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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第18話 新たな魔王

「では、アスフィーリンク。私と勇者契約しましょう」

「はい、魔王様」


 勇者契約は非常に簡単だ。

 勇者が跪き、忠誠を捧げると宣言し、それを相手が受け入れる。これで終了だ。


 聖女教会の修道服に似た青い魔装を身に纏い、勇者アスフィーリンクが白き魔王の前に跪いた。


「魔王キキョウ陛下。わたくし、勇者アスフィーリンクの忠誠をお受け取りください」

「勇者アスフィーリンク、あなたの忠誠を受け取りましょう」


 金色の魔法陣が二人を中心に現れ、強く輝き二つに分裂すると、それぞれが二人の体に吸い込まれてゆく。契約が完了すると、まるで二人を祝福するかのように、金の花びらが辺り一面に舞い散った。


【個体名】アスフィーリンク・ユキノ(女)

【年 齢】11歳 誕生日2/28

【種 族】人族

【職 業】聖女教会見習いシスター、郷魔国勇者

【理力値】1420(世界貢献度)  

【魔 装】金水晶のネックレス、紺碧の修道服、金王の小手&ブーツ、魔法珠

【ゴーレム】Gアームズ 、黄金のアウレオラ(未開放)

【勇者ランキング】圏外

【スキル】勇者、魔法(聖)、拳王術、蹴王術

【加 護】拳王の加護、蹴王の加護

【称 号】慈愛の勇者



「アスフィーリンク、私はあなたに勇者としての力を求めません。この契約は、あくまであなたを護る為のもの。私が保護者になったと思ってね」

「保護者……わたしは魔王様の所有物になったのですよね?」


「ふふ、そうよ。誰にも取られないように、私のモノにしたの」


 ズキュゥゥン。何……この胸の高鳴りは……あ。


 わたし、また魔王様に抱きしめられている……いい匂い。

 なんて綺麗な瞳……まるで紫水晶のよう。


「あなたはまだ子供なのよ。その年頃なら学校に通って、友達を作って、一緒に学んで、いっぱい遊ぶのが仕事よ。そして成人したら、自分の好きな道を選ぶの。それを私が全力で応援してあげるから」


 勇者になって以来、わたしの事を歳相応に扱ってくれる人はいませんでした。

 なのにこの方は、勇者ではなく本当のわたしを見てくれている。

 でも何故でしょう、この方に子供扱いされるのは、すこし寂しいような。

 いいえ……今はまだ、これでいいです。


「今日からあなたは、私の妹よ。アスフィー」

「はい……お姉さま」



 数日後、アルス王国の権力者の全てが領地を放棄した。

 これにより、両国の戦争は終結した。

 本来、王を倒せば国を奪えた事になるが、アルス王国は国王と同等の権力を持つ公爵家がそれぞれ独立自治をする国家体制の為、全てを攻略する必要があったのだ。



 突然、頭の中に若い女の声が響いた。


『告げる。我は郷魔国、魔王キキョウ。本日只今をもって、アルス王国全土を郷魔国へ併合した事を宣言する。元アルス王国民は我に忠誠を捧げよ。お前達には郷魔国国民と同じ法律を遵守し、同率の税が課される。税率は二割だ。兵役、労役はない。そして忠誠の対価に“健康の加護(大)”を与える。これにより病に罹らず天寿を全うする事になるだろう。我が支配を拒むものはこの国から出てゆく事を許可する。ただし、一年間猶予を与えるので、この国が変わる様を見届けてからでも遅くはない……よねっ! さぁ皆さん。圧政を敷く貴族も王族も、もういません。みんなで幸せになろうよ。手始めに各地の食糧庫を開放して穀物の無料配布を行います。まずは、お腹いっぱいになりましょう!』



 まさか、とても信じられない内容だった。この大国が滅んだ?

 しかも魔国になるとは。だが正直、国とか誰が王とかどうでもいい。

 平民は誰もが圧政と重税で、生きるだけで精いっぱいなのだ。

 魔国になろうと何も変わらない。いや、相手は魔王だ。もっと酷くなるやも。

 今日、食べる物でさえ困る始末なのに……え? 税金二割?


