表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/344

第89話 頭が回る

 俺は労働者達の宿舎へと妖精少女パックに送り届けて貰う。

 今日は充実していた気がする。

 知り合いはたくさん増えたし。もうお友達と言っても良いのかな。まだ知り合ったばかりだし、まず俺がキチンと名前を憶えてからだな。


 半蛙乙女妖精アスレイさんだけは明確に覚えた。笑顔が魅力的な元気な女性。ジャンプ力があって穴掘りが得意な乙女妖精。そして…………俺の脳裏に焼き付いて離れない、あの神の造形物としか思えない魅惑のプロポーション!


 いかん。

 俺今日眠れるだろうか。

 ……………いや、その、アスレイさんのプロポーションがチラついて眠れないってイミじゃ無いんだよ。

 それ以上に考えなければイケナイ事が山の様にある。アスレイさんのボォォォン・キュウッ・ボォォォンも正直に言うと少し眠れない理由ではあるけど。それはそれとして。


 ルピナスに魔石のコトをバラしてしまった。アレは正しい選択だったのだろうか? セタントが実は女性だと言う事実も伝えてしまった。

 しかし他に頼れる人間はいない。


 このベッド。俺が現在寝ている木の3段ベッド。

 周囲を見回せばイビキをかく労働者達。犯罪者としてここに囚われている男達。ヒンデルの様な例もある。全員が悪人では無いだろうが、それでも女性に餓えたオスどもである事は間違いない。ここにセタントをこれ以上寝かせるワケにはいかない。それは許せない。

 である以上、アレしか方法は無かった。


 しかしルピナスが裏切る可能性だって……監視官に事実を報告して点数稼ぎ。

 いや、その可能性はかなり低い。こんな強制収容所で点数稼ぎしたトコロで彼女に得はほとんど無いハズ。

 彼女が欲しているのは貧乏だと言う領地への仕送り金と魔法技士として一人前になり名を馳せる事。

 その為の資金をこちらは提供出来る。赤魔石ルビーは一度セタントに預けたが、ルピナスへの報酬と言っているし、場合によってはそれ以上支払える魔石がある事も彼女に教えた。

 彼女とは……信頼関係まで築けているとは言えないが、何も相談無くイキナリ裏切る事は無いと思える。………………その筈だ。


 ルピナスを通じてフェルガ副所長と交渉、上手くいくだろうか。

 ルピナスはまだしも…………あのフェルガはこちらの希望をやすやすと受け入れてくれる風では無かった。しかしフェルガはセタントの知り合いだと言う。彼女の為なら行動してくれるだろうか。以前顔を合わせた二人は親密な雰囲気では無い、むしろ険悪な空気感だった様な……あれはセタントのフリをしていたからか。フェルガと面識が在るのはクー・クラインの方。


 ああ、なんだか混乱している。セタントの本当の名前はクーだってのに、ずっとセタントと頭の中で考えてしまっていた。

 俺は出会ってからずっと彼女の名をセタントと思って来たのだ。クーが本当の名前と言われてもすぐには慣れない。


 そうだよな。………………セタント、いや、クー・クライン女性だったんだよな。

 俺はベッドに残る毛布を抱き寄せる。それは少し甘い香りがして…………

 クーの残り香。

 俺は……多分本能的に女性だと分かっていた様な気がする。いくら美少年であっても男に対してあんなに緊張したり、変に反応してしまったり、気になってしまったりする筈が無い。


 だから……そうだ。彼女を救わなきゃ。

 この地獄の様と一般的には呼ばれる鉱山労働から。


 フェルガに俺やヒンデルの事まで交渉するのはヤリスギだったかもしれない。特に俺はここで労働を続けても何と言う事は無い。俺の事まで頼んでフェルガが臍を曲げたらどうする。クーの事だけ頼めば受け入れたかもしれないものを、そのせいで失敗したら…………


 だが。

 ヒンデルは老人。この鉱山での労働はそろそろ限界。やはり彼も何とかしてやりたい。

 それに………………

 俺が鉱山労働に残った場合は…………クーはあのルピナスの作業場で助手をして、俺は昼間の間鉱山作業、ほとんど顔を合わせない。

 それは………………

 何かが駄目な気がする。


 昨日まで隣に寝ていたセタント。今日からは隣に寝ていない。それは仕方がない。この部屋で彼女が眠るべきでは無い。彼女は魅力的な女性で俺は17歳の我慢の効かない年頃のオス。故に別に寝る方が正しい。

 だけれども、その上昼間作業時間に顔を合わせる事すら無くなる? そんな事が起きていいのか…………


 それは起きてはいけない事だ。

 と誰かが応える。俺の胸の中で誰かがそう断言している。

 彼女の側にいるんだ。彼女を守れ。

 そう力強く言い切る声。

 俺はその声にまったく逆らう事が出来ない。疑問すら返す余地が無くその声に従う。


 そう。ルピナスの作業場だって安全とは限らない。坑道やこの宿舎に比べれば遥かにマシではあるが。監視官達。ここの監視にはろくでもない輩が結構な割合で紛れ込んでいる。やはり可能な限りクー・クラインの間近にいたい。


 結局俺の想い、思考回路は全て、最後にはクー・クラインへと繋がる。

 なんでだ。

 俺の思考回路どーなっちゃったんだ。思考の中心に俺じゃなくて、別の人がいるなんて、そんな事起こりうるのか?


 俺の頭は色々回って、結局一睡もせずに朝を迎えた。

この作品はカクヨム様にも投稿しています。

そちらの方が先行していますので、先が早く読みたい方はこちらへ。

https://kakuyomu.jp/works/16817139554585514621


X:twitterにて、くろねこ教授マークⅡ名義でこの小説のイメージイラストも投稿しています。

興味が有る方は覗いてくださいませ。【イラストAI使用】

https://twitter.com/kuronekokyouju


ノベルピアにて別小説連載中です。

心の広い方は覗いて戴けると最高です。

https://novelpia.jp/novel/5203


宣伝でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