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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第104話 ただいま

「じゃあみんな、転移するよ」『ノエル、いくよ』『あい』


 しらふじのコアルームにて、ベビーカーの茉莉花とラミの分体を中心に、私、光洋、車椅子のお婆ちゃん、しらふじが手を握って輪を作り転移に備えた。私だけ転移してしまう事は無いはずだが、念の為である。


「ノエルの元へ転移っ!」


 しらふじの巨体とケージ艦しらゆりの転移先は、キキョウの館ダンジョン内では高さが圧倒的に足りない為、ノエルには前もって城の上空で待機するよう伝えてある。

 転移が成功すれば、そこは空の上。

 眼下に封印城と魔都ミモリが見えるはずなのだが――


「ここ……どこ?」


 転移が何かに阻まれたような、強制的に終了させられた感覚がある。

 目の前には巨大な壁が……違う、これは塔だわ。

 直径一万キロはあろう巨大な塔。それが宇宙空間に浮いているのだ。

 上を見ても、下を見ても終わりが見えない、とんでもない巨塔である。

 なぜこんな場所に出たのだろう、周辺にノエルの姿もない。

 入れないのはこの塔が原因か。ぐっと感覚を研ぎ澄ますと、間違いなくこの先に、この塔の中にノエルとクロの存在を感じる。そして、ノエルとは念話が普通に通じたが、残念ながらクロとは通じない。


『あるじ様、今どこです?』

『どうやら、ラヴィンティリスの外にようね』


「すげぇ、なんだここ」光洋くんにつられ見回すと、周囲に同じような塔がいくつも浮いており、さらにその向こうには地球型の青い惑星がずらりと無数に並んでいた。


「みんな、この塔の中が目的地よ。もう一度転移しましょう」

『待て、第4423フロア内への転移はワレが阻害中である』

「ラヴィちゃん!」


 突然、白いカクカクポリゴンマスクが私達のそばに現れた。

 世界神ラヴィンティリス様である。


「どういう事? 私達、郷魔国に帰りたいんだけれど」

『帰還するのはいい。だが、イレイザーを放てるこの龍を連れ込むのは許可出来ない』

「イレイザーってファフニールが使ってた核力砲の事だよね。あ、ハイペリオン砲か」

『そうだ。その兵器はフロアの床も壁も軽々と撃ち抜く。この生命の塔全体の存亡に係わるのだ。故にその龍は元居た場所に返してきなさい』 

「拾ってきた子犬みたいにゆーな」


 つないだ手からしらふじの不安が伝わってくる。私はその手をぎゅっと握った。


『それはそうと、キキョウよ。ファフニール討伐ご苦労であった。更にはワレが認識出来ない邪神を捕獲したとの報告も受けている。世界繁栄の功績も含め、そなたに大魔王の称号を与える』

「だ……大魔王って……私が?」


 なんか鼻がムズムズして、くしゃみ出そう。

 ちなみに大魔王は、龍王と同等で神に準ずる存在だそうな。


「わかりました。では大魔王の権限で、この龍、しらふじをラヴィンティリスに連れ帰りますね」

『それとこれとは別の話である。危険物の持ち込みは神であろうと許可出来ない』

「うぬううう……じゃあ言わせてもらうけど、このしらふじはね、私の知る限り一度たりとも私欲で力を振るったりしてないわよ。ファフニールもこの子なしでの討伐は出来なかったし、あっちの世界では二つの惑星と合計百億もの人類を救ったの。しかも自分の命を捨てる覚悟でよ? それでもダメ?」

