僕と○○○
※この作品は2023年9月発行の文芸部誌に掲載したものです。
僕は、君に恋をしていた。
僕は先天性の病気があって、あの時も入院していた。
南向きの窓から陽の光が差し込む病室だった。
君と出会ったのは、夏のはじめ、蝉が鳴き始める頃だった。
君はいつも僕の病室の窓際にいて、僕にそっと寄り添ってくれた。
僕は次第に君に惹かれていった。
日に日に美しくなっていく君から、目が離せなかった。
太陽のように眩い、君の姿が好きだった。
僕と君では、きっと釣り合わないけれど。
誰かに言ったら、ふざけていると笑い飛ばされるだろうけれど。
でも、君が僕を見てくれることはなかった。
いつも窓の外を眩しそうに眺めていた。
仕方がない。だって、僕は陽の光のもとには出られないのだから。
だけど、それでもよかった。
僕は、窓の外に恋焦がれる君が好きだった。
君をだけを見つめていられれば幸せだった。
君は、あっという間に歳をとったみたいだった。
太陽の照りつけが弱くなって、僕が退院する頃、君はもう夏のあの時のように輝いてはいなかった。
美しくなくなってしまった君に失望して、そしてそんな自分に嫌気がさした。
それでも離れがたかったのは何故だろう。
さよなら。
病室の窓際。
向日葵が、一輪。