セカンドコンタクト
※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。
ガンセクトを捕まえた後。ローバーは速度を保ち、どんどん進んでいった。
「何か目安とか目標とかあるの?」
「いや?勘だ。だが、俺の勘は割と当たるぞ。」
「非科学的ですが、それに助けられてきた面も強いですね。期待していますよ。」
ローバーは2時間ほど何もなく、進んで行った。
「お?あれは……穴だな。」
「本当ですか?今日は収穫が多いですね。」
「流石ジョージね。ルイスが悪いわけじゃないけれど、冒険向きの性格ってことかしら。」
そう話して、皆が穴に注目した時のことである。
不意に、穴から何かが飛び出した。
「なんか出てきたぞ!ピンク色だ!」
飛び出した生物は、ある程度まで飛び上がると、この星の重力に従って、ゆっくりと落ちてきた。
「重力が弱いから、あんなに滞空するのでしょうね。きっとガニアンでしょう。」
デヴィッドの見解は当たっていた。ピンク色のガニアンは、危なげなく着地すると、こちらを向いたような動きをした。うねうねと、触手を色々な方向に動かしている。
「電波受信機が反応しているわ。何か言ってるのね。まだ地球から解読できたって通信は来ていないけれど、これで解析が進むかしら。」
「もうちょい近付いてみるぞ。危険かもしれんが、必要な危険だ。」
「逃げられるほどの距離は取っておいてください。何があるかわかりません。」
ローバーを少しずつ進め、ゆっくりガニアンに近付く。近付くほど、触手の動きは激しくなった。
「あの触手の動きでも、コミュニケーションを取っているのかもしれません。ガニアンが出てきてからの映像は、帰ってから地球に送ります。」
「そうね。電波と触手の動きでコミュニケーションを取るなんて、地球では考えられないわね。イルカだって、超音波で空気の波の範疇だわ。」
「電波は電界と磁界の波で、空気が無くても伝わりますからね。光の方に近い性質です。」
「すぐに離脱できる距離までならここまでだ。ローバーを降りるか?」
「それは何かあった時に危険です。やめておきましょう。正直なところ、降りて接触を計りたいですが……」
「お前、そんなに好奇心旺盛だったんだな。見た目に寄らず。」
「ガニアンだからですよ。通信士として、電波でコミュニケーションを取る生物には、興味が尽きません。」
ピンク色のガニアンは、徐々に触手の動きを遅くしていった。3人には、何を伝えようとしているのか、全く見当はつかなかったが、何となく、言葉のわからない幼児にわかりやすく、ゆっくり話しているイメージを持った。
「なんか、子供扱いされてる気分だな。」
「ガニアンからしたら、そんなものでしょう。外国人に早口で喋っても、何も伝わりませんし。」
「それもそうね。何もわからないけれど、このまま映像と電波を送れば、解析しやすいでしょう。」
「どうする?アイツが穴に帰るまで見守るか?」
「データはかなり取れました。あの場から動く気配はなさそうですし、こちらから帰ってもよろしいかとは思います。」
「どうしようかしらね。データは多ければ多いほど良いわよ。無いと困るけど、あって困るものでもないわ。」
「もう少し様子を見るか。」
「それにしたって、最初に見たのは紺色だったでしょう?次はショッキングピンクだなんて、どんな遺伝子なのかしら。」
「そうですね。遺伝というのは、親と子は似るということですから、最初に出会ったガニアンと、このガニアンは少なくとも親子ではありませんね。」
「とんでもなくカラフルな連中かもしれないな。」
ローバーの中と、穴の側で睨めっこをして、10分以上経った。
電波による通信は途切れないが、遂には触手の動きはほとんどなくなった。
「何となくですが、早くここから立ち去れと言われているような気がしますね。」
「そりゃそうか。家に知らない奴が来たら、さっさと帰ってほしいわな。」
「そうねぇ……帰りましょうか。」
「刺激しないように、バックで離れるぞ。」
ジョージはローバーをバックさせ、ガニアンから距離を取ると、Uターンをして基地に向かった。
「もう帰るか。まだ探査できる時間はあるが、これ以上の何かが見つかるとは思えん。」
「賛成です。早く帰って、映像データと通信データを送りましょう。」
「基地に通信を入れるわね。探査中に穴を発見。ピンク色のガニアンが飛び出してきて、電波による通信と、触手の動きによって意思の疎通を計ってきたわ。10分以上のデータがあるから、もう基地に帰るわね。」
『なんと!大きすぎる発見じゃないか。早く帰っておいで。安全には気をつけてね。』