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リーフメデ・ガニメデフジツボ・レンズメデ

※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。

『せまーい』『なんだここは』『つかまった?』『食べられるー』『触るなよ』『もっとそっち寄れ』『無理だよー』

「えっ?!声が聞こえる!」

「え?何も聞こえませんが。」

「リカ、どうしたの?」

「あ、もしかして……光合成してるからかしら?」

 里香の耳には、魚の入ったカプセルから、声が聞こえていた。

「光合成してるから……とは?」

 ルイスとデヴィッドは不審そうだ。

「言ってなかったわね。ちょっと恥ずかしいからなんだけど……私、植物の声が聞こえるの。」

「なるほど、そんな人もいるのですね。あぁそれで……光合成している魚の声が聞こえたと?」

「えぇっ!そんなことってある?!」

「でも聞こえるんだもの。狭いとか食べられるとか、触るなとか言ってるわ。」

「なるほど、なんとなくありそうな発言達ですね。」

「いやいや……そんな人いるなんて聞いたこともないよ。デヴィッドはなんでそうすんなり受け入れられるの?」

「人間には色々な人がいますから。そういう人もまあいなくはないと思います。実際ここにいるわけですし。」

「えぇ〜〜、まあいいか……」


『〈判別不能〉の捕獲はおわったか?次は〈判別不能〉だ。ほら、あの鉱石にくっついているぞ。』

[鉱石から引き剥がすのが大変そうです。鉱石ごと採取してもいいですか?]

『そちらの方が確実だろうな。』


「ま、気を取り直して……あの鉱石についてるのを鉱石……ガニルミナイトごとだね。いくよ……」

 ルイスは潜水艦からアームと採取カプセルを伸ばし、鉱石の根元をガンガンと叩いた。何匹かは衝撃で逃げてしまったが、かなりの数の生物を採ることができた。

「この魚、赤橙色で背中のヒレが葉のように広がっているこれは、なんて名付けようかしら。」

「安直かもしれませんが……リーフメデなんてどうでしょう。」

「いいわね。決まりよ。さて、ガニルミナイトにくっついてるのは、どんなものなのかしら?」

 光るガニルミナイトに張り付いているその生物は、見た目は魚というより虫か鉱石そのものに似ていた。衝撃で落ちた個体にはゲル状の赤橙色の部分があり、全体の色は鉱石と同じ緑青(ろくしょう)色だった。

『おちた〜』『しょうげきがひどかった』『ふわふわする〜』『おちつかない』

「ガニルミナイトに張り付いているのね。固着している様子はフジツボに似ているかしら。岩肌のガニルミナイトにくっついている生態のせいか、ふわふわするとか落ち着かないって言ってるわ。」

「興味深いですね。名前はフジツボ(barnacles)からとりましょうか。バーネカルス……ガニメデバーネカルス……?」

「ちょっと長いし、わかりづらいわね。ガニメデフジツボはどう?」

「そうしましょうか。研究するのは里香ですしね。」


「ここで活動できるのはあと5分だよ!」

「最後に何か一種欲しいところですね。」

[あと5分しかここで活動できないです。他に生き物はいますか?]