『ダメである――』

「ぐぬぬぬぬっ!」

『が……その龍を迎えた場合。リスクに見合うだけの利益があるのなら、譲歩しよう』

「ほう……作戦タ~イム!」

『認める』


 リスクに見合う、しらふじの利益か……私は悩みながら、みんなの顔を見た。

 不安げなしらふじ。光洋くんはポカーン。お婆ちゃんはニコニコ。金色で目立つラミちゃんは世界神の視界に入らないよう、茉莉花の陰に隠れている。

 ん……金色……利益……お。


「キキョウちゃん……」「大丈夫だよ。しらふじは絶対に連れて行くからね」

「ラヴィちゃん、貨幣の女神コイントス様を呼んでもらえます?」

『しばし待て』


 ほどなく、ピンクのアフロをふわんとさせながら、コイントス様が現れた。

 相変わらずド派手なアフロとジャージ姿が格好いい美女である。


「ふむ、状況は把握した。そいで、あたいにこの龍の有用性を示し、世界神の首を縦に振らせたいと……かまわねーが、どんな驚きのネタがあるんだい?」

「実はこの子、広大な亜空ケージを利用して、ある物を大量に持ってるんです」

「ある物?」

「黄金のインゴットですよ」

「マジか! そんな勿体ぶって言うんだ……十万……いや百万トンはあると見た!」

「おしいっ、なんと……一億トンです」

「いっ……いちお……」

「あ、正確には一億二千万トンだそうですよ」


 しらふじが金塊を亜空より取り出し、お手玉するかのように宇宙空間へ漂わせた。一本六万トンの六角柱インゴットがハチの巣のような塊となったそれは、ひとつ六百万トン。それが合計二十個浮いているのだ。


 コイントス様はその光景を前に十秒ほど思考停止したのち、ハート形のポシェットから、ストラップてんこ盛りの、派手にデコられたガラケーを取り出し、ピピピピ……ものすごい勢いでメールを打ち込んで送信した。

 すると一分も経たないうちに、ラヴィちゃんと同じようなマスクが現れ、コアルームを埋め尽くす勢いで増えてゆくではないか。

 男、女、亜人、動物、能面、アートっぽい物まで様々なマスクが百以上浮いている。

 これらはすべて他のフロアの世界神なのだろう。

 そんなマスク達がラヴィちゃんに詰め寄り、じーっと見つめている。

 うお、妙な圧を感じる。

 私達には聞こえないが、猛烈なやり取りが行われているらしい。

 やがて、プルプルと震えだすラヴィちゃんマスク。


『りょ、了解した。彼女の保有する黄金を対価に、超位龍ルミナスゲイザーをワレのフロアへ迎え入れよう。後ほど各フロア神は希望する黄金の量を申請せよ』


 その言葉に満足したフロア神達は、あっという間に消えていった。

 どうやら、私の目論見は予想以上に効果抜群だったらしい。コイントス様が言うには、ラヴィンティリスと同じように貨幣経済で金貨を使用するフロアでは、慢性的な黄金不足で苦慮しているという。

