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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第42話 リヴァイアサン狂乱?

 九月になった。

 先月は、世界会議からのチャビール併合コンボなど、大変というか、もう本当に面倒くさかった。

 しかし、事の大きさの割に人死にもなく済んだので、とってもありがたい事だ。

 チャビール王家は、今では普通のおじさんと化したアブリコ王と同様に、魔都で暮らせるようにした。ちなみにアブリコのおじさんが、なんと若い娘さんと結婚して、普通に働いてるのには驚いた。不自由なく暮らせる財産はあるのにね。とてもおめでたい事なので結婚祝いに、子宝や安産の加護を贈ったよ。


 先日の事。チャビール王家改め、チャビール家の子供達の学園入学手続きの折、とんでもない事実が発覚した。

 王であったチャビール父を筆頭に王族の大半が、基本的な読み書きや計算さえ修めてなかったのだ。

 代理人に丸投げする田舎領主などは稀にいるそうだが、国王がこれは完全にギルティである。


「郷魔国に無能は不要だ」


 どこかの青い肌の総統閣下のように、冷ややかに告げた。

 一年で基礎学力や一般教養を習得出来ない者は、アリゲーの堀に落とす。

 足元にゲート落とし穴を作り、彼らの学習意欲を高めてあげた。

 これからの人生、困るのは自分なのだから。



 「うぎ」

 

 振り向くと、さっきまでそこで読書をしてたクロが、いつのまにか私の手首を凄まじい力で握っていた。魔王でなければ骨が砕け手首がぐっちゃり潰れてるような握力でだ。

 

「クロちゃん、どうしたの?」

「……キ…キョウ」


 夜の海のようなアイオライトの瞳が真っ赤だ。

 まるで仇討ちの呪いに支配された時のシルヴィアの様で、背筋がゾゾっとした。

 どうしちゃったのクロ。赤い瞳から殺意のような悪いものは感じられないが、あきらかに異常事態だ。まさか……狂乱?


「ノエルっ、クロちゃんが!」

「あるじ様、どうしま――」


 目の前からノエルが消えた……ちがう、私が転移したんだ。

 背筋がヒンヤリとする……ここはどこ? 碧く仄暗い海の底のような……神殿?


「キキョウゥゥッ!!」

「きゃあっ!」


 息を荒げクロが私を押し倒し、力任せローブをはぎ取ろうした。


「ちょっ破れちゃうから! 脱ぐからまって!」


 さすがにこの一張羅だけは絶対破られたくない。クロの動きが止まったので、手早く白ローブを脱ぎ、下着も外し、ニータイツを残し全裸になった。


「おまた…せぇ?」


 振り向くと、思わずぐっと見上げてしまう位置に、クロの顔があった。

 正確には、大きな蛇の頭だ。全長六~七メートルはあろう、美しい大蛇が鎌首をもたげていたのだ。始めて見る姿だが、私はこの大蛇をクロと認識している。

 瞳は変わらず赤いが、艶やかな瑠璃色の鱗がぬらぬらとテカっている。

 間違いなくクロの鱗だ。


 そんなクロの姿を見て気付いた。初めは狂乱でもしたのかと焦ったが、違う。

 今、クロは発情しているのだ。先程と違って猛烈な性欲、交尾欲を感じる。

 その証拠に、ギザギザびっちりの大きなナニがあんなだし。しかも二本も!

 勿論、アレがどうであれ、ソレがこうであろうと、私にクロを拒む選択肢などない。

 

「さぁ、私を存分にどう――ひゃあっ!」


 クロが私の体にぐるりぐるりと巻き付いてゆく。鱗がヒンヤリと冷たい。

 ふぐっ……これが蛇の交尾……魔王の体じゃなかったら、この締め付けだけで死んでいるだろう。凄まじい力だ。大蛇に襲われた小鹿って、こんな気分なのだろうか。

 

「ちょ…ちょっと、体…締め付けすぎ……だよ……うぎっ!」


 ゴキン。ミチミチ、ベキリ。全身で発生する異常音が脳に響く。

 まずい、肩外れた、腕折れた。肋骨が何本も折れ、肺に刺さった。

 同時に猛烈な勢いで、死の気配が近付いてくるのを感じる。少し懐かしい感覚だ。


「だめだよ……クロ」


 もし私が死んだら……クロは自分が赦せず、本当に狂乱するかもしれない。

 あ……またどこかの骨が折れた。あ、だめ、意識がもう……私…死ん……


 ク……ロ……


「クロミエルゥゥゥッ!!」


 意識が途切れ掛けたその時、すごい衝撃と共にクロの締め付けが解かれ、宙に放り出された。ふわんと浮遊して、落下しはじめた私を誰かが抱きとめ、ふわりと着地した。ああ、ノエルだ。


