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リーフメデの解剖

※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。

 遅れてしまって申し訳ありません。私生活で色々とありまして書く時間がありませんでした。


21話 サーメデの研究

23話 イールメデ・ガニメデヘアリー・スパイメデの研究

 上記の2話の一部を書き換えました。

 ぜひご一読ください。


 27話の最後に、第二回海中探査で見つけたものたちの絵を入れました。今話の最後にも入れておきます。

 こちら今回主役のリーフメデの絵になります。

挿絵(By みてみん)

 アルベルト・ホフマンと立花里香は、テーブルに銀トレイに乗せたリーフメデを置き、手袋をして並んで座った。

 里香は巻き尺で大きさを測り、それを横に置いて写真を撮った。全長32cm、最大幅28cmだった。サーメデは12cmほどだったので、ずいぶん大きい。そして口も鼻もない。これぐらいのサイズはないと、ガニルミナイトの限られた光だけでは、光合成だけで生きていけないのだろう。お腹のあたりを触ってみると、鱗もなく、ぬるぬる、すべすべとしていた。


 表皮の下をよく見てみると、凸レンズ状に境界線があるようだった。アルベルトが解剖用メスでお腹の下あたりの表皮を8cmほど切ると、切った部分から粘性のある赤褐色の液体が滲み出てきた。

 里香はその粘性のある液体をシャーレに移した。アルベルトが表皮を押すと、粘液がどんどん溢れ出てくる。里香はシャーレが1面染まったところで、もういいというジェスチャーをして、シャーレを密閉して光の当たらないところに置いた。

 粘液を除去すると、薄い赤褐色の凸レンズ状のものが規則正しくならんでいるのが観察できた。押すと少しへこみ、すぐ戻る。弾力性の強いゼリー状のレンズ構造になっているようだ。粘液の色が赤褐色なのも、緑青色のガニルミナイトの光を効率よく吸収するためだろう。

 アルベルトが、ガニルミナイトのかけらをレンズ構造に近付けた。小さいレンズひとつひとつが緑青色に光っていた。慎重にリーフメデをひっくり返し、裏側の粘液がまだ残っているところも同じように観察すると、さっきよりも多くのレンズが光っていた。赤褐色の粘液の効果だろう。

 電気を消して、水槽の中のリーフメデを観察してみると、ガニルミナイトがある面のレンズは全て微かに光っていた。海の中だと、屈折率の関係で更に効率よく光を集められるようだ。


 2人は水槽に遮光カバーをかけて電気をつけた。解剖の続きだ。

 表面付近の観察はおわったので、次は内部だ。弾力性の強い分厚いレンズ層をメスで切り開く。中は澄んだ水色のゲル状の膜が広がっている。写真を撮り、丁寧に一枚切り取り、シャーレに移して密閉して光の当たらないところに移動させた。

 ゲル状の膜を丁寧にかき分け、時には切り取り、奥に真っ青な臓器を見つけた。何個かあるようだ。この星の生物はヘモシアニン(銅ヘモグロビン)なので、酸素が多くあるところは真っ青になるはずだ。酸素貯蔵器だろうか。その手前には黄褐色の骨か軟骨のようなものが見えた。


 アルベルトは丁寧に、しかし素早くリーフメデの腹を開いた。開いて広げようとすると、まず目についたのはレンズ層の裏だった。薄い赤褐色の分厚いゼリー状の層の裏は、全面赤橙色だった。細胞を取って観察しないと確定はしないが、これは光合成細胞ではないだろうか。

 なぜなら、それが1番合理的だからだ。赤褐色の粘液とレンズを通して集めた光を、1番効率的にエネルギーに変換できる場所がここだ。この場所より内側は、ヘモシアニンの青系色ばかりだ。集めた光が反射したり散乱したりしてしまう。


 更に解剖を続ける。リーフメデの真ん中あたりから、薄青い神経線のようなものが張り巡らされているようで、ただ腹を切っただけでは開けそうにない。慎重に神経線を切っていき、ようやく魚の開きの状態にできた。里香は写真を撮った。神経線は、ヒレのある部分に向けてが1番多く伸びていた。そこの部分は切る必要がなかったので、そのままの状態で残っている。

 灰青色のゲル状の膜に混ざって、真ん中に12cmほどの卵型のものがあった。膜をどかして見てみると、放射状に広がった構造の、黄褐色の軟骨のようだった。所謂リブフレーム型というのだろうか。中にもまだゲル状の膜が入っているが、一部から酸素貯蔵器であろう青色が覗いている。


