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イールメデ・ガニメデヘアリー・スパイメデの研究

※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。

 諸事情により最後の方を書き換えました。

 立花里香とアルベルト・ホフマンは、捕まえてきた魚たちの研究を続けていた。里香は、アルデプランクトンや水中の微生物を観察し、ペンタブでスケッチしている。アルベルトは、残ったプランクトンを水槽に入れたり、イールメデやガニメデヘアリー、スパイメデの観察をしていた。


「イールメデの泳ぎ方は、ウナギとかと一緒だね。まあ名前もウナギから取ったし、形が似ると適切な動きも同じになるかぁ。ガニメデヘアリーは普通の魚と同じ感じだね。ヒレがないのに、どうしてこれでこんなに推進力を得られるんだろう……微細な毛がなんとかしているんだろうか。スパイメデは、クラゲみたいな動きだ。そういえば地球にも、カッパクラゲっていう割と似てるクラゲがいたなぁ。スパイメデの方が足の本数は少ないけど……」

 アルベルトはぶつぶつと呟きながら、レポートに観察結果をまとめている。


「プランクトンも色々な形のものがいるわ。地球のものと似ているのもいるけど、似ていない形の方が多いわね。まあもちろん、地球のプランクトン全部の形とか覚えているわけでもないから、断定はできないけれど。あ、フナムシみたいな子がゾウリムシみたいな子を食べてる。このフナムシっぽい子は動物性プランクトンね。」

 里香も写真を撮ったり、スケッチをしながら、特徴や動きをレポートにまとめている。


「みんなに餌をあげようか。どれぐらいの間隔であげたらいいんだろう。」

「死なせるわけにはいかないけれど、シノノメもいるし、万が一死んじゃってもまた捕獲にいけそうだと思うの。今日はまず与えておいて、どれぐらい間隔を開けてもいいか実験しましょう。」

「そうだ、俺たちが研究している間は仕方ないけど、できるだけ暗くしておかないと、弱っちゃいそうだねぇ。食事の間隔で弱ってるのか、光で弱ってるのかも判別つかないし。」

「そもそも、光を感知する能力がなさそうな気もするわね。サーメデで、そのあたりも比較実験しましょう。」

「そうだねぇ。どうしようか、研究室はできるだけ明かりを消しておくとして、5匹採れて1匹解剖したから、2匹ずつで比較検証しようか。水槽にライトをつけて、囲いで覆っておこう。」

「それでいきましょう。さて、エサをあげましょうか。」


 里香は、イールメデの水槽に解剖したサーメデの一部分をゆっくりと入れた。イールメデは2本の触角をサーメデに向け、深い青色の体をくねらせながら30cmほどの距離までゆっくりと近づくと、素早く切り身に噛みついた。そして、咀嚼もせずそのまま飲み込んだ。ちなみに、地球の深海魚も、咀嚼せず丸呑みする魚が多い。

 ガニメデヘアリーの水槽とスパイメデの水槽には、1カプセルだけ残していたプランクトンを半分ずつ入れた。ガニメデヘアリーは、プランクトンを入れた方向に微細な毛をふわふわと動かすと、地球の普通の魚のように泳いでいき、口を開けたりしている。

 スパイメデも、触手をプランクトンを入れた方向に向けると、その向きのままクラゲのように泳いでいき、プランクトンを入れたあたりをうろうろしている。

 サーメデの水槽には、解剖したサーメデの体液を同じ量ずつ入れた。サーメデ達は6本の触角を体液の方に向け、素早く近付くと口を少しだけ開けて、周りの海水ごと吸い込んでいた。


「サーメデは地球の深海魚と似た感じっぽいねぇ。ガニメデヘアリーの毛は感覚器なんだろうか。プランクトンの方に向けたよね。スパイメデは……真ん中の丸い部分がフィルターにでもなっているんだろうか。そんな感じしない?」

「そうね。スパイメデ、プランクトンのところを往復してるものね。裏表の概念がないのかしら……?」

「あり得るね。サーメデは、口を尖らせて少しスポイトみたいな形になっていたねぇ。液体をピンポイントで吸うのに都合がいいのだろうか。さて、餌やりも観察も一段落したことだし、サーメデの血球の観察にいこうか。」

「そうね。〈トムソン号〉に移動しましょう。」

 里香とアルベルトは、2匹のサーメデにライトを当てた状態で暗幕をかけ、実験室の電気を消した。


 2人はサーメデの血液サンプルを持って、〈トムソン号〉の電子顕微鏡の元へ向かった。下処理をして、2人で観察した結果、次のことがわかった。

 核があること(地球の赤血球に核はない)、電子密度が高いため銅を含んでいることに間違いないこと、ヘモシアニン多重体(タンパク質)が規則的に並んで多重体構造を作っていること、フィラメントがあるため変形性と水圧性に優れていること。そして、核があるため、地球の赤血球とは違って寿命が長く、自ら細胞分裂するであろうこと。


「うーん、色々わかったけれど、こんな血液を栄養にする魚相手に、私たち人間の血が必須栄養素として充分なのかはわからないわね。」

「金属イオンが足りなさそうだねぇ。主に銅イオンが。餌を人間の血で代用できるかどうかは、かなり賭けになりそうだ。銅イオンを添加してみるかなぁ。適切な量はサーメデの血液を成分分析すればわかるだろう。」

「暗くする方のサーメデで、対照実験しましょうか。誰の血にする?」

「うーん……全員の体重を測って、献血の要領で誰の血にするか決めようかぁ。」

「そうしましょう。」

 銅ヘモグロビン(ヘモシアニン)が青色になるということと、ヘモシアニンの地球の生物は血球を持たないということを知らなかったので、かなりの修正を加えました。ご迷惑をおかけしました。

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