採血検査
※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。
ジョージ・エヴァンスとルイス・エヴァンスは、潜水艦の整備もおわり、畑仕事をしている。デヴィッド・アンダーソンも、潜水艦のエンジンとタンクの改良を地球に要請し、パイロット兄弟と一緒に畑仕事をしている。
立花里香とアルベルト・ホフマンは、血液をサーメデの餌にするため、作業中の5人全員を呼び止め、採血して血液検査をした。献血するための体重も、全員問題なかった。流石は宇宙飛行士というべきか、全員が何も異常のない血液だった。
「全員病気の兆候もないし、数値も問題ないねぇ。まあ俺が体調管理しているから、当然とも言える。」
「健康じゃないと宇宙飛行士には就けないものね。」
「献血の基準では、全血採血200mlが男性は年に6回まで、女性は年に4回までだね。400mlはいらないだろうし、持ち回りで血を取っていこうか。」
「200ml採るとなると、全員で持ち回りしても1年に28回しか採れないわ。毎週餌やりするとなると、半分しか賄えないじゃない。どうする?」
「そうだなぁ……実験次第だけど、そもそも探査で既知の魚が採れた時にそれを餌にしてもいいし、全血採血じゃなく、赤血球のみの成分採血にしてもいいかもしれないね。そもそも200mlもいらない可能性もある。そしたらもう少し回数も増やせそうだ。」
「そうね、それがいいでしょう。どれぐらい間隔を空けていいかの実験もあるし、しばらく先のことになるけれど、誰から採血する?」
「そうだなぁ。その時の状況によるね。近日中に重要な仕事……探査員の仕事がない人からにしよう。」
「そうね。次の探索は明日だけれど、サーメデに餌をあげるのは……1週間を目処にする?」
「それぐらいがいいかなぁ。どうしよう、シノノメに聞いてみようか。」
「研究で調べた方がいいけれど、知っている人……人じゃないけど、そういう存在がいるなら、聞いた方がいいわよね。」
「そうしようか。」
アルベルトは端末を操作し、シノノメに通信を送った。
[シノノメ、サーメデや他の魚たちって、どれぐらいの間隔で物を食べているのかな?]
『1日毎ぐらいではないかと言われているのだが、おそらくだが、我々と君たちの時間の単位は違うのではないか?』
[確かにそうだね。1分が60秒、1時間が60分、1日が24時間だよ。試しに、これを送信してちょうど1分後にまた通信を送ろうか?]
『頼む。我らは、木星の周りを一周するのを1日と定義しているのでな。推測だが、君らの時間の単位は我々よりずいぶん細かいようだ。』
[1分経ったよ。]
『なるほどなるほど。ずいぶん忙しないな。』
[木星の周りをガニメデが一周するのは、俺たちの時間ではおよそ7日と3時間だね。ちなみに、7日で1週間、月によって違うけど、基本的に30日か31日間が1ヶ月だよ。12ヶ月、365日で1年だね。]
『ほぉ、興味深い。そのように色々な区分があるのだな。我々の1年は、木星が太陽を一周する期間だ。』
[木星の公転周期は、俺たちの時間では11.86年だね。1年の周期は、暦とかカレンダーとか呼ばれているんだけど、これは俺たちが農業をするために生まれたと言われているんだ。]
『農業……?とはあれだろうか、君たちの家でよくわからないものを使って、よくわからないものをよくわからない感じにしている、あれか?』
[おそらくそれのことだねぇ。俺たちが生きるのに、食べ物は基本的に1日3回食べるんだ。だから育てないと、とてもじゃないけど賄いきれない。]
『それは不便だな。我らやこの星の生物なら、この星の1日に1回、つまりは君たちの1週間に1度程度に1回食べる程度だ。』
[とっても燃費がいいんだろうね。この極限環境で、エネルギーや酸素を効率よく使うことに長けているんだろう。]
『燃費というのはよくわからないが、そういうことだろう。』
[ひとまず餌やりの間隔についてはわかったよ、ありがとう!今後も色々と聞くかもしれないけど、よろしくね。]
『大いに聞いてくれ。我も新たな知見が得られて面白い故。』
「と、いうわけだね。1週間後に採血した血を餌としてあげようか。」
「そうしましょう!」




