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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第11話 宣戦布告

 いきなりの爆弾発言に、先程の空気は瞬時に吹き飛び、一部の者が反対の声を上げた。私はそれを制止し、話を続ける。


「アルス王国の蛮行から三年経つけれど、あなた達は一体何をしてたのかしら。キョウカが必死に奔走していたのを文官が嘲笑っていたなんて話も聞いたわよ?」


 文官の列を睨むと視線を逸らす者がちらほら。震えながら挙手し、気弱そうな文官が反論した。


「お待ちください、いくら何でも大国との戦争など正気の沙汰とは思えません。それに陛下であれば、あちらも交渉の席に着くやもしれません」

「は。キョウカの三年が無駄骨に終わったのに、更に続きを私にやれと? そんな悠長な事言ってられる愉快なお時間などとっくに過ぎているのだけれど、それはあなた達の総意なのかしら。ならば全員後進に席を譲って辞職なさいな」

「わ……我が国の兵力では戦争にもなりません。我らには対話での解決を模索する道しかないのです。なによりあなた様は戦闘職ではないでありませんか」


 お、言ってくれるね。

 そう、郷魔国の兵力は近衛騎士団と魔国騎士団を併せて二千と、普段は農業に従事してる兼業騎士が一万五千程。そして勇者はヴァルバロッテのみ。

 他にも勇者は大勢いるが軍属ではない。

 対するアルス王国は、王国軍が四万五千、地方軍が十二万。公表されてる勇者は七名。ゴーレム使いの数は未公表。このように両国の兵力には歴然の差があるのだ。


 こちらには勇者ランキング一位のヴァルバロッテがいるが、あちらにはランキング二位の白銀の勇者シルヴィアがいる。この二人のランキングは頻繁に入れ替わるそうで、ほぼ互角だ。王国勇者にヴァルバロッテが足止めされるだけで、いくら屈強な鬼人の軍であろうと多勢に無勢ですり潰される。更に勇者の別動隊で魔都を襲われたら、被害は甚大なものとなるだろう。


「実は今日、ソウイチに私の名代としてアルス王国に行ってもらったの。これを持たせてね」


 ノエルが正八角形で直径三十センチ程の水晶板を全員が見えやすい位置に置き、表面に刻まれた魔法陣の一部に触れると、白と紫のドレスをまとった私がふわりと宙に浮かび上がり、皆が感嘆の声を上げた。

「白い妖精ふぉおおおおっ!」なんか叫んでるのもいるし。

 まるでそこに私がもう一人いるみたいに精巧な立体映像を映し、音声付き動画の再生も可能な“姿見水晶”という魔道具だ。これにアルス国王へのメッセージ映像を録画し、ソウイチに届けてもらった。



『初めまして、アルス王国国王陛下。私は郷魔国の魔王キキョウ。

 千年ぶりに帰ってきたが、私がいない間に好き勝手してくれたようね。

 以下の条件を飲むなら赦してやってもよい。

 まず一つ目。全ての河川の堰を下流に配慮し解体する事。

 二つ目。賠償金として十兆スフィアを支払う事。ローンもにっこり

 三つ目。アルス王都を含む国土の三割を郷魔国割譲する事。

 これを七日後の正午までに履行せよ。これは最終通告である。

 もはや対話は不要。出来ぬ場合、それをアルス王国の宣戦布告の意思と解し、私は即攻撃を開始するであろう。

 では、ごきげんよう』 



 静まり返る城内にクロとノエルの拍手が、パチパチペチペチと響き渡る。


「こっこれでは宣戦布告と同じではありませんか!」

「よかった。皆がそう思ったなら、アルス王国もそう受け取ってくれるわね」


 非難の声のは全体の二割程度だろうか。武官と女性達は無言だ。

 私がひじ掛けを指でトントンと叩き苛立つ仕草を見せると、ノエルが腕にすりすりして癒してくれる。


「なんと無責任な! 我らに一言もなく戦争を決めるとは!」


「無責任? ……米の備蓄がもうすぐ尽きる。この春に田植えを始めないと民が飢え、年を越せない。それを狙っている敵国に対話ってバカなの? もう選択肢は戦争しかないでしょう。この三年、キミら何をしてたのかな」


 黙り込む臣下達。この人達いらなくない? うーわ。クロの視線がやばい。


「代案が無いなら黙って従いなさい」


「ならば私めに素晴らしい代案、いや妙案がございますぞ! 陛下がアルス王国の王子を王配として迎えるのです! さすればきっと万事上手くゆきますぞ!」


 またお前か。中年文官の提案に背筋がぞわりとした。


「私に敵国の王子を夫に迎えろ……と? 今さっき、私は同性愛者だと公表したばかりよね?」

「いえ、そのような些事は飲み込み、国家の安寧の為、夫を迎えるべきです。アルス王国の第二王子は容姿端麗な好青年です。それになにより前世のあなた様は大勢の男達と――ピギィィ!」


