表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IT創世記~開拓者たちの足跡~  作者: かつを
第1部:シリコンの創世編 ~機械の誕生と魂の萌芽~
39/134

日本の電卓が起こした半導体革命 第5話:マイクロプロセッサ「4004」の誕生

作者のかつをです。

第五章の第5話です。

 

いよいよ、歴史的なマイクロプロセッサ「Intel 4004」が誕生しました。

国籍の違う技術者たちが、一つの目標に向かって力を合わせる。

今回は、そんな開発現場の熱いクライマックスを描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

嶋が論理設計を、ファジンが物理設計を。

二人の天才を中心に、プロジェクトは驚異的なスピードで進み始めた。

 

それは、時間との戦いだった。

一日でも早くビジコンにチップを納品しなければ、契約違反になる。

そして、日本の電卓戦争にも間に合わない。

 

インテルの小さなオフィスは、さながら不夜城のようだった。

 

彼らが挑んでいたのは、まさに神の領域だった。

わずか数ミリ角のシリコンチップの上に、2300個ものトランジスタを、一つのミスもなく焼き付けなければならない。

 

当時の技術レベルでは、それは途方もなく困難な挑戦だった。

 

巨大な設計図を、虫眼鏡を片手に来る日も来る日もチェックする。

たった一本の線の引き間違いが、すべてを台無しにしてしまうのだ。

 

嶋とファジンは、国籍も母国語も違ったが、回路図という世界共通の言語で、完璧な意思疎通を図っていた。

互いの設計を厳しく、しかし敬意を持ってレビューし合い、少しずつ完璧な形へと近づけていった。

 

そして、1971年初頭。

数ヶ月に及ぶ、死闘の末に。

 

ついに、その「砂粒」は産声を上げた。

 

それは、人間の爪の先ほどの大きさしかない、黒いプラスチックに覆われた小さな小さなチップだった。

4本のピンが、まるで昆虫の足のように両側から生えている。

 

その表面には、誇らしげにこう刻印されていた。

「Intel 4004」と。

 

世界で最初の、ワンチップ・マイクロプロセッサ。

 

テスト用の基板に4004を実装し、電源を入れる。

嶋とファジンは、固唾を飲んでオシロスコープの画面を見守っていた。

 

画面に、美しい矩形波が現れた。

チップが、設計図通りに完璧に動作している証だった。

 

「……やった」

 

ファジンが、かすれた声で呟いた。

嶋は、ただ黙って頷いた。

 

その場にいた誰もが、言葉を失っていた。

自分たちが今、何を成し遂げたのか。

その歴史的な意味の大きさに、ただ圧倒されていた。

 

この小さな砂粒が、やがてパーソナルコンピュータを生み、インターネット社会を築き、人類の文明を根底から変えてしまうことになる。

 

その、壮大な革命の、正真正銘の第一歩。

静かな、しかし確かな産声が、シリコンバレーの片隅で上がった瞬間だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

Intel 4004のトランジスタ数は、約2300個。最新のCPUには、数百億個ものトランジスタが集積されています。この50年で、いかに技術が進歩したかが分かりますね。

 

さて、チップは完成し、ビジコンの電卓も無事に発売されました。

しかし、インテルは、このチップの持つ本当の価値に気づき始めます。

 

次回、「インテル、入ってる」。

一つの契約を巡る交渉が、インテルの運命を大きく変えることになります。

 

物語の続きが気になったら、ぜひブックマークをお願いします!

ーーーーーーーーーーーーーー

もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