「おーい! 広場で小麦が配られてるぞ、ダダだってよ!」


 皆が暗く沈んだ顔を上げ、希望に目を輝かせ広場へと走り出した。



 戦後処理は、ソウイチ達に丸投げした。

 かわりに私は各地へ向かわせる文官達の移動をゲート魔法でサポートしながら、クロの制裁対象になっている国々への対応に頭を悩ませた。

 まず保留してたチャビール王国に拉致された国民の捜索を開始。しらぶじに丸投げだけれど。そしてセドリック王国オレンジ公爵の件は保留。猶予をちょ~だいと、上目遣いでクロにおねだりして、時間を稼ぐことに成功した。


 四月一日、魔王の間。


 そこには接収した財貨の一部が積み上げられていた。一部とはいえ、高価そうな美術品や刀剣、そして大量の宝飾品と金貨袋だ。

 その所有者であった元アルス王国貴族達とその婦人が露骨に不満顔を並べ、対照的に爵位と財産を安堵されたシルヴィアの親戚であるラインマイヤー、ゲルトナー家の両当主とその寄子達は、安堵の表情を見せていた。そして、その横に元王国軍のハルドルトン将軍と、平民服の少女が並んでいる。


 接収された主だった財宝や金品の目録が読み上げられてゆく。

 併合により超大国となった我が国の国家予算に換算すると、およそ十数年分という、とんでもない額だ。これは搾り取った国民の税金と、アコギな穀物の輸出による利益である。

 アルス王国は食糧事情の悪い国の足元を見た商売をしており、これでがっぽりと稼いでいたのだ。きっと多くの国から恨まれていただろう。


 現金化が可能な美術品や宝石などは、魔王連邦の商人魔王カリマー様に頼んで、買取や競売などで処分する予定だ。ちなみに魔王カリマーは、前世の夫の一人である。


 その財産の元持ち主達は、本来不満を爆発させそうなものだが、それは出来なかった。頭上から龍化したノエルが見下ろしている為だ。あ、よだれ。

 本日は代官職の任命式も行うので、元貴族達全員に来てもらったが、重税を課していた貴族がそのまま代官になっては、国民も納得がいかないだろう。そこで神の名のもと、国民に誠実であり続ける事を誓ってもらう。

 これは神命契約といって、神の名に誓った契約に背くと、罪状以上の神罰が下るのだ。この契約はごく一般的に利用されているが、為政者が神名契約を結びたがらないのは、この世界あるあるの一つである。


「魔王陛下、よろしいでしょうか。突然の事で、大変無礼かと存じますが、陛下にお目通りを希望する者を同行させました」


 ハルドルトン将軍が平民服の少女を伴い、私の前に踏み出た。将軍が同行してる時点で、ただの子ではないのだろう。緊張して、脚が震えているが私を恐れている感じはない。


「その子がそうなのね。発言を許します」

「御意を得まして、お初にお目に掛かります。私はベルテ。元アルス王国第六王女ベルティーネと申します」


 城内がざわつく。元アルスの貴族達も軽く驚きの表情を見せた。

 歳の頃は十二~三だろうか。知的な雰囲気のエメラルドの瞳に栗毛色のショートボブがよく似合う美少女だ。着ているのは薄水色の平凡なワンピースだが、不思議な国の有栖川さんのようで、とても可愛らしい。


「シルヴィア、この子知ってる?」

「はい、間違いなく第六王女のベルティーネ様です」

「ふむ。それで、私に何か用があるのよね?」

「はい。実は、どうしても魔王陛下にお礼を申し上げかったのです。そして不躾ですがお願いがございます」


 まさか生き残りの王族だったとは思わなかった。家族を殺害した私にお礼とお願いとはなんだろう。まさか、家族を皆殺しにしてくれてありがとう。ついでに私も殺してください。そんな訳ないよね。でも何となく嫌な予感がするので訊いてみた。


「少し長くなりますが、私の身の上を聞いていただけますか?」

「ええ、もちろん」


 アスフィーが彼女の為に椅子を持ってゆく。

 皆が注目する中、椅子に座ると彼女は深呼吸し、そして語り始めた。


「私の母は、平民出身の側妃でした。侍従長が街中で母に目を留め、婚約者がいたのに無理やりお城に召し上げたそうです。そしてすぐお手付きとなり、私が生まれました。母はその後、何度か妊娠するものの、ことごとく流産しました。今思えば、あれは堕胎毒を盛られたのでしょう……三年前、懐妊し安定期に入った頃の事です。王不在のパーティーに無理やり参加させられた母が心配で、私は少し離れた場所からこっそりと見守っていました」


