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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第14話 夢

目覚めると、そこにシルヴィアの体は無かった。


「シロくんは!?」


「姉ぇちん」


 耳元で囁く声に振り向こうとすると、頬と頬がぺったりと密着する。抱きしめるように体を支えてくれていたのは、無事蘇生したシルヴィアだった。


「シロくん……なんだよね?」

「うん、そうだよ。まさか姉ぇちんが異世界で魔王になってるなんて」

「それを言ったらシロくんだって、ラノベ主人公みたいじゃない」


「「あははは」」


「お二人とも、積もる話は後にしてください。陛下、まだ終わっておりませんよ」

「「はい、ごめんなさい」」


 前世の娘に注意された。そうだ、まだこの場に三万ものアルス王国騎士がいるのだ。彼らを民に迎えるか、敵として処分するかという大仕事が残っていた。もし戦う事になったら、ノエルとヴァルバロッテが鏖殺するだろう。


「魔王キキョウ陛下、我ら一同、あなた様に心より忠誠と服従を誓います」


 幸いな事に戦いにはならなかった。シルヴィアにお姫様っぽく抱っこされる私の眼前に将軍と王国騎士の全てが跪いていたのだ。


「ありがとう。でもいいの? 私はあなた達の王と城の人達全ての命を、戦争とはいえ、一方的に奪ったのよ?」


 ……犠牲者の中には、ここにいる騎士達の家族や友人もいるだろう。


「いえ、我が国は開戦もせず、一方的に郷魔国の民の命を奪ったのです。此度の死者とは訳が違います。王に苦言を呈す立場にあったのに、指揮をしていた私は極刑を以て断罪されねばなりませぬが……他の者達は、どうか寛大なご処分をお願い致したく存じ奉ります」


 確かに立場的に極刑だろう。愚王を止めるのも臣下の務めだ。しかも彼は将軍職。

 後ろの騎士たちは皆、将軍を赦して~という視線で一杯だ。彼は慕われてる良い将軍のようだ。実直そうだし処刑するには勿体ない。

 それにうちの処刑って、あれでしょあれ。無理。


「私は先程の演説で国民を幸せにすると宣言したの。先程あなた達も私の民になったのだから、みんなで幸せになるの。だから処刑とかなし。それにアルス王の命令なんだから、罪は全部彼に押し付ければいいのよ」

「しかし……いえ、陛下の御意に従います」

「うん、あなたはそのまま将軍として臣下に加わり、国と民と私を支えてちょうだいね」

「ハハァーッ!」

「では早速命令。出来る範囲でいいので、河川の堰を勝手に解放させないよう制圧してちょうだい。橋を再建後、解体します。それと破壊したお城を片付けて、遺体は身分に関係なく丁重に埋葬して欲しいの」

「はっ! 直ちに騎士団を再編成し、ご命令を遂行致します」

「ヴァルバロッテ、お城の方を手伝ってあげてね。魔力が回復したら水晶星で手伝うわ」

「かしこまりました」


 流石にあの瓦礫の山を人力で片付けるのは簡単ではないので、手持ちの魔法の鞄を数個渡した。これに瓦礫を吸わせれば作業も捗るはず。それと彼女に城の片付けを頼んだのには理由がある。城の財宝を回収してもらう為だ。しらふじが水晶星で城に忍び込んだところ、宝物庫には莫大な財貨が眠っていたので、きっちり回収し有効利用させてもらおう。


「じゃあ帰るですよー」

「よろしくねー」


 私を抱いたシルヴィアを大事そうに両手で包み、再び龍化したノエルが封印城へ向け羽ばたいた。帰りの速度はゆっくり目にと注文すると、ノエルは大きく翼を広げ風に乗り、ふわりと上昇した。


「あるじ様、本当に足治さなくていいです?」

「うん、この満身創痍な感じの方がお芝居には丁度いいから」

「姉ぇちん、何の話?」

「ああ、これから城に戻ってする事を、シロくんにも説明しておくね」

「ひょっとして悪だくみ?」


 城に着くまでの半時、姉は二か月半ぶりの、弟は二百二十年ぶりの姉弟の会話に花を咲かせた。


【個体名】シルヴィア・スノウフィールド(女)

【年 齢】220歳(18歳成長停止中)誕生日6/9 

【種 族】人族

【職 業】郷魔国勇者

【理力値】2420  

【魔 装】金剛石のピアス、聖銀の騎士甲冑、聖剣ヴァロンダイト

     聖盾ヴァロンクロス、魔法珠

【ゴーレム】ペガサス“シルフィード”(解放済)

