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ラヴィンティリスの白き魔王ですが、ユリハーレムに龍王や宇宙戦艦がいる件について語りますね。  作者: 烏葉星乃


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第103話 さようなら

 あれからしばらく、地球はあの日の天体ショーの話題でもちきりであった。

 更にしらふじがSNSで詳細な動画を公開した事で、もう火に油状態である。

 世界の終焉のような皆既日食、そして想像を絶する巨大な十字架。

 あの日、地上から見上げた光景は、それはもう恐ろしくも神々しいものだったようで、多くの者達が神の存在を感じたと声を上げたそうな。

 おかげで様々な宗教が産声を上げる切っ掛けとなるのであった。


 そして、しらふじが龍化した事も、大きな話題となっている。

 最近はあの巨体が頻繁に世界中の空を飛んでいるので、目立つ事この上ない。

 神々しいその姿と巨大十字架と関連付け、しらふじを崇め奉る宗教がいくつか生まれたようだ。まぁ実際、姉妹なんだけどね。


 龍になったしらふじは、世界中の空を飛び回ったり、海へ潜ったりと、アクティブに行動していたが、中身の方はしばらく無口だった。

 クロスメリア五姉妹からもたらされた膨大なデータをずっと読み込んでいたのだ。

 自分のルーツや武器の神に召された後の世界がどうなったのか。

 ずっと欲していた情報が全て手に入ったのだが、かなりショッキングな内容も含まれていたようで、心の中で折り合いを付ける為、しばらく自分会議をしていたという。



 私がこの世界に戻って、四度目の春が来た。当初の予定では正月明けにラヴィンティリスへ帰る予定であったが、ひいらぎの小学生姿を見る為に再延長したのだ。

 もうね、これでもかとキョウカを拝み倒し、ランドセルを購入する権利を譲ってもらったよ。先生のご両親も孫へ送りたがっていたのだけれど、初孫ではないようだし、那由多もいるし、折れてもらったのだ。

 そしたら逆に「だったらカイと茉莉花もわしらの孫じゃぁぁっ!」って、二人にランドセルを贈られてしまったよ。学園に通うようになったら、ありがたく使わせてもらおうね。


 カイも三歳になった。紫水晶の瞳も相まって、顔立ちは私によく似ている。男の子は母親に似るというけれど、まさにそんな感じである。

 最近のカイは星那と一緒に居る事が多いようだ。とても仲睦まじいね。

 そして茉莉花は四十センチ程まで大きくなっている。今は生まれた頃のような灰色だ。

 最近は「ごはんだよ~」ひいらぎが抱き着いて、魔力を分け与えていたりする。

 この子、なんと五歳ぐらいから魔力をしっかり操作しているのだ。


 三月中旬、およそ三年半に及ぶ太陽系クルーズが無事終了した。

 当初の三千万の予定よりかなり増えて、四千二百万もの人々が宇宙旅行を楽しんでくれた。最後は私がこれまで関わった世界中の人達を招待し、ラストクルーズを開催した。

 この旅行企画を実行した合弁企業の皆さんや、桔梗屋の商品開発や郷魔国へ持ち帰るお土産に関わった人達。そして国会議員達。そうそう、先月末に日本皇国を属国から開放して、我が郷魔国との友好の証にすっごく大きなルビーを贈ったよ。

 あとはお世話になったメアリカ王家とホワイトパレスに務める皆さんもね。

 そしてご近所付き合いしてた町内会の皆さん。子供達の通う学校関係者、全校児童も教師も用務員さんも。折角なので春からひいらぎと一緒に一年生になる同級生もご家族一緒に招待した。他には特別ゲストに惑星エデンの議長達や、ワープ実証艦のクルー達もね。

