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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第44話 銀の糸車

 多種族同士で子を生すと、父母いずれかの種族が生まれる。

 そして、ごく稀に両種族の特徴を持った者が生まれてくる事がある。

 そんな者達は雑種、混じり者と呼ばれ、忌避されている。

 雑種で有名な人物と言えば、郷魔国の『紅の勇者ヴァルバロッテ』だろう。

 エルフ耳と鬼人の角を併せ持つ、世界的な美少女だ。

 忌避どころか憧れる者も多いはず。どうやら胸もすごいらしい。


 かくいう私も雑種の一人。それも忌避される側の雑種である。

 これは秘密だが、母は隣国ランドメンシア王家の姫らしい。

 そして父は、粗暴な黄金の猪人族らしいが詳細は不明だ。

 両親も双子の姉も金髪なのに、私はおかしな黒と銀。右が黒髪、左が銀髪。瞳も同様に黒銀だ。見た目は人族っぽいけど、瞳孔が縦長で獣っぽい。国の理力石が壊れたそうで、自分が何者かを調べていない。興味もないし。


 この黒銀の色味がスカークという魔物に似てるせいで、子供の頃から「スカーク族だ」「屁くせぇ」心無い言葉でバカにされていた。ふん、本当に私がスカーク族だったら、とっくにあんた達の顔面に、一ヵ月臭いの取れないオナラ攻撃してるわ! ブーッ!


『金のネヘレニア』この二つ名を持つ美少女勇者を知っているだろうか。

 あれは双子の姉。私はアリアンロッド。比べる価値もない地味な妹だ。


 私が住むのは、ハイビリアル都市国。

 郷魔国、セドリック王国、ランドメンシア王国の三国に囲まれた、都市ひとつの国家。別名、雑種の国。雑種に限らず行き場のない者達が世界中から集まって暮らす、雑多な国だ。

 おもな産業は、傭兵業と世界最大のダンジョン『ビアウスの迷宮』から産出される、魔物の素材や宝箱から得られる希少な宝石や金属。これらを魔王連邦や郷魔国に買い取ってもらい、外貨を得ている。近年は郷魔国へ長期の出稼ぎをする者も多いそうだ。


 どうやら地味な私にも魔法の才能があったようで、両親に頼み込み、郷魔国のキキョウ学園に入学させてもらった。姉の事は嫌いじゃないけど、比べられるのは大嫌い。

 私は家から逃げ出すように留学した。

 しかし、新天地の学園も居心地の良い場所とはならなかった。

 相変わらず、この容姿でバカにされるのだ。成長すると胸の大きさも好奇の視線にさらされた。私は前髪を伸ばし、ダボッとしたローブを着て、フードを目深にかぶり目立たぬように学園生活を送るようにしている。

 

 二月末。

 そんな私が中等部魔法科最優秀生徒として、お城に招かれ表彰される事になった。

 毎年、各学科から教師に選ばれた優秀な生徒が、封印城で魔王様に表彰されるのだ。優秀者にはバッジが与えられ、それを身に着ける義務が発生する。


 表彰式会場である魔王の間で、ドキドキ緊張しながら待っていると……驚いた。

 現れたのは、転生され戻ってきた魔王キキョウ様だった。

 思わず変な声が出そうになったよ。

 子供の頃から彼女に憧れ、真偽不明の伝記や物語を何冊も読んだものだ。

 ああ、なんて綺麗な人だろう。私は恐れ多くも魔王様に一目惚れした。

 同性なのに……


 表彰式。フードを取り顔を見せるよう、周囲に窘められた。

 もしも魔王様にこの容姿をガッカリされたら、自害しよう。

 そう意を決し――


「かっ可愛い……すごく綺麗……卒業したら、私の所へおいで!」


 興奮する魔王様に、思いっきり抱きしめられた。ふわああああ。

 そして、私の心を見透かすかのように「もっと自信持ちなさい」お手ずから前髪をヘアピンで留めてくださったの。胸に優秀者のバッジを付けていただき、そしてオデコにキス……私はその場で気絶した。


 気が付くと、そこは伝説の聖地……キキョウの館だった。

 その夜、私はキキョウの館に一晩お世話になった。

 キキョウ様と一緒に露天風呂に入ったり、焼肉パーティをしたり、夢のような時を過ごさせてもらった。はふぅ。もう気絶はしなかったよ。


 あの日以来、私の学園生活は変わった。

 キキョウ様にいただいた紫水晶のヘアピンのおかげで、顔を隠す事をやめ、前を向く事ができた。そして、もう胸の大きさも気にならない。だって私のサイズ、キキョウ様とほぼ同じなんだもの。これを付けなさいってブラジャーなる下着を数着いただいたんだけど、なんかエッチだ……