 軟骨のようだが、レンズ層よりも固い骨を、なんとかメスで切った。厚さが2mmほどしかなかったのが幸いしたのだろう。ピンセットを扱いやすいよう、骨を一本丸ごと切って取ってしまう。4cmほどだった。ピンセットで灰青色のゲル状の膜を丁寧に取り除いていくと、淡い青灰色の球体の前後両側に4個ずつ、少し濁った青い楕円形の器官があった。おそらく真ん中の球体が脳で、前後4個ずつの青いものが酸素貯蔵器だろう。ここに脳があるということは、解剖前に締めた時は、なぜこめかみを刺すだけで死んだのだろうか。重要な神経線をたまたま断ち切ったのだろうか。ただ、最初に見えた部分であろうところが、青緑色に変化してきている。

 里香は素早く写真を撮ると、密閉して窒素ガスを充満させ、変性ができるだけ進まないようにした。電気も消した。ヘモグロビンもだが、ヘモシアニンは空気や光に当たると色が変わってしまうのだ。



 一通り写真も撮り、じっくり観察したい組織などは別で密閉して保存してある。顕微鏡などで細かい観察をした。

 まずは最初に採取した、表皮とレンズ層の間の赤褐色の粘液からだ。顕微鏡で観察すると、細胞構造は全くなく、酸素を運んでくれるヘモシアニンも全くなかった。呼吸している組織ではないのだ。染色や化学反応なども調べた結果、赤褐色の粘液はレンズ層を保護する緩衝材のようなものだとわかった。外的刺激や物理的損傷から内層を保護し、ガニルミナイトの光を効率よく吸収する高分子量のゲル状物質で、化学的には安定している物質だった。人間の爪や地球の魚の鱗のように、細胞外で形成され、代謝を伴わない防護構造だ。


 次に調べたのは、レンズ層の下にたっぷりとあったゲル状の膜だ。採取時は澄んだ水色だったが、だんだんと灰青色になり、今は灰緑がかっている。構成成分のタンパク質が変性した結果だろう。

 顕微鏡で観察すると、4種類の細胞が存在するとわかった。細長い細胞で神経伝達、大きな不定形の細胞で緩衝支持、楕円形の細胞で酸素循環、小型で分岐突起を持つ細胞で免疫防御を担っていた。澄んだ水色であったゲル状の膜は、これらを統合した多機能組織であると判断された。


 更に酸素貯蔵器についての観察だ。やや硬い膜に包まれており、最初は明るい青だったが、今はやや濁った青緑色だ。切開すると、とろみのある青い液体と、密度の高い細胞が詰まっていた。顕微鏡で観察すると、内部には楕円形の細胞が多く見られた。細胞内には比重の高い構造が複数あり、銅系の反応を示した。これらの細胞は酸素を結合・放出する能力を持ち、体内への供給に関わっているようだ。周囲には細い神経線も入り込んでおり、必要な時に放出が制御されているようだ。

 この器官は、酸素の一時的な貯蔵と、全身への分配を担う重要な中枢と考えられる。


 血液は、ヒレの付け根近く、神経線が集まる部分の組織から採取したものを観察した。やや粘性のある無色透明の液体で、青みはわずかだった。遠心分離を行っても血球や色素は見られず、ごく少量の小型無核細胞が沈降しただけだった。

 酸素を運ぶ成分は見つからず、血液は代謝物や塩分の輸送に限られた役割を持つと考えられる。


 体表に近い透明なレンズ層は、全体的にわずかに赤褐色で、乾くと硬化して光沢を帯びた。切片を顕微鏡で観察すると、規則的に並んだ扁平な細胞が確認でき、内部には微細な繊維状構造が放射状に走っていた。

 表面には微細な凹凸があり、光の屈折や集光を調整していると考えられる。下層の赤橙色の色素層に光を集める働きがあり、生体レンズとして機能していると思われる。


 レンズ層の内側の、赤橙色の細かい細胞を観察した。これらの細胞はやや楕円形で、内部には粒のような構造が見られ、光合成に関わる色素を含んでいると考えられる。

 ガニルミナイトの光を当てると、細胞がほんのり明るくなる様子が観察された。細胞の中心が濃く、外側が薄くなるような見た目をしており、光を効率よく取り込むための構造なのであろう。光を当てる前の細胞と、光を当てた後の細胞を比較すると、光を当てた後の細胞は糖類やデンプン、酸素が発生していた。

 この結果、赤橙色の細胞はリーフメデが光をエネルギーに変えるための「光合成細胞」であり、重要な役割を担っていると考えられる。


 リーフメデは平たい体を持ち、全体が柔らかく、表面はぬるぬるとした膜で覆われていた。体の表面すぐ下には光を集める透明な層があり、その下には水色のゼリーのような膜が広がっていた。この膜は時間とともに灰色がかった青に変化した。

 体の中にはいくつかの空間があり、そのうちの一つは酸素を貯蔵する役割をしていた。中を流れる血液は青緑色で、銅を多く含んでいると考えられ、ヒレの先まで行きわたっていた。感覚器官や口のようなものは見られず、全体として深海での暮らしに適した、合理的で不思議な特徴を多く備えていた。

 第二回海中探査で見つけたもの達です。多少でもイメージの助けになれば幸いです。

挿絵(By みてみん)

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