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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第38話 私、もう知らんから

「これよりラヴィンティリス歴26445年、第9998回世界会議の開催を宣言する」


 世界議長という肩書が少々重そうな議長の宣言で、世界会議が始まった。

 すると議長席のすぐ隣の席の青年が発言を求めた。


「議長、発言をよろしいでしょうか」

「人類帝国、皇帝ヘンリー君」

『キキョウちゃんっ、リアルヘンリー君だよ。何世かな』

『ぶっ、今そんなネタぶっこまないで』


 もちろん、名前も含め彼の事は調査済みだ。

 見た目は二十代半ば、金髪の青年で勇者だ。皇帝としての治世は八百年に及ぶ。

 前世の私に何度もしつこく求婚し、全く相手にされなかったそうだ。

 彼も狂乱した龍王バハムートと戦い、民を護ったと主張しているが、大英雄達や共に戦った勇者達は、誰も彼の事など知らないという。

 そのヘンリー君……皇帝ヘンリーが大仰な身振り手振りで話し始めた。


「近年、稀に見る激動の年と言って差支えない、大きな出来事が幾つもあった今年ですが、まず初めに郷魔国、魔王キキョウ殿。大英雄の無事のご転生を心からお祝いを申し上げたい」


 雰囲気が外国の政治家っぽい。話し方もとても上手だ。

 その言葉に、各国の王達が私に祝福の拍手を送る。私も応えるように会釈した。


「皆さま、ありがとうございます」

「そうだ、折角ですので、新たな我らが仲間としてのお言葉を頂けませんか?」

「郷魔国、魔王キキョウ君」


 議長、問答無用かよ。


「そうですね……」


 はっきり言おう。このヘンリーという男の視線、マジ気持ち悪い。というか無理。

 これまででダントツだ。凄すぎて彼しか参加してない世界大会みたいな感じ。

 どう表現したらよいか難しいが、一言でいえば……ヘドロ? 

 見た目や振舞いと中身がまるで別物。例えるならキャビアの瓶を開けたら、中身は芋虫のぷりぷりウンコだったとか。花林糖だと思ったら犬のフンだったとか。チョコレートソースのチューブから……が出た感じだ。

 前世の私が求婚をガン無視して当然だわ。


「あなたが仰った激動の年とやらには、少なからず私が関わっているのでしょう。私としましては、今後は穏やかに暮らしたいものです。ですので、可能な限り波風立てぬよう、留意しますので、皆様もよろしくお願いいたしますね」


「おおっ! とても殊勝なお言葉に感じ入りました。実は、そんなあなたに素晴らしい提案があるのです!」


「は?」


 騙す気満々の詐欺師みたいな表情とヘドロのような視線で、何言ってんだコイツ。


「アルス王国が滅んだ事で、今、我らを取り巻く世界情勢は大きく混乱しつつあります。それを速やかに納め、誰もが安心して暮らせる世にする事こそが、この世界会議の役割でしょう?」

「それで、提案とは?」

「元アルス王国の国土を世界会議の共同統治下に置くのです!」

「はぁ?」

「さすれば、あなたも国家間の余計な軋轢を生む事なく、穏やかに暮らせるというもの。素晴らしいでしょう?」


 こういう時に使う、素晴らしい一言があるのを、皆さんもご存じであろう。


「おまえは何を言っているんだ」


「おやおや、理解できませんでしたかな? 子供でも理解できる簡単な事ですよ。あなたがアルス国土を手放すだけで、ここにいる全ての国々が幸せになるんです」


「軋轢とは何を指してるのかしら。例えば、最も影響のある穀物取引ですが、そのまま継続している上に、価格も数分の一にまで下げています。むしろ各国から感謝されてますし、あなたの国とは『全く変更なく』契約が継続されていますよ? アルス王国が消えて、むしろ情勢は好転していますが?」


「……短期的にそう見えるだけです。御覧なさい、この署名数を。ここに名を連ねるのは、共同管理に賛成する国々です。そして、あなたの行いに脅威を感じ、抗議の意思を示した勇気と正義ある国々です。なんと会議に参加している半分近い国がですよ!」