 クルーズの最終日。しらふじがさざんかをけん引して惑星エデンに向かった。

 議長達の送迎を兼ねたものだけど、この三年半で一番すごいサプライズになったね。

 実はこの宇宙旅行、私とこの世界とのお別れ会を兼ねてたりするのだ。


 そのひと月ほど前。


「ラミちゃん、決めたのね?」

「ええ……あたしぃ、この子達とこっちに残るわぁ。そしてぇ、二人が独立したらぁ、この世界の料理を十年くらい学んでぇ、ラヴィンティリスに戻ろうと思うのぉ」

「うん、それもいいね。つむぎちゃんとなぎくんも、それでいいのね?」

「はい。私もラミママと一緒にお料理の勉強しようと思います」

「ぼくもラミママとけっこんしたいので、いっしょにいます」

「まぁ二人を連れて戻る可能性もぉ、無きにしもあらずぅ?」

「ふふふ、戻ってくるのを楽しみに待ってるわ。でも、もし地球にとんでもない事態が起きた時は、みんなを護ってあげてね」

「もちろんよぉ、あたしが何とかできる範囲でだけどぉ」

「うん、もし手に負えない事態の時は……」

「ええ、そのつもりよ。あ、そうだわぁ。これあたしの分体、一緒にラヴィンティリスへ連れてって欲しいのぉ」

「ちっさ……この感じ、ひょっとしてこっちも本人?」

「うわぁ、ラミママお人形みたいっ!」「おっぱいすこししぼんだ……」

「「小さくてもぉ、まったく同じあたしぃ。実は死の契約の回避方法よぉ」」

「マジかー」

「「実はあっちに分体を残してるのぉ。人食いのままだから、あたしが止めるわぁ」」

「なるほど、よろしくね」


 さすがスライムである。ちなみに現在彼女は、雪野羅実という名前で雪野家の家族となり、一緒に生活している。既に料理もかなりの腕前だ。そして食べ歩きも相変わらずで、もうすぐ『邪神のグルメハザードマップ関東版』という本が出版されるらしい。

 

 

「えーと、乳牛と肉牛の牝が各二十頭、牡が各三頭。ブヒ……じゃない、豚が……」

「お母さん、にわとりがいっぱい卵うんでる~」「かいくんたまごー」「だね」

「あらら、持ち帰ってオムレツにしよっか。みんな拾ってちょうだい」

「はーい」「かいくんひろおー」「うん」

「みんなぁ、ソフトクリーム買ってきたわぁ。おやつにするわよぉ~」

「やったぁ」「かいくんたべよー」「うん、たべる。星那ちゃん?」「うん……」


 帰還の前日、子供達を連れ、山沿いの牧場へやってきた。ラヴィンティリスへ持ち帰る家畜を受け取る為だ。食品類は魔法珠に収納したが、家畜などの生き物は入れられないので、牧場で預かってもらっていたのだ。うお、ジャージー牛乳ソフトうめぇ。

 牛、豚、羊、山羊、鶏、ダチョウ、七面鳥、ホロホロ鳥、乗馬用の馬なんかもいる。あとユキやベルテ達のリクエストで、あちらの世界にはいない品種の犬猫や兎なんかも連れてゆく事になってる。

 最終チェックを終え、家畜コンテナへ動物達を移動し、これらをケージ艦内へ積み込んでゆく。なんだか倉庫の一角がノアも箱舟みたいだわ。

 

 それと、しらふじが持ち帰りを強く希望した自動車。

 先日、注文した分がすべて揃ったので受け取りに行き、私が魔法珠に収納しようとしたら「ボクが持っていくんだぁぁっ!」と、しらふじがケージ艦へ隠すように格納していったのだ。ケージ艦しらゆり内に入るのはこれが初めてだけれど、内部には戦艦がびっちり詰まっており、とても広大で壮観である。

 倉庫として使えるスペースもかなり広大で、そこへ電装部品とエンジンのない状態のSUVやミニバンを載せた数十のパレットを積み込んでゆく。消耗品や交換部品のコンテナもすごい数だ。

