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IT創世記~開拓者たちの足跡~  作者: かつを
第1部:シリコンの創世編 ~機械の誕生と魂の萌芽~
37/64

日本の電卓が起こした半導体革命 第3話:テッド・ホフの逆転の発想

作者のかつをです。

第五章の第3話、お楽しみいただけましたでしょうか。

 

ハードウェアではなく、ソフトウェアで問題を解決する。

このテッド・ホフのひらめきこそが、パーソナルコンピュータ時代の幕を開ける、号砲となりました。まさに、歴史的な転換点です。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

その男の名は、マーシャン・“テッド”・ホフ。

スタンフォード大学で博士号を取得した、優秀なエンジニアだった。

 

彼は、ビジコンの設計図を眺めながら、ずっと違和感を覚えていた。

 

「なぜ、計算や、印刷といった、それぞれの機能のために、別々の専用チップが必要なんだ?」

 

彼は、DEC社が開発した、PDP-8というミニコンピュータの構造を、よく知っていた。

PDP-8は、たった一つの「中央処理装置(CPU)」が、メモリに記憶された「プログラム」を順番に読み込んで実行することで、様々な処理を実現していた。

 

テッド・ホフの頭に、稲妻のようなひらめきが走った。

 

「そうだ。このやり方を、LSIでやればいいんだ」

 

12個もの専用チップを作るのではない。

もっと、汎用的な、プログラムで動くコンピュータのようなチップを、たった一つだけ作る。

 

計算をしたい時は、「計算プログラム」をメモリから読み込んで実行させる。

印刷をしたい時は、「印刷プログラム」を読み込ませる。

 

つまり、ハードウェア(チップ)で機能を実現するのではなく、ソフトウェア(プログラム)で、機能を実現させるのだ。

 

この、たった一つの汎用チップ――「マイクロプロセッサ」――さえあれば、ビジコンが要求する12種類のチップの役割を、すべて、まかなえるはずだ。

 

それは、コロンブスの卵だった。

まさに、逆転の発想。

 

このアイデアには、計り知れないメリットがあった。

チップの種類が劇的に減るため、設計も、製造も、遥かにシンプルになる。コストも、開発期間も、大幅に短縮できるはずだ。

 

さらに、ホフには、その先の未来まで見えていた。

 

もし、このマイクロプロセッサが完成すれば、その使い道は、電卓だけにとどまらない。

プログラムを書き換えさえすれば、交通信号の制御にも、エレベーターの制御にも、ありとあらゆる機械の「頭脳」として、応用できるはずだ。

 

汎用的な「考える砂粒」。

 

インテルの経営陣は、このアイデアの持つ、無限の可能性に賭けることを決意した。

 

「ビジコンを説得するんだ。我々は、彼らの設計ではなく、我々の新しいアイデアで、チップを作る、と」

 

しかし、問題があった。

テッド・ホフは、あくまでアイデアを出す理論家であり、実際にチップを設計するスキルは持っていなかった。

 

この壮大な夢を、現実のシリコンチップの上に描き出す、もう一人の重要な人物が、日本からやってくるのを、彼らは待たなければならなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

このマイクロプロセッサのアイデアは、あまりにも先進的だったため、当初、ビジコン側はなかなか理解を示さなかったそうです。自分たちの設計思想とは、あまりにもかけ離れていたからです。

 

さて、インテルの壮大な提案を受け、ビジコンはある決断を下します。

 

次回、「嶋正利、シリコンバレーへ飛ぶ」。

もう一人の主人公、日本の天才技術者が、いよいよ登場します。

 

物語の続きが気になったら、ぜひブックマークをお願いします!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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