【勇者ランキング】2位

【スキル】勇者、剣聖術、盾聖術

【加 護】勇者の加護、聖騎士の加護、聖女の加護

【称 号】白銀の勇者、銀姫、勇者王妃、異世界TS転生者


 彼方に封印城が霞んで見えてくる。

 城というより邪悪なる魔法使いの住まう黒き巨塔っぽい。

 私達が近付くと大扉が開き始めた。まだ広場には多くの国民が残っており、私の帰りを待っていてくれたようだ。白く巨大なドラゴンが扉の手前にふわりと降り立つと、大きな歓声が上がったので、私は一言だけ念話で報告した。


『勝ったよ~! でも魔力を使い過ぎたので、しばらく寝るね~』


 大歓声の中、ノエルの巨体がドスドスと入城し、わずか数歩でクロと臣下達の待つ魔王の間最奥に到着。ノエルは私とシルヴィアを紫の絨毯の上に降ろした。ちなみにシルヴィアは私並みに目立つ容姿なので、ノノの作ったパーカーを着せ、フードを目深に被っている。


「あらあら、また無茶しましたね」


 私の姿を見るなり、クロが呆れる。面目ない。臣下達も痛々しい姿に驚きを隠せない。


「白銀の勇者を倒し、王国騎士団三万が軍門に下りました……ご覧の通りなので、私は半月程度深い眠りにつきます。皆は予定通り事を進めるように。ハイベル、ソウイチ、皆、後を任せますね……」

「ヒッヒッヒッ」「お任せを」「ハハァーッ!」


 そう言い残し、私はシルヴィアに抱かれたまま眠りに落ちた。するとノエルも龍化を解き、幼女の姿に戻ると「あるじ様に隷属するわっちも……眠りに……つく、です。ぐぅ~」少々芝居がかっていたが、その場にへたり転がり眠るふりをした。


 クロがノエルの足首を掴んで引き摺ると、白いワンピがめくれ、幼女のあられもない姿をこの場の者達に披露した。なんでこの子は服を着たがらないんだろうか。辛うじてワンピースを着るようになったけれど、下着は隷属魔法で命令しない限り絶対に穿かないのだ。今はまだ幼女だからいいが、年頃の娘になったらどうしたものか。


 幼女の股間を薄目で眺めながら、十年後に思いを馳せた。


 得意の狸寝入りをしながら、私達はクロの転移魔法で館に戻ると、ベッドに運ばれ問答無用で魔力を譲渡された。濃厚なあの方法で。

 満足げなクロの隣で両足と角の再生を確認していると、シロくんが叫んだ。


「ね……姉ぇちん……その子とどーゆう関係なの!?」

「恋人以上、ほぼ夫婦」

「女の子だよ?」 

「どうもねぇ、この世界に来てから、女の子が恋愛対象になったみたい」

「マジか」


 元々、病のせいもあり恋愛には消極的だった。

 しかし、この世界に来てからは、なぜか女の子が大好きだ。超好きだ。勿論、誰でもいい訳ではない。すこぶるクロが好きだ。愛しくてたまらぬ。まぁ前世が同性愛者だったようなので、今世もそうなのだろう。