 アクセサリーに詳しい先生が教えてくれたのだけれど、この国で紫水晶は特別な宝石。

 キキョウ様からそれを賜った私は、キキョウ様の後ろ盾を得たという事になるという。そしてこれ……何やら魔法効果も付与されており、トンデモなく高価な品らしい。どどどうしよう。


 表彰式からわずかひと月。キキョウ様の凄まじいお力によって、瞬く間にアルス王国が滅ぼされ、郷魔国が平和になった。ああ、時々脳内に響く甘美なキキョウ様のお声……特に“キキョウれいでぃお”は素晴らしいっ。十月から二週間に一度の放送になるそうで、とても待ち遠しいです。

 七月のアリゲー祭では、会場のキキョウ様が良く見える大階段に上がったら、私に気付いて手を振ってくださいました。周囲の観客は大盛り上がりだけれど、あれは私に振ってくれたんだから。

 

 九月も半ば。寮の窓を開けると、ほのかに秋の匂いがする、そんな夜……夢を見た。

 スラリとした黒いドレスの女性が手を振りながら何か言っているの。

「がんばって」確かにそう聞こえた。

 翌朝、左手首に見た事もない銀の腕輪が……何これ。

 キラリラと輝く見事なルビーをじっと見つめていると、これが何であるか理解できた。

  

 これ、魔王の証だ。


 わわわ私っ、魔王になっちゃったぁーっ!


 落ち着け、落ち着け、平常心だ。ひっひっふーっ!

 ニアが勇者になったんだし、双子の妹が魔王になったっておかしくない。

 魔国に新たな魔王が現れたって、争いになんてならない。きっと大丈夫。

 なぜって、キキョウ様が迎えられた妹君が魔王なのは、有名な話だもの。


 まずは、ヘイワード先生の著書『勇者のススメ』を思い出せ。

 魔王にも応用が利くと書いてあったもの。まずは魔装を身にまとい、武器魔装を呼び出し、知能を持つ武器と対話する。


「魔装!」


 キラキラと眩い光と共に、私の服装がピンクのフリフリに変化し、黒と銀の髪がひゅわ~っと伸びて、鮮やかなピンク色へと変わってゆく。そして、目の前に現れた…まるで宝石細工のような美しいワンド。

 デザインはちょっと可愛らしいれど、私は魔導師型の魔王に違いない。やったぁ!

 それで、服装は……んがっ。


 なに、これ。なんなのこれぇぇぇっ!!


 悶々と悩み続け、気付いたら昼休みがとっくに終わり、午後の授業が始まっていた。


『魔装ノ変更方法ヲ、私ハ知りませン。ごめんネ、マスター』

『あーう』


 ワンドのラルトーネは、私の欲する答えを持ち合わせてなかった。

 そうだ、魔王の事は魔王に訊けばいい。私は学問科一年の教室突撃した。

 キキョウ様の妹君、魔王の称号を持つベルテ様に会う為に。


「ベルテ様はいらっしゃいますか!」

「何ですか、授業中ですよ!」


 いました、一番上の席です。


「あなたは、確か魔法科の……」

「はいっ、魔法科三年のアリアンロッドです。実は私、朝起きたら魔王にな――むぐっ」


 最上段の席にいたベルテ姫様が瞬間移動したかのような速さで、目の前に現れ口を塞ぎました。


「先生、緊急事態のようなので早退させていただきます!」


 私をぐいぐい引っ張ってゆくベルテ様の手首に、私の魔王の証と酷似したエメラルドの腕輪が輝いていた。校舎のはずれに移動し、周囲に誰も居ない事を確認し、ベルテ様が怖い顔を向けました。


「あなた、何を軽率に魔王バレしようとしてるんですか!」

「え、あの」

「生まれたての魔王なんて、ガーダックが満漢全席を背負って歩いてるようなものですよ! ただでさえこの学園は勇者が多いのですから」

「ご、ごめんなさい」


 私、年下に滅茶苦茶怒られてます。


「それで……アリアンロッド先輩は、魔王である私に何か質問したいのですよね?」

「はっはい、魔装が気に入らないので、変更したいのです」

「は……はい? 緊急性はありませんね。ですが生まれたての魔王を放っておけません。しらふじちゃん、います?」

「ここにいるよ~。今、キキョウちゃんにアポ取った。すぐ逢ってくれるよ」

「話が早くて助かります。では、参りましょう」

「え。あ……」



「ひさしぶりねぇ~っ」

 

