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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第47話 夜の女魔王

 今年のお米は豊作だったようだ。洪水のダメージが大きく、今年中の復旧を諦めた水田も多かったが、それでも例年の七割程の収穫量だったという。来年は例年並みになるだろうと報告を受け、安心した。

 そうそう、十一月上旬に、五日間も続く秋の大収穫祭を行うので、各地で準備が始まっている。


 そんな肌寒い風が吹き始めた頃、妙な視線が増えている事に気付いた。

 実は九月ぐらいから薄々感じてはいたけれど、いつもの事だろうと、特に気にせず無視していた。だが、最近は顕著に増えている。城内ダンジョンでも、城下町でも同様だ。城下広場前の大階段入口を護る、騎士達の視線までもが落ち着きない。

 しかも、私に向けてくる視線が普段よりも胸やお尻に集中している。

 いつもの白ローブ姿なのにね。


 今日は珍しくノエルと二人きりで城下をお散歩中だ。しらふじもいるけどね。

 いつものように、あれの串焼きを……あれ、屋台のおじさんの視線まで泳いでいる。


「おじさん、なんか変。何かあったの?」

「いやいや。そんな事、ないでござりまするが?」

  

 やっぱりおかしい。


 散歩中、ふと気付いた。あの赤い板はなんだろう。

 雑貨店の軒下に赤い板がぶら下がっているのだ。ほら、向こうのあの店にも。


「ノエル、あの赤い板って何か知ってる?」

「さぁ、なんでしょう。聞いてみるです?」


 すると、丁度その雑貨店から、何やら大切そうに抱え出てくる少年の姿があった。

 十五歳ぐらいに見えるので、ギリ大人って感じの少年だ。あ、目が合った。

 少年はすぐ私だと気付き会釈したが、顔を赤らめプルプルと狼狽えだして、ダッシュで逃げ出した。

 視線から感じたのは、驚きと動揺、そしてエロス。何か知っているね。

 私は魔導銃を彼に向け、引き金を引く。もちろん攻撃魔法などではない。

 ゲート魔法だ。


 繋げるのは、私の前方と少年の走る先。彼は私を気にして前が疎かだ。おかげでそのままゲートに飛び込み、私に向かってすごい勢いで突っ込んできた。私が見た目通りの娘なら吹っ飛ばされていたろうが、こちとら魔王。がっちり彼を受け止め、顔を胸に押し付けるように抱きしめ捕らえた。


「つっかまえた~」

『この子、果報者だねぇ』

 

 ジタバタする少年が耳を真っ赤に染め、やがて動かなくなった。

 少年だった頃のシロ君を思い出すなぁ。

 この少年、胸に顔を押し付けたまま深呼吸しよった。いい度胸だわ。


「あるじ様。これ、この子の落とし物です」

「本?」


 彼を胸から解放すると、真っ赤な顔が、みるみるうちに真っ青になってゆく。

 少年が後生大事そうに抱えていた物は、赤い厚紙の簡素な装丁の本だった。

 えーと、タイトルは……


「夜の女魔王」


 タイトルを口にすると、直立姿勢で固まってる少年がビクンとした。

 これは……あきらかに特定の何者かを彷彿とさせる上に、エロス香るタイトルね。

 パラパラリとページをめくってゆく……とんでもなく卑猥なエロ小説だった。

 軽く目を通しただけでも、体液感満載の凄まじいエロ擬音のオノマトペが狂ったように飛び交う、こちらの世界では全く見ない作風の文章だ。魔法学園ラブキュートにも擬音は多く用いられてたけど、この本は常軌を逸してるというか、狂気さえ感じる。


 少年に本を返すと、彼は深くお辞儀して足早に去っていった。

 きっと彼は自室でひっそりこっそり、私の胸の感触と匂いを思い出しながら、あの本を読むのだろう。励めよ。

 うんうん。では、私もあの本を買ってみようか。恐らくあの赤い板は、あの本を売っているという意味なのだろう。

 

 雑貨店に入ると、店主のおっちゃんが心臓止まりそうな顔で出迎えてくれたので、早速「あの本を一冊」人差し指を立て注文する。

 価格は銀貨一枚だった。かなり高く感じるけど、上製本のラブキュートは銀貨三枚なので、可能な限りコストカットした良心的な価格なのだと思う。

 怯える店主に銀貨を渡し、購入完了。早速帰って読んでみよう。

 よく目立つ赤い本を小脇に抱え城に向かうと、ギョッとする視線がちらほら。

 大階段を護る騎士達も真っ青だわ。キサマら!読んでいるなッ?