 逆に男には全く興味が無い。むしろ無理かも。それは仕方ないだろう。

 男性の視線が胸や尻に行ってしまうのは仕方ないのも理解してるので、見られるのは問題ない。

 だが無配慮な視線を送られると、なんか無理。

 だが、あの前世の夫だった鍛冶王さんは別枠だと断言出来る。

 そして今世は、弟の事を溺愛してたしね。


「なのでシロくん、いやシルヴィアちゃん。今なら私、あなたを受け入れられるよ?」

「あ、お断りします」

「ガーン」

「僕、異性愛者なので。二度結婚して合計五人産んでるので」

「マジかー」

「夫は二人とも天寿をまっとうしたよ」

「そうだったんだ、良い家族を持てたんだね」

「うん、でも片方の家系は今日、姉ぇちんの攻撃で滅んだけど」

「ごっ……ごめんなさい!」

「いいからいいから。僕も昔は王妃だったけど、今の腐りきった王家には何の未練もない。僕こそが責任を持って滅ぼすべきだったんだよ」


 王家と何があったのだろうか。申し訳なさそうに苦笑するシルヴィア。

 ああ……この表情は間違いなくシロくんだ。


「それより、その彼女」

「クロちゃんの事?」

「以前、何度か見かけた事があるけど、成長止めてるみたいだし、ひょっとして勇者なのかな」

「龍王リヴァイアサン様だよ」

「クロとお呼びください。ご弟様」

「……クロ様」


 流れるような美しい所作で、シルヴィアが土下座しようとした瞬間、クロはそれを止めた。


「アルス王家は滅び、国土も間もなく郷魔国に併合されます。そしてあなたは一度死にました。謝罪は無用ですよ。ご弟様」

「……あの、僕の事はシルヴィアとお呼びください」

「はい。シルヴィ……ぷっくくくくっ…ぷふぅっ!」


 こんな笑い方をするクロ、初めて見た。


「クロちゃん? 今のやり取りに、そんなにおかしい所あったかな」

「いえ、その、土下座の所作がキキョウ様そっくりで、本当に姉弟なのだなぁと……ぷぷっ」

「それは気付かなかった! 私達、お父さんの土下座を見て育ったものね」

「そうそう、父さんは僕達の土下座の師匠だよね」

「ぶほぉっ!」


 どうやらクロには、相当のクリティカルだったようだ。

 その後、シルヴィアもこの館に住んでもらう為、三階の一室を自由に選んでもらって、引っ越しが始まった。



 その夜、夢を見た。


 家が壊れたり、人も全然死なない。ただ、私が寝ている夢。

 誰かが訪れては、私の顔を覗き込んで去ってゆく。

 今のは誰だっただろうか、知っているけれど名前が思い出せない。


 あ。この人は知っている。私のちっちゃいドワーフの旦那様。

 泣かないで……男嫌いな私も、あなたのおかげでとても幸せだったよ。


 おや、この子達は私の一番最初の娘達。双子のヴァルバロッテとグリンレッテね。

 しばらく見ないうちに美人さんになったわ。ごめんね、だめなお母さんで。


 そうか、これは私の前世……もうすぐ輪廻に旅立つ朝の夢だ。


 誰よりもポロポロと涙をこぼしているのはクロだ。

 互いの指をからめ、ぎゅっと握りあう。

 クロの手はちょっと冷たくて、しっとりして気持ちいいな。

 クロ……クロミエル。

 ごめんね、あなたの想いに応えられなくて。


 生まれ変わったら、きっと、今度はあなたのものになるよ。

 

 そして私は光の渦に…………あれ、クロがまだいる。


「あぁ……クロミエル」


 まだ夢が続いているのか。なんだろう、クロがキョトンとしてる。


「キキョウ様……どうしてその名を……」

「あれ……今の夢だったのか」


 指をからめ握る手に、ぎゅっと力を入れる。


「クロちゃんの嘘つき」

「何の事でしょう」

「前世の私と約束、やっぱりしてたじゃない」

「思い出したのですか?」

「ちょっぴりね。まったく、なにが『私はあなたのものです』よ」


 ぷくぅっと頬を膨らませ、そしてにっこり満面の笑顔。


「今世の私は……クロちゃんのもの。なんだよ」


 みるみるうちに耳まで真っ赤に染まるクロ。

 

「クロミエル……結婚しよう」


 その姿があまりにも愛しすぎて、思わず抱き寄せ求婚してしまった。


 あわあわするクロは、思わず子宮が疼いてしまう程の可愛いらしさだ。

 結婚した場合、どっちがお嫁さんになるべきだろうか。


 読んでくれて、ありがとうございます。(シルヴィア)

 龍王リヴァイアサンと言えば、いくつもの国を滅ぼしたと伝わっており、龍王の中で最も恐れられている存在だよ。

 それがあんな可愛い娘で、姉ぇちんの恋人になってるなんてね。しかも姉ぇちんと先王キョウカ様が、龍王様の制裁からアルス王国を護ってくれてたんだもの。

 元アルス王妃として、頭が上がらないよ。

 しかし、アルス王家は何でああまで腐ってしまったんだろう。思うに、30年ほど前、テイマーの魔導師勇者を迎えてからのような気がする。

 僕は苦言を呈しまくってたから、あの愚王には嫌われてたからね。

 なんでも千二百年封印され、弱っている龍王バハムートを使役するとか、バカな事を言ってたからね。

 今回の攻撃で王と一緒に死んじゃったから、もう何も聞けないけど……

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