 逢うや否や、むぎゅぅぅっと抱きしめられました。

 ああ、今日も変わらずキキョウ様はお美しい。そしていい匂い……

 はっ……気付いたら館のお庭でお茶会が始まってました。

 そういえば朝から何も食べてないので、サンドイッチがとても美味しいです。


「それで、アリアンちゃんは、魔王になったのよね?」

「はい……キキョウ様」

「おめでとう。私があなたの後ろ盾になるから、安心してね」

「あっ、ありがとう、ございます」


 嬉しい……これからは頻繁にお逢いできるかも。


「それで、魔装を変更する方法が知りたいって事でいいのよね?」

「はい……自分の理想とあまりにかけ離れていて、あれでは恥ずかしくて外も歩けません。どうしたら変更できるのでしょうか」

「それはね……無理」

「はい……え?」

「出来る事なら私も服を変更したいもの。あ、担当者が来た」

「担当者?」


 キキョウ様の視線の先には、夢に出てきた黒ドレスの女性が立っていた。

 えっ……どういう事? 

 彼女が闇の女神ネロ様で、キキョウ様のハーレムメンバーだと知り、私は素っ頓狂な声を上げた。


「変更は無理……最上位神の一柱、武器の神が決めた事だから」

「というわけ。これに関しては自分の顔と同じで、一生付き合うしかないよ」

「はい……わかりました」

「折角だし、どんな姿なのか見せてくれる? こういうのは、他の人の意見も聞いた方がいいよ」

「そうですね……魔装」

「「こっこれは……」」


 私が変身すると、皆さん揃って驚きの声をあげ……


「「ラブピンクだ」」


 ガーン。よりによって一番言われたくない名前で呼ばれました。


「ラブピンク? なんか名前がニチアサ変身少女っぽいけど」

「そのニチアサが何か分かりませんが、ラブピンクというのは『魔法学園ラブキュート』に登場する魔導少女ですよ。これがそうです」

「ほほう。娯楽の少なそうな世界なのに、こんな本があるのね」


 魔法学園ラブキュート。

 存在自体がとても珍しい女児向け児童文学でありながら、年齢性別問わず大人気で既刊数は十年で十五巻。巨大な学園にはびこる悪と戦う少女魔導師達の群像劇で、この物語に登場する六人の主人公のひとりがラブピンクだ。

 とにかくドジっ子アピールがあざとくウザい天然娘で、女性読者の好感度最悪。なのに男性読者には絶大な人気を誇るという両極端なキャラだ。ラブピンクことモモカが初めて登場する第四巻「魔導戦士の称号!さらばワッフル同盟」で、男達の友情をぶち壊したサークルクラッシャーがラブピンクだ。

 三人いる養父の一人、サン父さんは「これが男の理想の女性像だぁっ!」そう力説していた。ちなみにこのアホな父が作者のクリスチーネ・ビビアン先生です。


「よりによって、なんで女子受け最悪なピンクなのよぉぉっ! しかもこのワンド、よく見たらラブピンクのブロッサムロッドそっくりだし!」

「えーと……フリフリピンクで、とっても可愛いと思うけれど?」

「確かに可愛いですけど、私の理想は『魔王が度々』のサーシャ様なんですぅぅっ!」

「はい?」

「普段は古典的な魔法使い姿の老婆ですが、いざという時、お色気魔王に変身して活躍する冒険物語です。この本も持ってますよ。ちなみにキキョウ様がモデルだと言われてます」

「マジか」

「魔王になったら年齢を固定できるじゃないですか。二十代で固定すればサーシャ様みたいになれるかもって思ったのに……その歳でこの格好じゃ、痛々しすぎるじゃないですか!」

