鏡
鏡にはいつも自分が写っている。自分が何者なのかを見つめなおせる。
学生の時には思春期に入りいままで気にしたことのなかった頭髪をこれでもかといじりまくっていた。
納得がいったときの鏡のなか自分はいきいきしていていつもの何倍も美しく恰好よかった。
だが社会人になると日々の激務や会社の中の人間関係、たび重なる理不尽に疲弊しきっていた。
鏡の自分は目に覇気が宿っておらず、死んだ魚のような目をしていた。頬もやけこけて、髪型もまったく気にしていない。昔の自分が見るようならショックで死んでしまうかもしれない。
老人になってしまったころには、しわやシミができて、頭髪の色も白くなってしまっていた。
ならその人が死ぬ瞬間は鏡は何を写すのだろうか。その人だけではなくその人の人生、経験、考え、知識
の全てを、その人が持っている一番きれいな部分を明るく輝きを放ちながら写し出してほしい。
次は誰の人生を写し出すのだろう。