 ベルティーネが深呼吸する。


「すると……男達にバルコニーへ連れ出された母が、無理やり何かを飲まされ、そのまま三階から突き落とされたのです……首の骨が折れ即死でした。少し離れた場所から王妃と第二王妃がそれを見ていましたから、犯人は間違いなく王妃達です。母の死因は泥酔し誤ってバルコニーから落ちたというものでした。母は妊娠してるのに、お酒なんて飲むはずありません。私は父である国王陛下に王妃の仕業だと、自分は全部見ていたと必死で訴えましたが、全く相手にされず、母を失い気が狂ったとされ、廃嫡されたのです」


 そこにシルヴィアが補足する。


「痛ましい事件でした。王に溺愛されるミラベル様に、正妃達が強い敵意を持っていたのは周知の事実。即、あいつらやりやがったと思いましたよ。私も強く進言しましたが、あの愚王の耳は完全にロバでしたね」

「シルヴィア様には、何度も助けていただきました。ありがとうございます」

「あまり役にたってなかったけど」


 ああ、なんとなく見えてきた。私へのお礼の理由が。


「廃嫡された私は、城下にある母の実家で祖母と二人で暮らす事になりました。お城から追い出され、とてもせいせいしましたよ。私は王家を深く恨み、毎日王城に向かって彼らの不幸を祈りました。そして昨年の夏頃の事です。元兄である第二王子ライナルトが突然現れ、私を手籠めにしようと襲って来たのです。そして、止めに入った祖母を無残に刺殺し、逃げてゆきました……私はアルス王家に家族を全て殺されたのです」


 元アルス貴族達の間からどよめきが起こった。

 第二王子? 確かあの中年文官が私の王配にと勧めた相手だったわね。

 思いっきりクソじゃん。ドクソ。


「その後の私は王城に殺意を込め『吹き飛んで滅んでしまえ』そう祈り続けました。そしてあの日、いつものように祈っていると……本当にお城が吹き飛んだのです。それが魔王陛下の攻撃だったと知り、丁度お見かけした将軍様に無理を言って、この場に同行させていただきました」


 ベルティーネが立ち上がり、深く頭を下げた。


「アルス王家を滅ぼしてくださり、とても感謝しております」

「あなたの感謝を受け取りましょう」

「ありがとうございます。そして、お願いがございます。私を……殺してください」

「うん、なんとなく想像してた。どうしてそうなるのかな」

「私は廃嫡されたとはいえ、元王族。何者かが私の存在を利用し、魔王様にご迷惑をかけるかもしれません」

「さすがに、まだ起きてもいない事を理由に、あなたを処刑できないわ」

「実は私……祖母を失ったあの日……魔装」


 突然、彼女が変身した。

 例えるならニチアサの変身少女のような姿と言えば、一番理解しやすいだろうか。フリルの可愛い緑と白のへそ出しスーツに縞々ニーソ。床まで届きそうな、ふんわりくるんとした金色の髪。そして右手には、身の丈をはるかに超えるエメラルドの大鎌がギランと輝いていた。


「魔王になってしまったのです」


 うおっ、これは想像できなかった。新たな魔王の登場。そしてめっちゃ可愛い。

 彼女を取り囲むように武器を構える近衛騎士達を下がらせ、彼女に話を続けてもらった。


「怖いんです……この大鎌、朝起きると勝手に現れて浮いてるし、試しに森で振るったら、一瞬で広場が出来ちゃうし。もしこの先、誰かを傷付けたらと思うと、怖くて仕方ないんです」

「その力で王家に復讐しようとは思わなかったの?」

「それも考えましたけど、私はシルヴィア様だけには武器を向けたくありませんし、勝てるとも思えませんでしたから……今もこの大鎌が怖くて……いえ、大きな力を手に入れた私自身が怖くて……」