「……確かに、十代半ばが限界点みたいな衣装よね。あなたの場合、発育が良いから既にギリギリだけど」


 ガックリ。


「まぁまぁ、そんな残念がらないで。そうだ、いい物見せてあげる」


 私はキキョウ様に連れられ、皆さんと館の奥へと向かいました。

 いつのまにか、キキョウ様ファミリーが大勢揃ってます。

 着いた先は、キキョウ様の宝物庫。すごい……なにこれ。


「みんな、欲しいものがあったら言ってね。アリアンちゃんはこっちね。シルヴィアは欲しい物ないの?」

「ボクは以前、このサーベルもらったから十分だよ……でも、ちょっと見てくるね」


 シルヴィア様がいそいそと武具置き場に向かい、ドラゴンでも殺せそうな大剣を見てるヴァルバロッテ様に話しかけています。兎人のすごく綺麗な人は、弓やボウガン置き場でソワソワしてますね。


「じゃーん、アリアンちゃんはどの色がいい?」

「ふわぁ……」


 そこには、キキョウ様の着ている白ローブの色違いがたくさん並んでいました。

 私は迷わず、サーシャと同じで、私が普段着てるダークブラウンを選びました。


「まって。それじゃなく、こっちの方が絶対アリアンちゃんに似合うと思うの」


 キキョウ様が選んだのは、ワインレッドのようなシックな赤でした。豪華なのに派手さを感じさせない紫の刺繍が素敵です。でも私に赤なんて……勧められるがままに試着してみましたが、すごく自分に似合ってる気がしてきました。とても軽くて着心地がいいし、色々な付与がされてそう。さすがキキョウ様のローブですね。


「キキョウ様、これを」

「ありがと。アリアンちゃん、これ持ってみて」

「これって……もしや、世界樹の杖……ですか?」

 

 それは、魔女と言えばコレという、先端がぐるんと曲がった古典的な杖です。

 銀の装飾が施された、物語のイメージそっくりの素敵な杖!


「ふわぁぁ、こんな所で私の理想に出逢えるなんて……ありがとうございます、キキョウ様。私もいつかこんな杖とローブをゲットしてみせます!」

「ふふふ、それはもうあなたの物。魔王になったお祝いのプレゼントよ」


 その言葉に、私はしばらく硬直して動けませんでした。


「だっだめですよ、こんな高価な品を私になんて……」

「クロちゃん、これいくら位する物なの?」

「そうですね……オークションに出せば、杖とローブのセットで二十億スフィアぐらいでしょうか。鍛冶王ムネ様がキキョウ様の為に作られた物ですからね」

「にじゅ……」

「アリアンロッド。キキョウ様のご厚意、頂戴しておきなさい。キキョウ様の紋章入りローブです。それはあなたを護る為のものですよ」

「はっはい!」


 そっそうか、これを着ていれば、私はキキョウ様のものって事で、誰にも手出しされなくなるって……私がキキョウ様の……もの? 


 すると突然、キキョウ様が私を抱き寄せました。何、何?


「ねぇ、アリアン」

「ひゃいっ!」

「私のものに……ならない?」

「なります」

「はやっ」


【個体名】アリアンロッド(女)

【年齢】15歳 誕生日8/14

【種族】黒銀族(New!)

【職業】魔導戦士

【理力値】2860  

【魔装】紅玉の腕輪、マジカルピクシードレス(ピンク)

    ブロッサムワンド、魔法珠 

【ゴーレム】雷帝ハルピュリアス(未開放)

【スキル】魔王、魔法(炎、風、雷、闇)

【加護】魔王の加護

【称号】黒銀族真祖、白き魔王の想い人、魔王

【備考】黒銀族は、大変優れた筋力と魔力を持っています。

    魔族の一種と推測されますが、現状詳細は不明です。

    


 閑話


「ハーレムメンバー、やはり増えましたね……どうやら賭けは、私の勝ちです。でも何かを賭けた訳ではありませんでした。残念」


 クロは一人、お気に入り宝石コレクションを磨きながら微笑んだ。

 いつも読んでくださり、ありがとうございます。(アリアンロッド)

 なんと私、キキョウハーレム入りしましたっ!

 なんだか……アスフィーさんの視線がめちゃくちゃ痛いです。

 私の名前の由来はケルト神話という異世界の神話が由来のようです。

 ちなみに主人公のキキョウやクロミエルはその場のノリで考えたらしいです。後から改名すればいいや~って、しかし変更しようにもしっくり来ず、そのまま正式採用したとの事。イノゥバはイノーバ。車の名前です。ラヴィンティリスに至っては、好きな漫画の好きなキャラの装備の名をもじったようです。だから蝶の形をした大陸が舞台らしいです。他にもこっそりと仕込んでるので、気付いた人だけがニヤリとできる仕様らしいですよ。

 

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