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第二回海中探査

※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。

 採血検査をした翌日、第二回海中探査のための探査員の選定も済んだ。

 今回探査に行くのは、パイロットのルイス・エヴァンス、通信士のデヴィッド・アンダーソン、生物化学者の立花里香に決まった。


「よろしくね。」

「少し不安だけど、操縦訓練もしっかりしたし、大丈夫。かな……」

「よろしくお願いします。新たな発見が楽しみですね。」

『さあ行こう。今回案内する場所は、なかなか面白い場所だぞ!』

[楽しみね。シノノメもよろしくね。]


 電波変換システムに音声入力が可能になり、翻訳システムも端末から音声で出力することが可能になったため、シノノメとの交流も少しは楽になった。

 探査員一行は宇宙服を着て、潜水艦と穴の元に向かった。潜水艦に乗り込み、密閉を確認したのち、各自宇宙服を脱いだ。そして、給水管を兼ねたロープを下ってゆく。


「大丈夫だってわかってるけど、ちょっと怖いな……千切れたりするわけないんだけど……」

「ちょっと、不安になるようなこと言わないでよ。地球の重力でも大丈夫だったんだから、問題ないに決まってるじゃない。」

「ルイス、心配することはありません。私も問題ないと思っています。気楽にいきましょう。」

「デヴィッドもこう言ってるじゃない。でも、デヴィッドから気楽になんて言葉が出るとはね。ちょっと驚いたわ。」

「失礼ですね。私もたまには励まします。」


 数分後、どぷんという音と共に、潜水艦が入水した。サーチライトが水中をぼんやりと照らしている。潜水艦の前面の大きな窓に、東雲色の触手がうねうねと現れた。

『今回案内したいのはあちらだ。プランクトンと小魚も採取したいんだったか?道のりはそれなりに長い故、道中の海流で採ってくれ。』

[わかりました。案内よろしくお願いします。]


 潜水艦は、シノノメの案内によって、深く深く潜っていった。途中、シノノメが触手で指した辺りで、プランクトンを採ったり、海流に乗ってきたサーメデを捕まえたりした。


「あれは何かしら?」

『おぉ、〈判別不能〉がいるぞ。珍しいな。〈判別不能〉は水の流れに乗って揺蕩う生物なのでな。慎重に捕獲するがいい。』

「わかった。よし……いける、いける……訓練の通りやれば大丈夫……」

 ルイスは潜水艦の前方両側から、推進力のある機械のついた網を伸ばした。海の流れに影響しないよう、慎重に網を広げていく。

「……とらえた!」

 サーチライトに照らされて、青や緑に色が変わっていた何かが、網で引き寄せられてくる。網に当たった場所は、紫色に変化した。徐々に紫色に染まりながら、ついには採取カプセルの中に収められた。

「やった、よかった。」

「お疲れ様、ルイス。上手かったわ。なんかよくわからない生物だったわね。早く見せて!」

「お手柄です、ルイス。」


 採取カプセルを開けると、紙のように薄いクラゲとでも言えばいいのだろうか、真ん中が少しだけ膨らんでいて、青や緑、紫色に色を変えている生物がいた。

「紙のように薄いわね。ペーパーメデ……?」

「安直ですが、いいと思います。不思議な生物ですね、ペーパーメデは。」

『採取できたな。さあ、先へ行こう。今は半分ぐらいまで来たところだ。』

「それなら酸素残量的に、案内された場所で探査できるのは、30分にも満たないぐらいだね。できるだけ急いで行こう。」

[先は長いですね。その場所で探査できるのは、30分未満だそうです。できるだけ急いで行きましょう。]

『30分……とはどれぐらいだろうか。時間の単位は先ほど聞いたが、まだ慣れてない故。』

[聞いているなら話が早いですね。これを送ってからちょうど1分後にまた通信を送りましょうか?]

『頼む。その後、我が5分を感覚で測ってみよう。』

[1分経ちました。]

『なるほどなるほど。探査できる時間は、これが30回分の時間より少ないのだな?では、これより5分後にまた返事をするぞ。』

[そういうことになります。5分は意外と長いですよ。我々の感覚ではですが。]

『これぐらいでどうだろう。』

[6分23秒ですね。でも近いのではないでしょうか。]

『やはり、君たちの生きる時間は忙しないな。だが、なんとなく時間の感覚が掴めてきた気がするぞ。』


 シノノメとデヴィッドが通信でやり取りしている間も、潜水艦は最高速度で深く潜ってゆく。シノノメは先導するように潜水艦の前を泳いでいる。

 水深50kmに到達した時、シノノメが進む方向を変えた。シノノメは潜水艦の右上に少し体を避けた。すると、深海の暗闇の中で、ぼんやりと緑青(ろくしょう)色に光っているものが見えた。

『もうすぐそこだぞ。あっちの〈判別不能〉山の岩壁だ。』

「あれ、なんか光ってない?」

「そうね。青緑色、緑青色ってところかしら。」

[何か光って見えますね。あれが目的地ですか?]

『そうだ。〈判別不能〉という鉱石だ。あれに電波を集中的に浴びせると、かなりの高温になるのでな。金属を加工するのに使われている。』

[金属を加工することもできるのですね。何を作っているか気になりますが、まずはあの鉱石の採取と周辺の探査を行いましょう。]


 会話したり通信したりしている間に、光る鉱石の元に着いた。ルイスは潜水艦からアームと採取カプセルを伸ばし、鉱石の根本を叩いた。潜水艦の中では音は届かないが、ガン、ガンと叩いている音が聞こえる気がした。ついに鉱石はポロリと取れ、採取カプセルの中に収まった。

「すごいわね。なんで光ってるのかしら。」

「微生物か……なんでしょう。地球にも光る鉱石はありますよね?」

「あるけど、こんな環境で紫外線とかもなく光るなんて聞いたことないよ。未知の元素が含まれていたりして。」

「この鉱石の名前はどうする?光…ルミネ…鉱石ってなんとかナイトよね?」

「ガニルミナイトというのはどうでしょう。ガニメデと、リカの言う通り光と鉱石を繋げてみました。」

「ルミメデナイトの方が良くない?」

「うーん……魚とかが全部なんとかメデなのよね。ここはガニルミナイトがいいんじゃないかしら。」

「決定ですね。いい名前です。」


[この鉱石の名前はガニルミナイトに決まりました。ちなみに、なぜ光っているかはわかりますか?]

『我々の電波を吸収して光っているのではないかと言われている。この海溝の下には、我々の都市がある故な。この山は、電波を多く受けているのだ。』

[なるほど、電波で光っているのですか……確かに、先程から私が通信を送るたびに、周りの鉱石の光が瞬いていますね。]

『そういうことだ。この鉱石の周りには、また特殊な生物がいるぞ?ほら、〈判別不能〉があそこにいる。』

 シノノメが触手で指す方向に目を向けると、そこには赤橙色の魚の群れがいた。背中のヒレは葉のように広がり、鉱石の周りを泳ぎながら光を吸収しているようだ。


「よし、捕まえるよ。」

 ルイスは推進力つきの網を伸ばし、魚の群れを包み込んだ。そのまま網を閉じてゆき、採取カプセルの中に誘い込む。

「いけた、群れだと簡単だね。」

「流石よルイス。なんとなく想像はつくけれど、どんな生物なのかしら。」

『せまーい』『なんだここは』『つかまった?』『食べられるー』『触るなよ』『もっとそっち寄れ』『無理だよー』

「えっ?!声が聞こえる!」

「え?何も聞こえませんが。」

「リカ、どうしたの?」

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