「どっ……どうする? とうとう魔王様に見つかっちまった」

「どうって……あああ……隠してたのがバレちまうなんて……」

「赤札ぶらさげ隠し売っていたのに、なんでバレだんだ?」

「わからぬ。だが、販売しているい以上、発覚は致し方あるまい」

「あの踊り子の格好したお嬢ちゃんが、売り方を指南してくれたのになぁ」

「なぁ、俺達、魔王様を裏切ったって事で処刑されるんじゃ……」

「いや、まさかそんな。あのお優しいお方がそんな事……」

「……でも内容が、あれだぞ?」 

「ここは潔く、座して沙汰を待つしかないでござろう」

 


 完読した。なんというか、下腹部がじんじん火照って、狂ったように子作りしたい気分だわ。ぶっといのねじ込まれて、滅茶苦茶にされたい気分よ。

 はぁ~はぁ~。クロちゃんどこだろ。


「クロ~クロミエル~エッチしよ~……あ」


 もしやクロの発情って、この本が原因か!?


「何でしょう、キキョウさ――」


 クロの腕を掴んで寝室に連れ込み、半分男になってもらい、たっぷり堪能した。

 はふぅ~大満足。

 身も心も充実したところで、全裸のまま赤い本を挟んで、ひざを突き合わせた。


 「弁明を」


 あの時、クロは発情した理由を隠した。つまりこの本の存在を隠したかったのだろう。

 

「とても才能ある作家なので……キキョウ様の逆鱗に触れさせたくなかったのです」

「ほほう……」

「それと、禁書にされるのは、惜しいなと……」

「なるほど。じゃあ今、私がこの作者を逮捕し、禁書にしろと言い出したら?」

「……撤回してもらえるよう、話し合います」

「うん……よかった。私の伴侶がイエスマンなら、いらないもの」

 

 ほっと安堵するクロ。


「誰にだって隠し事の一つ二つあるのだから、私はクロちゃんに隠し事があっても気にしません」

「はい」

「でもね、私が死に掛けた案件で秘密作っちゃダメでしょ。それと、私の逆鱗がとか勝手に決め付けないで!」

「ごめんなさい」

「よろしい。これからは、私が関わる事ならきちんと教えてね」


 深く頷くクロを押し倒し、抱きしめた。

 下腹部に硬いものが……クロにまだ立派なナニが付いたままだったわ。


「でも、大丈夫なのかな」

「何がでしょう」

「クロちゃんが凄まじく発情しちゃう程の凶悪なエロ小説だよ。読んだ人達、性犯罪に走ったりしないかなって。私もかなりムラムラしたし」

「自分の件がありましたから、一応注意してましたが、そういった犯罪が増えたという報告は上がっておりませんよ」

「そっか、なら良かったわ」


 その数か月後、かの本の売れ行きに比例するかのような、ベビーラッシュが確認された。


 十一月も近い土曜の夜。

 赤い本に関わる者達は、キキョウれいでぃおの時間を戦々恐々と待っていた。


『さぁみんなっ! 土曜の夜はぁ~キキョウれいでぃお!』


 いつも通り、キキョウが元気に和やかにニュースを読み上げてゆく。


『さて、来週から始まる大収穫祭ですが、私から皆さんに金貨一枚のお小遣いを差し上げます。貯金もよし、パーッと飲み食いするもよし、お祭り関係なく欲しい物を買うのもよし。皆さん楽しんでくださいね。じゃあカードに振り込むよ~ちゃりんっ』


 魔国民カードの機能を使い、国民全員に振り込んだ。

 太っ腹な魔王様に、みんな大喜びだ。だが元はキミらが搾り取られた税金だよ。

 