「私の行い――とは?」

「あのような戦の慣例無視の攻撃で、相手に降伏の機会も与えず滅ぼした事ですよ!」

「では、宣戦布告もなく、洪水による攻撃で我が国が甚大な被害を受けた件はどうなんです?」

「ははは、ご冗談を! あれは自然災害ではありませんか!」


「もういいです」


 一瞬ブチ切れかけたが、ギリ堪えた。ああ、駄目だ。さすがヘドロ。時間の無駄だ。


「ところで、その署名した国々に、確認しておきたいのですが」

「ははっ、なんでしょうか?」

「人類帝国、アイヤゴン国、アドコック王国、エンデルバ王国、コメンスキー王国、ジェハーク国、シルドリー国、ゼハール王国、ゾウハル国、チャビール王国、フェシュティーメ王国、ヘンスラー国、モンド国、セレクション王国。以上十四ヵ国は、私に異を唱え、我が郷魔国の国土をよこせと言ってるんですよね?」


 遠目でチラリと見せられただけなのに、全ての国名を読み上げた私に、皆が驚きの声をあげた。

 クロの情報網のおかげで事前に知っていたのだよ。


「まったく……署名国の大半が、我が国と穀物取引している国々ではないですか。何なんですか、あなた達」


 ぐるりと王達の顔を見回すと、目を背ける者、顔色が青いの者もいる。


「署名した国々は、正しき事を正しいと主張しただけの事。恫喝はやめていただきたい!」

「恫喝って……私、今脅しました? あーもう、アホらしい。ノエル、おっぱい!」

「はーいです」


 可愛いくてエッチなノエルが、ツンと尖ったおっぱいをくいっと差し出す。

 そこへ顔面ダイブを敢行する。もにゅっ。ノーブラおっぱいの感触が素晴らしい。

 はぁ~巨大氷河のようなストレスが解け落ちてゆくわ。


「なっなっ何をしているのかねっ! 破廉恥な!」

「魔王キキョウ式ストレス解消法~もごもご」

「ぶふっ」


 先程まで、私がブチ切れないかハラハラしてたシルヴィアが噴き出す。ちなみにシルヴィアの方がノエルより小さいんだけど、まぁそれはそれでとても良いものだけれどね。

 ノエルのおっぱい。ノッパイをいっぱい堪能すると、乳房から顔を離し姿勢を正面に向け……ギロリと睨みつけながら、冷ややかに告げた。


「その署名にある国々との穀物取引、および全ての契約、条約を破棄する。そして我が国への害意ありと判断し、敵国認定する」

「なっ何を言っているのか理解しているのか!? これだけの国と敵対する気か!!」


 はは、やっとその自信満々で得意げなお顔が歪んだわ。

 会場が騒然となった。落ち着いているのは、同盟国の面々と我関せずの一部の国々のみだ。


「敵対したのは、あなた達でしょう。ご丁寧に自分の死刑執行書にサインしちゃって」

「わっ我らをアルス王のように殺害する気か」

「あなた達は知らないのかもだけれど、郷魔国は龍王リヴァイアサンの宝なのよ」

「は……龍王? 宝? 何を言っている」


「やっぱり知らないのね。それに署名した国は、もれなく龍王様の制裁対象になったからね」

「はっバカな。龍王は我らの争いに関わらない。もしそうなら、とっくにアルス王国は制裁を受けているはずだ!」

「アルス王国を国土ごと滅ぼす気満々だった龍王様と交渉して、キョウカが制裁猶予をもらい、私が制裁解除してもらったのよ。アルス王家を滅ぼし、国土を併合する事でね!」


「は…………」

「そんな話、知らんぞ……」

「まて、龍王リヴァイアサンと言えば、逆鱗に触れた幾つもの国が滅ぼされたと伝承があるではないか」


 署名に名を連ねた国々の王達が、動揺しはじめた。

 それはそうだ、相手は神だもの。


「本来なら、うちに手を出したチャビール王国とセドリック王国も、ヘドロの海にされて滅ぼされる所を、私が落としどころを模索して、制裁解除してもらったの。だって嫌でしょ? 自分ちの周囲がヘドロまみれになるなんて」