「お前ぇっ! 何やってるんだぁぁっ! 今キキョウ死んだぞっ! わっちの契約で生命肩代わりしてなかったら、キキョウ死んでたぞぉぉっ!!」


 ボコンボコンとノエルがクロ大蛇を殴る蹴るしているのが、うっすらと見える。

 死の契約を結んでる私達は、互いの場所へ転移できるのだ。自分の生命力が私へ送られた事を感知し、私の元へ転移したのだろう。

 ああ、ノエルのキキョウ呼びがなんか新鮮。


「ノエ…ル……もう…いいから……」

「でも、キキョウ……このバカが!」

「大丈夫だよ……ありがとう……」

「うわーキキョウちゃん! 手足が変な方向に曲がってるよ。あばらが肺に刺さってるよぉ~っ!」

「ははは……ゴボォッ」


 凄い量の吐血だ。私の血液って綺麗な紫色なんだよ。


「ノエルちゃん、腕の方向戻して肩ひっぱって。このままじゃ回復魔法かけられない」

「うん、こう……『ゴキリン、グギィッ』です?」

「ひぎいいいいっ!」

「そそ、次は右足……あばらは魔素化して取り除いてから再生かな」

「おて…やわらか『ビキキッ』ふんぐうううっ!」


 折られた時より痛いんですけど……うごぉっ!



「……知ってる天井だ」

 

 目覚めると、ベッドの周りには、私の大切な女の子達が心配そうに見つめていた。

 

「お姉さま、痛いところありますか? ヒールします?」

「ありがとう、アスフィー。もう大丈夫みたい」


 アスフィーがオデコにキスしてくれた。

 私は起き上がり、肩を回し体の調子を見る。あ、裸ん坊だわ。

 うん、問題ない。それより……


「ねぇ、ノエル。クロちゃんはどこ?」

「まだあの神殿にいるですよ。バカミエルは猛省中です」

「あらら……じゃあ迎えに行かなくちゃ。しらふじ、行ける?」

「行けるよ~海底鬼岩城。水中バギーちゃんは無いけどね」

「マジか。やっぱり海底だったんだ」


 そこは龍王リヴァイアサンの守護領域“海”の拠点。アーラトン海底神殿。

 荘厳な柱の建ち並ぶ仄暗い碧の中、膝を抱えたクロがぽつんと座っていた。


「クロちゃん、帰ろ」

「もう……あなたの側にいる資格がありません」

「私はクロちゃんの所有物なんだから、殺してもいいんだよ?」

「そんなのだめです……私はもう、あなたという宝を持つ資格がない」

「……そっか。わかった。今日をもって私はクロの所有物をやめる」

「……はい」


 あまりにも小さく悲しげに震える背中を、私は思いっきり抱きしめた。


「じゃ、今からクロちゃんは、私の宝物ね」

「えっ」

「絶対に放さないから、覚悟しなさいね。私の可愛いアイオライト」


 全ての生命がひれ伏す絶対の存在が、私の腕の中で情けない声をあげ泣いている。


 あーもうクロかわいい。クロミエルが愛おしくてたまらない。マジ私の宝物だ。

 宝物……そう、お母さんが私とシロくんは宝物だって、よく言ってたっけ。

「じゃあお父さんは?」ちょっと怖い笑顔で誤魔化されたなぁ。


「ねぇ、クロちゃん。何があったの?」

「なにも……」

「どうして、あんなふうになっちゃった?」

「ええと……その……一身上の都合で……」

「なんだ、良かった」

「明らかに隠し事をしてるのに、何が良かったのですか?」

「だって、理由がはっきりしてるなら安心だもの。理由もなくああなってしまったのなら、思いっきり大問題でしょう?」

「……確かに、そうですね」

「で、何があったの?」

「も……」

「も?」

「黙秘します」


 はっはっはっ。

 お仕置きとして、私の指で何時間もヒィヒィ叫んでもらったよ。

 全身バキバキに折られた後の、いいリハビリになったわ。指がふやけたけど。



 ◇ラヴィンティリス豆知識◇

 死の契約について詳しく説明しておこう。

 この契約は、一方的に相手の魂を縛り付ける隷属契約魔法だ。

 通常の隷属契約も人権無視のかなり酷いものであるが、それが優しいと思える程の酷い契約である。最も酷いのが死を命じられると、魂が砕け、二度と転生できなくなると言われてる。ただこれは脅し文句で、そのような事実はない。ただし、殺意を持って死を命じれば、死ぬ。

 そして、あるじの命や魔力が枯渇すると肩代わりする。

 その昔、これを利用すれば延命できる。そう考えた病の王がいた。民の命を吸って生き永らえようとしたのだが、神罰をくらって即死したらしい。

 もう一つ、契約者同士はお互いの場所へ転移が出来る。大変便利に思えるが、魔力を消費する隷属側が魔導師クラスの魔力持ちでもない限り、これは使用できない。

 商いで世界を牛耳る魔王連邦だが、実はこの契約を物流に利用している。さすが抜け目のない商人の国である。


 読んでくれて、ありがとうございます。(クロ)

 やってしまった……衝動を抑えきれなかった。

 どうしてそうなったかなんて、絶対に言えない。

 エロ小説読んで発情したなんて、恥ずかしい事を言える訳ない……

 それにしても、キキョウ様の指使いはすごかった。

 さすが同性、感じる部分を的確に……荒々しいのに優しさがあって――

 あ、いや。そうじゃない。

 あんな酷い事をしたのに、私を宝物だって言ってくれた事が、とても嬉しい……

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