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解析結果が出揃った

※この話はフィクションです。実際の人物や団体などとは一切関係ありません。

 次話は、ガニアンとのセカンドコンタクト時の通信記録を全文そのまま載せます。興味のない方は読み飛ばしていただいて結構です。

 各々休憩を取っている最中、セカンドコンタクト時の電波解析結果が送られてきた。ここまでが全文である、という注釈付きだ。

『最初に君たちが遭遇した我々の同胞は、あの飛んでいる物が電波を発していた為、それが気になり〈バシュッ〉したようだ。

 驚かせてしまったな。褒められた行動ではないが、得られた情報は重要だった為、あまりその同胞も責められなかった。


 何もなくても我々はたまに〈バシュッ〉するが、それは大抵珍味を食べるためだ。〈ツキマリ〉の群生は、氷の上にしか存在しない故な。〈ツキマリ〉は海中にも多く存在するが、群生するのは氷の上だけだ。〈ツキマリ〉の群生を食べると、思考がクリアになり、何もかもの作業を信じられないほどのスピードで進めることができ、肌がやや敏感になるという快感が得られ、それを忘れられない者が多いのだ。

 〈バシュッ〉すると、稀にこの星の引きつける力を振り切って、どこかへ飛んでいってしまう者もいるな。その者達はいずれ、死んでしまうことになる。我々は圧力の変化には強いが、定期的に何か食べないと、酸素がなくなってしまうだろう?


 まだ行かないか。そうだな……我々は、電波を自由自在に発信することができる。受け取ることもそうだ。今回は、君たちの方向だけに向けて発信しているし、近くでないと受信できないように発信することや、この星全体に向けて発信することもできる。我々は親が抱いた卵から生まれるが、1番最初にできるのは電波受信管、次に電波発信管だと言われている。卵の中から聞こえる、初めての電波は微弱で、とても愛おしいものなのだ。親は大抵、その微弱な電波を覚えていて、あまりにもありふれていたり、問題があったりしなければ、その微弱な電波信号をその子の名前にする。しかし、我々はあまり名前に執着がない。体色で呼ばれることの方が多いのでな。


 お、ようやく行くか。どうかこの電波信号を解読してくれたまえ。君たちは賢い。これぐらいは容易いと信じているぞ。』


 この通信が入った時、クルーは皆集合して会議を行った。

 ガニアンに関して、及びその生態に関して、重要な知見を得られた。〈バシュッ〉はおそらく、海から氷を突き破って飛び出してくる行為のことだろう。氷の層を破るという意味が内包されているようだ。

 ガニメデにある無数の穴に関しては、ほぼ解明できたと言ってもいいのではないだろうか。


 1つの情報源だけで決めるのは早すぎるのはわかってはいるが、このガニアンが嘘をついているとは思えない。早くこの星から立ち去って欲しいなら、正しい情報を伝えて、我々人類の知的好奇心を満たそうとするだろう。希望的観測すぎるだろうか……?


 〈ツキマリ〉の群生は、アルデのことだろう。アルデは海中にもあるということ……植物プランクトンの一種が群生……?ありえないことでもないけれど、それが水源近くではなく、水からは程遠い氷上に群生していることが、里香には理解が及ばなかった。そしてこの麻薬じみた効果は何だ……?人間に作用はおそらくしないだろうと、里香は直感で判断したが、一応確かめなければならない。

『定期的に何か食べないと、酸素がなくなってしまうだろう?』という発言……通信?から察するに、呼吸はしていないが、酸素は必要としているのだろう。

 卵の話も大変興味深い。電波受信管、電波送信管からできる生物など、誰も見たことも聞いたこともない。

 パイロットのジョージ・エヴァンス、生物化学者の立花里香、医師のアルベルト・ホフマンは、ガニアンのお供と話せるのを楽しみにしている。サブパイロットのルイス・エヴァンスは未知との過度な接触を怖がっているようだ。通信士のデヴィット・アンダーソンは表情が読めない。無表情のまま、送られてきた解析結果をひたすら読み込んでいる。


「ねぇ……とりあえず、今できることをやらない?」

 解析結果の考察会議が一段落したところで、里香が言う。

「今できることって?」

「アルデが人間にどう作用するかの実験。」

「危険じゃないかい?アルデって、硫酸マグネシウムとか硫酸とか、人体に危険な物質が多量に含まれていたよねぇ?」

「あ、そうだった。この星の生物はその辺りの物質なんて、どうってことないんでしょうね……じゃあこの実験はナシね。」

 里香は、やってみたい〜〜〜!!気になる!!!と小さく叫んだ。


「ガニアンのお供が来たら、質問攻めだな」

 ジョージは笑いながら言った。

「ちなみに、お供がくる前に氷を割っておく案はどうする?正直、お供ガニアンがきて質問攻めにした後の方がいい気がしてきたんだが。」

「それもそうだねぇ。もっといい侵入経路というか、もっといい逆〈バシュッ〉場所があるかもしれないもんね。」

「逆〈バシュッ〉って何よ。伝わってはいるけど。」

 一同笑い、談笑は続いた。

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