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第91話 ルピナスの話

 これはルピナスに聞いた話である。


 彼女はフェルガ副所長に面会を願い出た。


 コワいなー。ふぇるがさん、おんなの人なのにおっそろしいんだもん。だってだって、黒くておっきい犬連れてるんだよ。もしかしたらるぴなすちゃんより大きい犬。犬こわいのー。

 …………って違うわ!

 私は子供では無いっ。


「ルピナス・エインステインだったか?

 ふむ、セタント・クラインを魔法技師の助手に使いたいか。

 目的はなんだ」

「はい、副所長。

 彼は魔法石の使い方も熟知していますし。

 鉱山で体力仕事をやらせるよりもよっぽど効率の良い成果を上げられるか、と思っております」


 副所長室に行ってだな、長椅子に座らされたのだ。あの女、貴族だってのに礼儀を知らんぞ。まともに挨拶もしないで、用件だけ訊いてくる。

 しかも、部屋の中でデカイ犬飼ってやがるんだ。

 あのサイズの犬、フツー屋内に入れるか。外で飼え、外で。


「ふん、そんなもっともらしい話はいい。

 貴様にはなんの目的がある?

 クラインの人脈か?

 あそこの関係者にでも泣きつかれたか?」

「いえ、私は本当にですね」


 こっちを見る目が三白眼なのだ。凶悪犯でも睨む目つきなのだ。だけど、私は何もしてないんだぞ。クラインの関係者に知り合いなんているものか。

 だってのに、だってのに。

 犬をけしかけようとするんだ、あの女ー----!!!!

 

 あいつおかしいぞ。絶対まともじゃない。

 貴族にはいるんだ。特にエライ奴の中にはおかしいのが紛れ込んでる。アレも一見ちょっと怖いだけの頭は切れる貴族に見せかけてるが、そんなんじゃ無い。


 黒いおっきい犬がー--。

 がるるるる、ってうなるんだ。ルピナスちゃんマジにちびりそうになったんだじょ。

 頭の中がぐるぐるしたんだじょー。


「すまんな、アンドリューが驚かしてしまったか。

 理由も無く人に嚙みついたりはしないから安心しろ」


 フェルガのヤツ、椅子に座って足組したまま、こちらを見下すんだ。

 私の方は泣きそうになるのを堪えるんでいっぱいいっぱいだった。なのにアイツ、泣きそうな私を見てバカにした様に笑ってたんだぞー。 


「フフフフ、おかしいな。

 アンドリューがしつこく付きまとうという事はナニカ隠し事をしてるんじゃないかな。

 アンドリューはカシコイからね。

 後ろめたい気分の人間をすぐに察知するんだ」


「…………わ、私は何も」


「嘘をつくなっ!

 正直に言え、何を企んでる?

 誰に頼まれた?」


 イキナリ凄まれたんだ。あの女ただでさえコワいのに、目を吊り上げて怒鳴るんだぞ。

 くそっ、今になって考えれば単なるオドシだと分かる。

 けど、あの時はそんな余裕無かったんだ。


「フン、その反応は頼まれたんだな。

 誰だ? 正直に言え。

 ……………………」


「イズモ?

 誰だ、それは……999番の名前だと……」






「なるほど、もう良いぞ。

 要は俺の話をしてしまったんだな。

 別に謝らなくて良い。

 ムチャな事を頼んでるのはコッチだ」


 俺はルピナスに声をかけた。

 作業場にやってきた俺にいきなりルピナスが頭を下げたのである。「すまん、悪気は無かったんだ、聞いてくれ」と言うので事情を聴いていたのだ。


「それでだな、明日イズモを連れてこい、と言われたのだが…………」

「俺をか?

 ………………まぁいい。フェルガ副所長と直接話せるなら、その方が話が早いかもしれない」


「すまんー」

「大丈夫だ。

 ルピナスが悪いんじゃない」


 なんだかルピナスは気にしている様だ。俺の事は秘密にしてくれと特に頼んだ訳では無いし、話を進めてくれただけでも良かったのだが。


「ほーら、るぴなすちゃん。

 泣いちゃダメだぞー。

 笑った方がカワイイからなー。

 ほーらほら、鼻水出ちゃってるぞー。鼻かんで」

「うん、ありがちょー、ちーん。

 違うっ!

 私は鼻水なんか出してないっ。

 本当だ。泣きそうになったのは認めるが、鼻水垂れてなんかいないからな」


 あくまで布を差し出すマネである。だいたいルピナスの鼻はデカイ魔法スコープに隠されていて、鼻水が垂れててもコッチには分からない。


「んで、俺とヒンデルの話は明日副所長と話してからとして。

 クーの話はどうなった?」


「そっちはオーケーだ。

 あの女がとりあえず良いだろう、と言っていた」


 クー・クラインは横で俺とルピナスの話を聞いている。俺はそちらに向かって笑いかけた。


「という事だ。

 良かったな」

「うん、まぁね。

 あのさ、すまないけど…………

 クーって呼ぶのはその二人きりの時以外無しにしようよ。

 僕はセタント・クライン。

 セタントとしてここに居るんだ。

 いつもクーって呼ばれて、返事をしていたら何処かで他の人のいる場所でもやらかしてしまうかもしれないだろ」


 クー・クラインは昨日より男の子っぽい話し方をしている。声もワザと低めにしている。


「そりゃ、もっともだ。

 今後は気を付ける事にするよ、セタント」

「うん、お願いする。

 それで…………

 キミの方は大丈夫なのか?

 さっきの話ではフェルガさんに怪しまれているんだぞ」


 うーん、そこだよな。

 ナニを隠してナニを話して良いかの判断が難しい。


 セタントがクーだって事はもちろん隠し通すとして。

 俺が魔法石を隠し持っている事は……多少明かさざるを得ない。他に交渉材料は無いし、持ってる全てを渡す必要は無い。一部渡すだけでも相当な価値のお宝。


 あのフェルガ副所長はお金欲しがってんのかな。あんまお金に五月蠅そうな人物には見えない。けど、お金が要らない、って人も世の中にはいない。

 ふーむ。


「ルピナス、少し頼んで良いか?

 悪いが明日までに仕上げて欲しい」

この作品はカクヨム様にも投稿しています。

そちらの方が先行していますので、先が早く読みたい方はこちらへ。

https://kakuyomu.jp/works/16817139554585514621


X:twitterにて、くろねこ教授マークⅡ名義でこの小説のイメージイラストも投稿しています。

興味が有る方は覗いてくださいませ。【イラストAI使用】

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ノベルピアにて別小説連載中です。

心の広い方は覗いて戴けると最高です。

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