『おぉ、もうそんな時間か。そうさなぁ……あれなんてどうだ?』

 シノノメが触手で指す方向にサーチライトを向けると、虹色に光り、大きめの丸い鱗がびっしりと生えている魚が2匹いた。

「あれだね!巻きで行くよ。」

「慎重に動かさないと採れないんじゃない?」

「僕ほど慎重な人はいないよ。自称したくはないけどね。」

 ルイスは潜水艦から推進力つきの網を素早く、しかし丁寧に広げると、2匹の魚を網の中に捕らえた。そのまま採取カプセルに入れる。


「なんかあの鱗、レンズみたいに見えなかった?」

「言われてみればそうかもしれません。よく見てみましょう。」

『まぶしい!』『変な光!』『何この光!』

「眩しい、変な光!って言ってるわ。この魚は光を感知することができるのね。レンズ状の鱗で体内にエネルギーを貯めているのかしら。」

「それなら名前は簡単ですね。レンズメデでいいでしょう。」

「賛成!いっぱい採れたわね。」

「よし、上昇するよ。急がなきゃ、結構酸素ギリギリだ。でもあまり急ぐと燃料も切れるかな……いやそれは大丈夫そうかな……」

「大丈夫大丈夫、慎重に急いで帰りましょ。ルイスならできるわ。」

「そうだね。シートベルトは締めておいて。」


 潜水艦は、シノノメの先導のもと、穴まで急上昇した。横に移動した距離もあったので、斜め上に急上昇だ。

「研究するのが楽しみだわ。この星で植物のように声が聞ける生物がいるなんて!」

「そうですね。研究成果も期待しています。」


 上陸までの暇つぶしに、デヴィッドは端末でシノノメに通信を送った。

[そういえばシノノメさん、あなた達はこの鉱石、ガニルミナイトを使って何をしているのですか?]

『おぉ、その話だな。この星には金属の殻を持つ生物もいるのだ。その生物の殻を拝借して、集めてガニルミナイトに電波を浴びせ熱し、加工することができるのだ。電波は小さな範囲に強い電波を発することのできる家系がいて、基本的にその者達が2〜3人集まることでしか加工することはできん。練習すれば誰でもできるようになるようだが、かなり難しい技術である故な。』

[なるほど、興味深いですね。このような深海で金属を鍛えることができるとは。何を作っているんですか?]

『簡単に言えば、我らピッタリのサイズの筒である。我らには、電波過敏症と呼ばれるもの達がいてな。飛び交う電波を電波受信管の中で適切に取捨選択することができぬのだ。その者たちは、全てが混ざり合って何も理解できないと主張している。』

[人間にもそのような人はいますね。人間でいうと音でしょう。聴覚過敏と言われています。]

『やはり、それなりの個体がいれば、そのような者は生まれるものなのだな。その電波過敏症の者たちは、その金属製の筒の中に入り生活するのだ。筒の側で、中に向かって発した電波は理解できるそうだ。基本的に1人では生活できんな。』

[それは大変ですね。他にも欠陥があるガニアンはいるんですか?]

『細かい欠陥レベルなら様々あるが、日常生活に支障をきたす者は、やはり電波受信管と電波発信管に異常がある者だろう。卵の中で一定の大きさになっても、電波発信管から微弱な電波も発せなかった者は、基本的にそのまま殺される。何も意思疎通ができない者を、愛があるからと無理やり生まれさせたとして、幸せな結果になったことは全くない故、これは仕方ないことだ。電波受信管の異常に関しては先ほど話したが、過敏症以外にももう一つある。受信虚弱症だ。受信感度が低すぎる者も、たまに生まれる。こちらはガニルミナイトの電波を受ける性質を生かして、少々加工して増幅器とするのだ。』

[興味深いですね。ガニアンの生態の秘密に迫っている気分です。電波発信管の異常はありますか?]

『電波発信管の異常は受信管の異常よりは少ないが、なくはない。もしくは個性というべきか。基本的に皆、特定の方向に向かってのみ電波を発する、周囲全体に電波を発する、この星全体に電波を発することができるのだが、そのどれかができないものはいる。この星全体に、ができない者が1番多かっただろう。まあその者たちがそうしたい場合は、近くの別のガニアンをどうにかして呼び寄せ、代わりにやってもらう形になるな。』

[なるほど、よくわかりました。加工の話から脱線してしまいましたが、大変興味深い話が聞けてとても興奮しています。そろそろ着きますね。]

『おぉ、もうか。君たちの家でもまた色々と聞かせてくれ。』

[それはこちらのセリフです。今後もよろしくお願いします。]

 こちらが今回捕まえた生物たちのイラストです。イメージの助けになってくれることを願います。

挿絵(By みてみん)

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