柔らかいなぁ。酒臭いけど。


「キッキョウゥッ! 転生したのに何でワシに連絡入れんのじゃ! コンチクショウ! ムネの野郎がもう輪廻逝くゆうから急いで来たらお前居るんじゃもん! 驚きすて屁がでるわ! ヘックシッッ!」

「あ……あの、どちら様? ごめんなさい昔の記憶がないの」

「そんでもぉぉワシの事だけは覚えていて欲しいんじゃーっ! ぶちゅううっ!」

「んぶうううっ」

「こちらノノ様ですよ。前世で一番の御友人です」


 唇を蹂躙される私の前で、平然と彼女の説明を始めるクロ。

 なんと、このけたたましい人参娘がドワーフの勇者で前世の親友ノノだという。見た目は十二歳ぐらいだけど成人女性だ。前世では一緒に暮らし、冒険者をしていた五百年来の親友だという。でもさっきの突撃、私が普通の娘だったらカエルみたいに内臓破裂でスプラッてたよ。ほら、壁にヒビ入ってる。

 いやそれより何でキス? 親友だったんだよね? 

 いや……親友ならキスぐらい普通にするか。私はしてたし。


「あの……私達ってディープなキスするような仲だったのかな?」

「感極まってのノリじゃん。後悔はないじゃん。そうゆう関係になるのも吝かではないじゃん! 知らんけど!」


 ノノは既にできあがっており、私にべったりしがみ付き、ヒンヒン泣くわ、ギャハギャハ笑うわ、胸を揉むわ、ムネの作ったローブを見せろとひん剥かれ、下着姿を披露するわで大変だった。おかげで男達の視線の熱いのなんの。まさか千年前の親友がまだいるなんて誰も想像できないよね。


 やがて私の存在が知れ渡り、街の住民たちも集まりだした。

 急きょ組まれたやぐらの上から手を振ったり、乾杯と献杯の音頭を取ったりのお祭り騒ぎ。

 こうして、ドワーフ流弔いの宴は翌朝まで続くのであった。


「おはようございます」


 昼頃、ふわふわのベッドで目覚めると、目と鼻の先で私の乳房に埋もれながらアイオライトの瞳がこちらをじっと見つめていた。どうやらこのジト目美少女を抱き枕にして眠っていたようだ。全裸で。


 今日はハイベル達から色々学ぶ予定だったが、予定を変更し、先に自身の戦闘力の把握を優先させてもらった。ソウイチが徹夜でカリキュラムを組んでくれたのに申し訳ない。


「さてと、始めましょうか」


 私が真っ先に知るべきは、まず魔装“魔道銃しらふじ”“水晶星”それとゴーレム“白鬼壱式”この三つだ。荒事に不向きそうな付与魔術師である以上、自分がどれだけ戦えるのか、もしくは身を護れる程度の力があるのかを知っておきたい。

 龍王のクロは過剰戦力すぎるようなので、力として頼るのは最後の手段にするべきだ。余計な被害が増えそうだし。いや、きっと、絶対そうなる。


 でも……国民の為とはいえ、私が誰かを殺せるのだろうか。

 戦うって、そういう事だもの。

 ふふふ……ふと、おかしくなり思わず笑った。

 昨日の今頃、ベッドの上で自分の命を諦めていた私が、翌日には誰かの命を気にしているよ。


「いでよ、魔道銃しらふじ!」


 ふわりと紫色の魔法陣が私の前に浮かび現れた。



 閑話


「フロント ラットスプレッド!」

「サイドチェスト!」

「バック ダブルバイセップス!」

「バック ラットスプレッド!」

「サイド トライセップス!」

「アブドミナル アンド サイ!」

「モスト マスキュラー!」

「フロント ダブルバイセップスゥ~ッ!」

「いかがですかぁっ、我らが大祖母様ぁーっ!」

「いかが……と言われましても……っていうか、この人達全員、私の子孫?」


 読んでくれて、ありがとぉーっ!(ドワーフの皆さん)

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