海中探査準備、ペーパーメデとレンズメデの研究
※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。
ガニアンの都市まで向かう予定の、次の海中探査は、潜水艦の改良とチェックがおわる4日後と決められた。
翌日から、ジョージ・エヴァンスとルイス・エヴァンスの操縦士兄弟は、潜水艦の改良につきっきりだ。3Dプリンターのある基地の上の〈トムソン号〉と、潜水艦を置いている大きな穴の往復を繰り返している。
立花里香とアルベルト・ホフマンは、採取した生物の研究を進めた。ペーパーメデは1匹のみ、レンズメデも2匹しかいないので、解剖などの研究はできない。反応を見る研究を行った。
ペーパーメデは動くと色が変わるので、どのような反応で色を変えているのか調べた。水槽に当てる光を変えてみても、水槽にガニルミナイトを入れてみても、水槽の周りの色を変えてみても、大した変化は見られなかった。以上から、光に反応したり光を感知しているわけではなく、擬態能力でもないとわかった。確かにペーパーメデを採取したのはガニルミナイトからかなり遠い場所だったので、不思議ではない。
最後に水流を試してみた。弱い水流ではほとんど透明だが淡い青色で、水流に乗って滑るように漂っていた。
強い水流を作ってみると、水流に当たったところが赤やオレンジに変わり、体を少し縮めて姿勢を安定させているようだった。
渦流を作ってみると、青や緑など様々な色に変わった。渦の中心を避けながら、外周に移動していった。渦流は捕食者や障害物の近くで発生することが多いため、方向感覚を得るために水流を検知しやすくなったのではないだろうか。色が頻繁に変わるのは、体表の感覚器官が複雑な流れを検知しているためだろう。
レンズメデの研究は里香が会話しながら行った。
会話してみると、大きなレンズ状の構造は、光合成のための器官だとわかった。その器官で光を集め、感知もしているようだ。リーフメデ達と同じように、底にガニルミナイトをそのまま置くことは不評だった。水槽の壁に貼るか吊るすかにするのがいいようだ。光ならある程度何でも吸収して栄養にできるようだが、やはりガニルミナイトの光が1番いいようだった。ガニルミナイトの周りで進化した生物だからそれもそうだろう。
水槽の中でガニルミナイトを動かしてみると、体の側面のレンズ状の部分を常にガニルミナイトに向けるように動いた。そして、口や鼻などの器官は見当たらなかった。
一方、デヴィッド・アンダーソンは、通信業務を行いながら、地球を離れる前、昔のことを思い出していた。
――私は特殊な家系に生まれた。
子供の頃には、家系の者としか恋愛も結婚もしてはいけないと言われていた。
成人するとその特殊さを教えられたが、あまりにも信じ難かった。信じ難かったが、確かにそういう面はあると納得する気持ちもあった。
学校での成績は良くて、やろうと思えばどこにでも就職することができそうだった。
私は考えに考えた末、夢を決めた。いずれガニメデに行くため、宇宙船に乗るのに必要な技能を身につけよう。
パイロットは疲れそうだし、研究者はどの研究者が選ばれるかわからない。そして、この家系で医者になると、どうしてもこの家系を診ることを強いられる。
なので、通信士になることにした。
通信士の勉強は、あくびが出るほど退屈だった。私にとっては当たり前のことから教えられ、まあ仕方ないと思いつつも、半分寝たような状態で授業を受け、主席で卒業した。これなら申し分ないだろう。
N○SAの通信業務に携わって経験を積んだ。どうでもいいところでは手を抜きつつも、肝心なところはもちろんしっかりと取り組んだ。国際宇宙ステーションにも1度行って、通信業務やステーションでの研究活動の手伝いもした。いつの間にやら若きホープとか、N○SAナンバー1の通信士とか言われていた。
そう言われ出した頃、ガニメデに生物がいるかもしれない、探査で調べるべきだとの声が上がった。
ようやくか。
これでようやく、ガニメデに行くことができる。
家系の者たちには、君は努力したし運もいい。好きに動くといいと言われた。
N○SAナンバー1の通信士の私は、間違いなく探査員に選ばれるだろう。後は有人という部分が重要だと、それとなく示せば問題ない。
あぁ、計画が始動するのが楽しみだ。




