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IT創世記~開拓者たちの足跡~  作者: かつを
第1部:シリコンの創世編 ~機械の誕生と魂の萌芽~
36/73

日本の電卓が起こした半導体革命 第2話:12個のチップという無茶な要求

作者のかつをです。

第五章の第2話をお届けします。

 

「12種類も専用チップを作るなんて、やってられるか!」

そんな現場の悲鳴が、歴史を動かす大きなバネになります。

今回は、インテルのエンジニアたちが直面した、絶望的な状況を描きました。

 

※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。

ビジコンが提示した設計図を前に、インテルのエンジニアたちは言葉を失った。

 

「……冗談だろう?」

 

誰かが、思わず呟いた。

 

そこに描かれていたのは、あまりにも複雑で非効率な設計だった。

キーボードからの入力を制御するチップ、計算を行うチップ、プリンタを動かすためのチップ……

 

ビジコンが要求してきたのは、この一台の電卓のためだけに、それぞれ機能の違う12種類もの新しいカスタムLSIを開発しろ、というものだった。

 

当時のLSI開発は、莫大なコストと時間がかかる一大プロジェクトだ。

たった一つの製品のために、12種類もの専用チップをゼロから設計するなど、狂気の沙汰としか思えなかった。

 

「こんなやり方では採算が合わない。それに、開発に時間がかかりすぎて電卓戦争に負けてしまう」

 

インテルの技術者たちは、頭を抱えた。

 

彼らは、メモリの専門家だ。

規則正しく、同じ回路が整然と並んだメモリチップの設計には慣れている。

 

しかし、ビジコンが要求するロジックチップは全くの別物だった。

一つ一つの回路が、不規則で複雑に絡み合っている。

まるで、整然とした碁盤と複雑怪奇な迷路ほどの違いがあった。

 

「このまま、ビジコンの言う通りに作るしかないのか……」

 

社内には、重苦しい空気が漂っていた。

この案件を断れば、まだ若い会社の貴重な収入源を失うことになる。

かといって、この無茶な要求を飲めば、開発は泥沼にはまるに違いなかった。

 

インテルは、創業早々、絶体絶命のピンチに立たされていた。

 

誰もが諦めかけていた、その時だった。

一人のエンジニアが、静かに、しかし根本的な疑問を口にした。

 

「待てよ。そもそも、なぜ電卓は『電卓』でなければならないんだ?」

 

その一言が、空気を変えた。

すべての前提をひっくり返す、革命的なアイデアが生まれようとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

 

当時のLSI設計は、すべて手作業で巨大な紙の上に回路図を描いていました。12種類ものチップを設計するというのは、想像を絶する作業量だったのです。

 

さて、絶望的な状況の中から、一人の天才が逆転の発想を生み出します。

 

次回、「テッド・ホフの逆転の発想」。

コンピュータの歴史における、最も重要なブレークスルーの一つがついに姿を現します。

 

「面白い!」と思っていただけましたら、ぜひページ下のブックマークや評価をお願いします!

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もし、この物語の「もっと深い話」に興味が湧いたら、ぜひnoteに遊びに来てください。IT、音楽、漫画、アニメ…全シリーズの創作秘話や、開発中の歴史散策アプリの話などを綴っています。


▼作者「かつを」の創作の舞台裏

https://note.com/katsuo_story

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