適度な馬鹿で居たい
「快便とは肛門の爆発だな」
そう考えながらお尻を拭いたトイレットペーパーに茶色い物体がついていないのを確認し、密かに喜びながら便を流して扉を開けた。しかしそこにはいつもの見慣れた壁紙はなく、薄暗い中に禿げた爺が立っていた。
「ほんとに来ちゃったよ...」
なんて言いながら爺は目を丸くしている。おそらく同じような顔をしていたであろう僕は自分が今までいた便座を振り返った。しかしそこにはもちろん便座はなく、ひんやりとした洞窟が広がっており所々でつららのような岩から水が滴っている。まぁ思考停止してる間に床が冷たい岩になってたから転移したんだろうな、なんて謎に落ち着き払っていた。
「やあ!ここはアホの世界なんじゃが...なんて言ってもわからんか」
となんか爺はよく分からないことを言っている。
「なんとなく分かりますよ。転移したんですよね?」
「転移とか分かるの!!?そっちの世界ではできないはずなんじゃが...」
と爺は困惑していたので、こっちの世界では創作物の中で転移・転生の概念があることを説明した。
「でも現実にはないんじゃろ?それをすぐに『はい、そうですか』と納得してしまうって...ねぇ?
まぁ話が早くて助かるわい。ここじゃ寒いしワシの家に行きながら話そうか」
と何か言いたげだったが、とにかく薄手の部屋着じゃ寒かったので爺の家に向かった。道中話を聞いていたが、ここは僕がいた世界とは別の世界なんだそうだ。爺によると、世界はとある神の一族が造っていて一人の神が一つの世界を造るそうなんだが、爺のいる世界を造った神はアホだったそうで何とも残念な世界ができてしまったようだった。
「なんでそういうこと知ってるんですか?」
「たまに神様が空に登場なさるんじゃよ。ほんとはこういうことしちゃいけないらしいから、そっちの神様にチクったらダメだよ。」
とは言ってもこっちの神様とやらとは意思疎通が出来ないからチクることもできないんだが。
なんて話しているうちにぽつんと立つ平屋が見えてきた。
「あれがワシの家!!」
なんて言って走り去る爺を「歳の割に元気だな」と思いつつ見送った。