「へ…ヘドロ……」


 チャビール王が真っ青だ。あなたの国、やらかし二回目だよ。ヘドロと聞いて、お隣のセディ王もプルプルしてる。


「そっ……そんな事が」

「よっ余は……帝国に頼まれ署名しただけの事……」

「言ったでしょ。それ、死刑執行書。既に龍王様は知ってるわよ」

「ひいいいいいっ」

「キキョウ陛下! 龍王様にどうかお執り成しを!」


「私、もう知らんから。もう尻ぬぐいしないから。もうこの繰り返し疲れたから」


「はっ……はははは! 皆さん落ち着きなさい。こんな見え透いた嘘を信じてどうします。龍王は地上の雑事に興味はない。そんな面倒な事をするはずが――」

「アスランのアイシャ姫。あの時、あなたも広場に居たんじゃない?」

「なっなぜそれを!」

「龍王リヴァイアサンは、自分の宝に手を出すものを絶対に赦さないのよ。だって、宝物が大好きな龍だもの」


 効果てきめんだわ。この男、やはりあの時居たのね。かまかけ大正解。


「のぉ~キキョウ~龍王様は、各国にどんな制裁するかのう」

「ん~多分ですが、雨を降らせると思いますよ」

「雨かぁ~」


「なんだ、雨か」署名した王達は拍子抜けするが――


「それは怖いのぉ~」

「怖いですよねぇ。全てが腐り果てるまで、永遠に雨が降り続くんですから。ヘドロの海ってそういう事よ」


 すぐ絶望の表情に変わった。


 世界会議はまだ始まって数分なのに、既に混沌と化している。断じて私のせいではない。

 戦々恐々とする王、他人事のようにケタケタ笑う王、我関せずの王、何か知らんけどアワアワする王、水っぽい屁をする王、様々だ。

 結局、世界会議初日は、わずか三十分程で終了した。

 はぁ、嫌な目に遭ったわ。でもこの会議期間中、精神的肉体的に大変なのは、私よりも文官達の方だろう。



「全ての取引を一方的に中止など、そんな暴挙が許されるのか!」

「そんな事をされたら、我が国は立ち行かなくなる!」

「そう申されましても、あなた方の王や首相が、私の愛する魔王陛下を怒らせたからではありませんか」

「お前、しれっと愛する魔王陛下と言ったな」

「陛下は、私の脳内恋人ですから」

「ぬうう……ならば俺は、脳内人妻だ!」


 早々に会議の終った私は、美女美少女に囲まれ、豪華な別室でまったりとお茶をしながら、しらふじが操る水晶星を通し、文官達の様子を見守っていた。

 …………脳内人妻って何ぞ。


「それは……かの帝国に脅され、仕方なく……」

「我が王も苦渋の選択だったのです!」

「どうか、魔王陛下にご再考をお願いいただきたい!」

「我が国203072名の民の命が掛かっているのです。あ、今1人増えた」

「お願いしますっ、どうか魔王様にお口添えを!」


「残念ですが、これは我が美しき魔王陛下の決定。下僕の私は、ただ従うのみです」

「貴様、言うに事欠いて下僕だと? では俺はペットだ! キキョウ陛下のマイペットだ!」


 お前は洗剤か。

 洗剤か……ああ、洗剤でいい。むしろ望むところだ。

 私はキキョウ陛下の洗剤になりたいっ!

 むしろ、陛下の入浴石鹸になりたぁ~いっ!


 ねぇクロちゃん、うちの文官って、アクが強すぎない?

 では、アク抜きしましょうか。

 どうするの?

 まず数日水に漬けて、天日でカラカラになるまで乾かし……

 それって栃の実のアク抜きじゃない? 人にやったら死ぬよ?

 キキョウ様にアク抜きされて死ねるなら、彼も本望では?

 私がやるんかい!

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