 他にバイク類なんかも、オフロードタイプを中心に積み込まれていった。

 一応言っておくけれど、これらお土産の代金は全額きちん支払ってるからね。

 む……なんだろう、リストに載ってないコンテナが多いなぁ。


「しらふじ……戦車は?」

「うん、戦車は(装輪戦車とか各種)一台だよっ!」

「……まぁいいでしょう。あれって戦闘機?」

「メアリカ王国から最新のEX-36と皇国海軍からUSS-2飛行艇をもらったの!」

「まさか、無理言ってないでしょうね」

「きちんと相応の対価を渡してるよ。宇宙時代に必要な素材の開発技術とか、軌道エレベーターの設計図とかね」

「そっか、ならばよし……ちょっと、あそこに見えてるのって、ひょっとしてエデン宇宙軍の旗艦じゃないの?」

「うん、完成したての二番艦ホーミーコーチをもらったんだよ…………もらったのぉぉぉっ!」

「いや、何も言ってないし……ここって、しらふじのおもちゃ箱なのね」


 こうして、驚くほど膨大な量のお土産の積み込みが完了した。

 その夜の雪野家は、先生と羅実が料理の腕を振るって、お別れパーティが開催される事となった。

 一緒にラヴィンティリスに行く光洋くんとお婆ちゃんとそのご家族。家族付き合いをしていた、太田さんや吉川さん、総理の芦田さんご一家。わざわざメアリカ王家のドワイトさん達も来日してくれた。

 

「カイくん、明日行っちゃうんだね」

「うん……星那ちゃん、いままでお世話になりました」

「ギュってしていい?」

「もちろん」

「あーなゆもー」

「うん、那由他くんもおいで」


 翌朝十時。雪野家豪邸前の空には、しらふじと尻尾を連結させたケージ艦しらゆりが浮いていた。そして周囲を報道用ドローンが数台飛んでいる。ヘリはうるさいので来たら撃墜すると釘を刺した為だ。