『さて、皆は……赤い本を知っているか? 我の目から隠し、国民がこっそりと楽しんでるあれだ』


 突然、口調が変わり、声のトーンがズシンと重くなった。

 この声を聞き、ゾゾゾォ~っと背筋が冷えた者達が、どれ程の数居るだろうか。


『その赤い本を検閲した結果、特に問題なしと判断しましたので、成人への販売と所有を許可します。ただし未成年が閲覧し問題を起こした場合、厳しい対策を取るので、大人の皆さんは責任ある管理をお願いします。販売時、魔国民カードでの年齢確認を徹底してください。あの赤い板を使った売り方は、未成年の目に触れず済むので良い方法ですね。子供の皆さん。子供が禁止されてるのは、大人が意地悪をしてる訳ではなく、あなたを守ってくれているのですよ』


『検閲内容として、まず特定の誰かを想像させるタイトルではあるが、本文には名称や特徴などがまったく書かれておらず、あくまで読み手の心象に任せる表現をしてる事。あとは判りやすい位置に、未成年閲覧禁止が大きく書かれてる事もポイントです。何より、この本の存在が誰も傷付けていない事が重要ですね。まぁ、自分に置き換えられて読まれてるという事実を、私が飲み込んでいますけど……』


『そして作品の評価ですが、これまでにない大胆かつ斬新で、情欲を掻き立てる表現力は素晴らしく、龍王リヴァイアサン様が、大変高く評価されておりました。ちなみに私の評価ですが……子作りをする前に読む事をおススメします。とだけ言っておきますね』


『郷魔国は、言論と表現の自由を国民の権利として認めている珍しい国です。それは自身の思想・良心を表明する自由の事です。ただし自由には責任が伴います。他者を傷つけたり、自分で責任を取れないような表現に自由はありませんので、何をやっても自由だ~と都合よく解釈してはいけませんよ。事の内容次第では、アリゲーのお堀にドボンですからね?』


『では、ここで一曲。背中ごしにセンチメートル』



「よ……よかった。魔王様が認めてくれたぞ」

「うむ、大海の如く心広き御方でござるな」

「しかも龍王様のお墨付きとは、ありがたや~」

「キ……キキョウ様が子作りしたって……想像しただけでたまらん!」

「こんな所で盛んな、おっさんが悶えんな!」



「キキョウ様、これをどうぞ。出版社から頂いたサンプルです」

「何これ……午後の女魔王」

「年始に発売予定の第二弾です。作者的には、こちらが本命らしいですよ」

「マジか」


 やがて、女魔王シリーズは世界中で愛読される事となり、世界人口の増加に大きく貢献するのであった。



 閑話 


 書いた私が言うのも何だけど、おじさん……本当にこれ販売するの?

 主人公は女の魔王ってだけで、名前も身体的特徴も伏せて書いてるけど、みんな絶対にキキョウ陛下に置き換えて読んじゃうよ。そもそも、それを狙って書いたんだし。きっと、いや絶対に魔王様とは別人ですから~なんて言い訳通じないよ? 

 そして、魔王様のお怒りを買ったら、私達そろってアリゲーのお堀にドボンよ。

 私なんて小柄だから、一飲みされて済むけど、恰幅のいいおじさんは全身に食い付かれて血の海に沈んじゃうよ? 

 はぁ……私も淫汁まき散らしながら、ノリノリで書いちゃったけどさぁ……

 

 幸いな事にキキョウ陛下からのお咎めはなかった。おかげで私の本命である二巻目、午後の女魔王が出せる。タイトル変更されちゃったけれどね。

 この本に隠された私のメッセージに気付いてくれたら嬉しいなぁ……

この物語を読んでくれて、ありがとうございます。(謎)

 今読まれた閑話の主が私です。

 後書き用に書いたのに、本編に取られちゃいました。

 だから改めて、後書きを書けって? 理不尽っ!

 じゃあ、激エロいオノマトペ使って、私の自慰行為実況してやるぅぅっ!

 ではまず、全裸になります。そして…………………………………………


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