 今回持ち込んだ量は多くのフロアの助けになるそうな。


「キキョウ~ッ、マジ助かったわ。マジ感謝!」

「いえいえ、こちらも助かりましたよ」

「これからもよろしくなっ」

「こちらこそ、よろしくお願いします。お姉様」


 ホクホク笑顔のコイントス様が宇宙に転移し、巨大な金塊をポシェットに収納してゆく。

 すべて回収し終わると、手を振りながら消えていった。


『キキョウ、そういう事だ。転移するもよし、塔の門を開くから、そこを通ってラヴィンティリスへ帰還してもよいぞ』

「え、じゃあ折角だし、門の方でお願いします」


 すると、塔の上方で巨大な扉が開き、進入ルートを示すガイドビーコンが現れた。

 しらふじが嬉々とそこへ向け上昇してゆく。


「うわ、トラクタービームで引っ張ってくれるんだ。らっくちーん」

『ではまた逢お――』

「待ってラヴィちゃん。しらふじの利益の話、まだ続きがあるのよ」

『まだ他にも鉱物資源が?』

「白金と銀もそれなりにあるけど、ラヴちゃん自身の事」

『ワレの事?』

「しらふじは体内で、生体端末を作れるの。ほらこの子」

「はーい、ボクがこの龍の人型生体端末だよ」


 実は以前、しらふじに生体端末の事を詳しく説明された事がある。

 作ろうと思えば端末しらふじを量産して、しらふじハーレムを作れるし、生き物でなくとも自我のある存在ならば、生体端末の脳へインストールできるという。

 つまり、魔装AIであるイノゥバに肉体を与える事が可能なのだ。

 そして、それが出来るという事は――


「ラヴィちゃんって自我あるよね。その場合、生身の体を得られるって提案なんだけれど、どうかな?」

『……ワレが生身の肉体を……だが、それではフロア管理に支障をきたてしまう』

『あ、それは大丈夫だよ。ボクもそうだけど、メインフレームに存在したまま生体端末と意識と感覚を共有できるから、もう一人自分が増える感じかな』

『なんと』

「例えばキキョウちゃんの館で暮らしながら、世界神の仕事も同時に行えるんだよ」

「ああ、それってネロ様と同じよね」

「確かにそうだね」

『それは……魅力的だ』

「じゃ、決まり。ラヴィちゃんのなりたい姿を考えといてね」

『え』

「初期設定のままだと、ボクと同じ姿になっちゃうよ」

『なるほど、検討してみよう』

「近々、また女子会しましょうね」

『了解した』



 ラヴィンティリスの中心にそびえる、世界の柱を覚えてるだろうか。

 実はあれ、この生命の塔の全フロアに通じているセンターピラーなのだ。

 現在、私達はそこへ向けて移動中である。ちなみにこの通路。ラヴィンティリスの天井内部を通っているのだが、上のフロアから見れば地下という事になる。

 ピラーへ到着すると扉が開き、内部の巨大な縦穴へおっかなびっくり進入した。

 どうやらピラー内も無重力なので、足を踏み外しても真っ逆さまに奈落の底って事にはならないようだ。

 途中、内壁に

 底の見えない縦穴を降下してゆくと、壁から光が漏れている場所が見える。


『ピンポンパンポーン♪ ゲートが開きます。ご注意ください。ゲートが開きます。ご注意ください』


 ゴゴゴゴゴゴ……

 オークション都市メイ・ルフーヤに世界神の音声アナウンスの響く中、ゆっくりと柱のゲートが開いてゆく。

 そして、見た事もない人型の巨龍があらわれた。街中の人々が驚きの表情でこちらを見上げている。あとで知ったが、どうやらこの扉が開くのは有史以来初めての事らしい。


「光洋くん、ここが異世界ラヴィンティリスだよ。想像してたのと違ったかな?」

「あ……なんというか、もっとファンタジーな世界を想像してました」

「だよねー……あ」


 扉を出たところ、呆気にとられた表情をした少女がふたり浮いていた。

 一人は菫色の髪をした、私の半身同然の少女。

 そしてもう一人は、私がこの世で最も愛する黒髪の少女だ。

 ゲート魔法を目の前に開くと、黒髪の少女がすごい勢いで飛び込んで、私に抱き着いてきた。


「おかえりなさい」

「ただいま、私の可愛いアイオライト」

 


 閑話


 …

 ……

「まだ?」

「まだです」

「まだ?」

「ま・だ・で・す」

「ま……あ、来た……でも遠い」

「転移成功したようですが、現在この世界の外側にいるそうです」

「私の念話が通じない……ちょっとキキョウ様の所へ行ってくる」

「待つです。この世界の外は真空でマイナス270度の極寒ですよ。わっちもクロミエルも長居できず確実に死ぬです」

「ぬう」

「今、世界神の許可が下りたので、あるじ様は世界の柱からラヴィンティリスへ入るそうで――むぎゅ」

「さぁノエル、キキョウ様のところへ転移なさい」

「ダメです。あるじ様は現在超高速移動中で、転移は不可能です」

「ぬぬぬ、役立たず」

「この四年間、わっちの股間の臭いで精神衛生を保ってた分際で、その物言い……ほらほら、メイ・ルフーヤへ向かうですよ」



 いつも読んでくれて、ありがとうございます。(キキョウ)

 ラヴィちゃんの言動から、ラヴィンティリスは普通の世界ではないのだろうと思ってたけど、想像以上にとんでもない世界だったでござる。

 さて、ここまで物語が進んだので、この物語の世界構築に影響を受けた偉大なる作品を紹介しますね。

 弓月光先生の『トラブル急行エクスプレス

 板橋しゅうほう先生の『アイ・シティ』

 この二作品です。私の聖典ともいえるマンガです。ぜひとも読んでいただきたいですね。アイ・シティはアニメ化してますが、ぜひマンガで!

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