 予定ではそろそろノエルと念話がつながる時刻になる。

 そしたら、みんなとは本当にお別れだ。


「みなさん、昨夜も言ったけれど、本当にお世話になりました。どうかお元気で」

「うん、キキョウもあっちでみんなと幸せにね」

「キキョウ君も元気でね。あまり無理しちゃだめだよ?」

「ありがとう先生。キョウカと夫婦仲良くね。おっと」


 ひいらぎが涙目で抱きついてきた。ああ、この宝物を持って帰りたい。

 何度か一緒にラヴィンティリスへ移住しないかと、雪野家に提案したが、ことごとく断られている。 


「おかぁさんっ! ほんとうにもうあえないの? いっちゃやだぁぁっ!」

「ああ……私の可愛いひいらぎちゃん……ごめんね。あっちの世界にも、あなたと同じぐらい大切な人達がいっぱい待ってるの。それに国民達も私の帰りを待ってるのよ」

「ううっううううっ」

「キョウカ、これスパッとやってくれる?」

「マジか、うん」


 私がツノの根元をクイっと指す。キョウカの手刀でポロったツノをさっと掴み、ひいらぎの小さな手に持たせた。


「はい、これ」

「おかぁさんツノ、きれい……いたくない?」

「このツノは魔力で出来てるからすぐ元に戻るわ。これはお母さんの代わりよ。大切なひいらぎちゃんに持っていてほしいの」

「うん……たいせつにするね。おかぁさん」


 宝石のような幼女の笑顔が尊すぎて、思わず抱きしめ叫んでしまった。


「ああああ、やっぱり連れて帰りたぁーいっ!」

「いやいやいや、ダメだから」


 またか~と、呆れ気味の笑いが溢れる中『あるじ様?』ラヴィンティリスと念話が通じた。

 名残惜しいが、ひいらぎをキョウカの元へ返し、カイを抱き上げた。

 カイが手を振ると、ぽろぽろと泣きだす星那。


「お母さん……」

「カイくん、残っていいよ。二十年後、嫁と子を連れてラミちゃんと一緒に帰ってきてもいいし、そのままこっちに骨を埋めてもいいし」

「いいの?」

「せっかく転生したんだから、我慢せず自分の為に生きなさい。ちゅっ」

「ありがとう。お母さん、愛してる」

「うん、私も愛してるよ。ふふふ、おねショタだねっ」

「お母さん……今生の別れかもしれないのに、それってどうなの……」


 そう、実はこの子、中身が成人男性の転生者なのだ。

 カイを抱き下ろすと、実はなんとなく察し用意しておいた、母の愛情たっぷりの魔法の鞄を渡した。もちろんランドセルも入っている。


「僕、残ります。皆さん、改めてよろしくお願いしますっ!」


 みんな驚きの声を上げる中、カイはベビーカーの茉莉花をぎゅうっと抱きしめ、泣きながら駆け寄ってきた星那と抱き合った。


 そして……


「みんな、さようなら」


 私達が乗り込んだ巨龍がキョウカ達へ手を振りながら、ふっと消えるのだった。


 ☆魔王キキョウちゃん@Shirafuji 4月16日    … 

 みんな、およそ四年四か月、お世話になりました。本日、魔王キキョウちゃんとラヴィンティリスへ帰ります。また逢えるかはわからないけど、みんな元気でね。地球人類の発展の為に、いくつか有用なで情報をプレゼントしたので、有効活用してほしいな。とっても楽しかったよ。じゃあ、さようなら。

 返信3億 リポッポ14億6000万 いいね16億3000万



 閑話

 

 私の長男カイくんが生まれた翌日、目を開いた。私と同じ紫水晶の瞳だ。

 まだ視力は低く、ぼぉっと見えてる程度らしい。

 生まれて数日、その視線に明確な感情がある事に気付く。

 あららら。この子、記憶持ちの転生者だわ。

 私はみんなにその事実を隠し、カイくんをしばらく観察する事にする。

 ふふふ、さすがに慌ててるね。私のおっぱいへの反応を見るに、間違いなく成人男性であろう。私はそれとなく語り、彼の置かれた状況を伝える事にした。


 どうやら僕は転生したようだ。今世の名前はカイ。種族は鬼人族。どうやら鬼になったらしい。母は白い髪に紫の瞳。驚くほどの美女だ。彼女の会話から、様々な情報を得る事ができた。しかし、情報過多すぎだよ。どうやら僕は、異世界からこの日本皇国にやってきた魔王の長男らしい。僕の前世はさえないアラサーサラリーマンだというのに、どうしてこうなった。

 食事とはいえ、こんな美女のおっぱいを吸うのは心穏やかではない。すぐ慣れたけど。時々、星那ちゃんという美少女が哺乳瓶でミルクを飲ませてくれて、いつも僕にべったりだ。ある意味、母親よりも世話を焼いてくれたりする。

 そして、宇宙人やら金色の女神やら,母そっくりの女性やら、みんな美女すぎる上にスキンシップ過多で困るよ……おむつ替えの順番待ちって、かんべんして!

 まったく……出るものも出なくなるよ。あ、眠気が……

 隣には触れてると妙に落ち着く、妹の卵。僕と一緒に育っていくであろう、赤子の那由多。今世の僕、いったいどうなってしまうんだろう。


 そして――生まれて一年後。


「カイくん、転生者よね」


 バレてた……しかし、僕が前世を語っても、母の態度が変わる事はなかった。

 中身が年上の成人男性と知っても、一緒に寝るし、お風呂へ入るのをやめないし、授乳は二歳近くまで続いたし、少々過剰と思える程に可愛がってくれた。

 僕の内面も変化していった。前世の記憶はあるものの、今では彼女の事を心から母と慕い、年相応に甘えている。こんな僕に母の愛情を惜しみなく注いでくれるあなたに、心から感謝している。

 そうそう、太陽系旅行にも連れてってもらった。もう大感動。実はしらふじちゃんにお願いして、なんと、銀河系の中心でブラックホールを見る事もできた。

 ふああああ……なんて光景だろうか、もう吸い込まれて死んでもいいかも。


「いやいやいや、吸い込まれるのは掃除機までにしておきなさい」


 母のツッコミはいつも愉快だ。

 三歳の誕生日を迎え、来春には母の故郷へ帰る事が決まている。異世界か。

 僕にとってはここも異世界だけれどね。前世の世界よりずっと平和で栄えている。


 最近、星那ちゃんの様子が変だ。

 理由はなんとなく察しているけど、まだ十一歳の女の子だよ。僕なんて三歳だ。

 それが愛や恋であるあずがない……。

 でも、別れ際の涙を僕は放っておけなかった。

 そんな僕の背中を押してくれたお母さん……ありがとう。さようなら。

 またいつか、逢えるだろうか。

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