 背筋のぞわぞわが酷い嫌悪に変わり、前世の話を持ち出された瞬間、思わず手が出た。

 私は無意識に魔導銃を構え、トリガーを引いていたのだ。

 そして、はたと我に返る。


「やっちった」

『やっちったねぇ、あはははっ!』


 凄まじい轟音と共に雷が中年文官に落ち、全身から煙をあげながら黒こげの物体がゴロンと転がる。

 即死だ。周辺に肉の焦げる嫌な臭いが漂う。

「美味しそう……」ノエルのつぶやきは無視しておこう。

 この場の武官も文官も近衛騎士も、ドン引きし、恐れ慄いているのが伝わってくる。

 中には憮然と、当然だろうという顔をしてる者もいる。


「告げる。私は前世のような婚姻も子作りはしない。もはやする理由がない。私に求婚する事は、宣戦布告と同義。愚かな犠牲者を出したくなければ、国の内外に徹底して周知させなさい」


 私は魔導銃をアサルトライフルモードにチェンジし、黒こげ文官に照準を合わせた。


『魂の分離まで残り時間26分36秒…35秒…蘇生成功率98.8%……魔力充填完了、魔導バレル展開』


「死者蘇生、リザレクション!」


 黒こげを中心に神々しい金色の魔法陣が現れ、ぽわぽわと光の玉が雪の如く降り注ぎ体へと吸い込まれてゆく。やがて服がボロボロのワイセツ物陳列状態の中年文官がむくりと起き上がった。


 この世界では死後三十分経過すると、肉体から魂が離れ輪廻へと旅立ってしまう。流石にこの魔法は訓練で試せなかったが、ここで使う事が出来たのは僥倖だ。

 現在、復活の奇跡と呼ばれるリザレクションは、女神教の教皇のみが行使できる神の奇跡と云われており、実際にそれを目にした者は、ほとんど居ないという。タイムリミットがあまりに短いので、転移魔法を駆使した連携がないと死者蘇生を活用するのは難しいだろう。


「え……何この状況」


 急激な視線の変化に戸惑い、場内を見回すと――。

 ひれ伏す者、驚愕し言葉の出ない者、手を合わせ涙する者、跪き頭を垂れる者。

 その中を放心状態の股間丸出し中年文官が、ブヒブヒと引きずられ退場してゆく。


「おやつが行ってしまったです……」

『ぷはははは』

「どっ……どうしたのこの人達」

「キキョウ様の奇跡の御業を前に、心よりの臣従を誓っているのですよ」

「マジですか……なんか魔王というより、教祖になった気分……」

「遅かれ早かれ、こうなったと思いますけど」

「まぁ……いっか」


 気を取り直し、臣下達に向き直り、改めて告げる。


「七日後、私は国民に向け即位宣言します。そして、その日の正午をもって我が国はアルス王国と開戦する事になるでしょう。先王キョウカの決意を私が引き継ぎ、この国の魔王として相応しい力を国民に示します。あなた達も自身の地位に相応しい働きをなさい!」


 ハハァーッ。臣下一同がきれいに頭を垂れた。


 その後の会議で具体的にアルス王国とどう戦うのかと質問されたが、こればかりは敵に知られると逃げられるので、極秘とさせてもらった。まぁ納得できないよね。


「大丈夫、私を信じなさい。仮に失敗しても次の策もあるからね」


 失敗したらクロによる大虐殺の幕開けだけれどね。

 こうして、初めての御前会議は終了した。



 その頃――アルス王国。

 国王の間では、魔王キキョウのメッセージが再生されていた。


「まさか、かの伝説の魔王が転生し戻ってくるとは……」

「これでは宣戦布告と同義ではないか!」

「なんと美しい……」

「ソウイチ殿、我らを謀っておるのではなかろうな!」

「我が麗しき魔王陛下は、すべて本気にございます」

「結婚したい」

「おろかな小娘だ、我が国との兵力差が理解できぬのか!」

「あの美しい足で踏まれ罵られたい」

「おい、誰かこいつを摘まみ出せ!」


 怒号の飛び交う中、白き魔王の姿を目にし、激しく動揺する者の姿があった。

 銀糸の髪に銀水晶の瞳、銀姫と名高い絶世の美女。白銀の勇者シルヴィアである。


「姉ぇちん……」

 読んでくれて、ありがとうです。(ノエル)

 落雷による焼肉は、通電が一瞬の上に内部を通らないので、生焼けになるです。

 でも、あれだけ黒焦げになる電圧なら、内部は丁度いいかもですね。

 あっ……ああああ、美味しそうだったのに、生き返ってしまったです……


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