「それで殺して欲しい、と?」

「はい……それに魔国に新たな魔王が現れると国が荒れるって、本で読んだことがあります。だから……その、出来ればあまり痛くないと嬉しいです」

「うーん……それはさすがに」

「キキョウ様。ここは私が」


 クロが玉座へ続く階段をペタペタと下りながら龍人化した。

 うん、大人クロは相変わらず神々しいね。


「牙よ、あれ」


 現れたのは龍装。蒼玉の鉾“トリシューラ”

 穂先がアクアマリン、柄がサファイアの三又槍。トライデントだ。

 剣のように大きな穂先のせいで、槍というより柄の長い大剣にも見える。

 異形ながらも見る者を圧倒する、大変美しい槍だ。

 まさか、それでいきなりあの子をズブリとか、ないよね。


「あっあの、あなたは……勇者様ですか?」

「いえ、私は龍王リヴァイアサンです」

「りゅ……龍王様!」


 この場の全ての者達が声を失い、ひざまずき、震えた。土下座する者もいる。

 普段から愛妾の分際で~的なノリで、クロを侮り蔑んでいた文官達の顔は、真っ青を通り越していた。


「あなたは、その大鎌デスサイズと対話しましたか?」

「え……あの、これとお話しできるのですか?」

「では大鎌に向かって、念じながら挨拶してみましょう」


「……こ、こんにちは、大鎌さん」

『こんにちハ、マスター。ワタシはデスザイズのエンマ。ヤットお話し出来ましたネ』

「ほっ本当に、お話し出来ました!」

「武器魔装は、あなたの味方であり相方です。あなたの意に反し、誰かを傷つけることは絶対ありません。きちんと対話し、その大鎌の能力を把握し、使いこなしなさい」

「はいっ、そうします。ありがとうございます。龍王様」

「ふふ、よかった。もう殺して欲しいなんて言わないよね」

「え……ですが、私、魔王……」

「こっちへいらっしゃい。階段を上がって私のもとまで」


 クロと一緒にベルティーネがおっかなびっくり、私の元までやってきた。


「クロちゃん、いいかな?」

「はい、キキョウ様のお望みのままに」

「うん。ベルティーネ、あなたご家族はいないのよね?」

「はい、今は一人で暮らしながら、お針子の工房で働いています」

「じゃ、私の妹になろうか。こっちの子はアスフィー。あなたより少し先輩の妹よ」

「はじめまして、妹のアスフィーリンクです」

「……え。えええ!?」

「魔王を放っておけないのもあるけど、あなたの事をとても気に入ったの」

「どうかな、ベルティーネ」

「ええと、あの……ベルテとお呼びください。キキョウお姉様、アスフィーさん」

「うんうん、じゃあベルテ。あなたは今日から私の妹で、この国の次期魔王候補ね」

「え……ええええええええっ!?」


 後日、知ったのだが、野良の魔王は勇者に狙われやすいという。

 魔王を討伐した勇者は、力を増し、無条件でゴーレムが解放されるらしく、存在を知られると非常に危険なのだ。

 ベルテが次期魔王候補というのは、半分冗談ではあったけれど、私とこの国が彼女の後ろ盾になったという事なので、結果的に良い判断だと思う。

 当人はしばらくの間、あわあわして可愛かった。


【個体名】ベルテ・ユキノ(女)

【年 齢】13歳 誕生日2/29

【種 族】人族

【職 業】郷魔国次期魔王候補、お針子

【理力値】510(世界貢献度)  

【魔 装】翠玉の腕輪、緑翠のピクシードレス、翠玉の大鎌、魔法珠

【ゴーレム】暴王エメラルド・タランテラ(未開放)

【スキル】魔王、裁縫

【称 号】元アルス王国王女、魔王


 読んでくださり、ありがとうございます。

 新たに勇者と魔王が妹になりました。

 本来、アスフィーとベルテは妹分なので義妹となりますが、キキョウの心情を尊重して妹と表現します。

 最初は義妹と書いたのですが、キキョウに「違う、妹よ」と指摘された気がしたので。


 今後の更新は可能な限り、9時、15時、21時にする予定です。

 変更する時は、その都度お知らせいたします。

 現在、106話まで書いてます。タイトルにある宇宙戦艦の登場は、かなり先になりますね・・・

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