第83話 差し出せるモノ
落ち着こう、俺。
イキナリ黙って、体から殺気を迸らせた俺。クーもルピナスもタジタジとなっている。
「どうしたの、イズモ?
わたし怒らせるような事を言ってしまった?」
「……すごいな。
今の殺気はタダゴトじゃなかった。
凶悪犯や、歴戦の兵士でもあそこまでの殺気は飛ばせないと思う」
クーは心配してるみたいだし、ルピナスは冷や汗を垂らしている。
「あ、すまん。
…………ちょっとな。
とにかく。
クー、頼む。
俺の頼みに従って、ルピナスの部屋で暮らしてくれないか。
俺はキミに危険な目に合うのが許せないんだ」
「許せないって……
なぜ、何故アナタがわたしをそこまで心配するの?」
「アタリマエだ。
キミは……キレイだ。
キミに他の男が触れる…………
そんな事を許せるものか!」
「……!……
イズモ、あなた自分が何を言ってるのか、分かっているの……」
「分かっているとも!」
それに正直言うと、他の男どもも危険だが……それと同じ様に俺自身も危険である。
俺だよ、俺。
男なら分かって貰えると思うが、同じ所に美少女が寝ていた。そして今後も寝続ける。そんなの……どうなるか分かんないじゃん。
モチロン、俺は女性を襲う様なマネする気は無い。
無いけれども!
クー・クラインは美少女なのだ。まっすぐな金髪、肌は白く瞳は琥珀色、なんだかいい匂いまでしている。それが毎晩俺の隣で寝るんだよ。隣のベッドじゃないんだよ。一個のシングルベッドなんだよ。柔らかいカラダがくっ付いたりしちゃうんだよ。鼻にはなんだか花のような香りまで届いてきちゃうんだよ。目を開けたら美少女が瞳を閉じて寝息を立ててるんだよ。
理性の壁、壊れっちゃうかもしれないじゃん。
良識のダム、水位が溢れてジャバジャバ溢れっちゃうかもしれないやん。
自制心の扉、鍵が壊れて開きっぱなしになるかもやんかいさー。
それで女性を襲ったあげくの果てに、女も同意してた、とか言いだす。大学に通ってた頃はそんな話もありがちだったけどさー。
あかんやろ。男の思い込み。
クーは自分から、俺のベッドに来て寝てはいるが…………それは人として信頼しているからであって、決して男女の仲になる事を許した、とか、そーゆーモンでは無い。…………無いよね。
これだけ、情けない自分をさらけ出しているのだ。クーにも何とか分かってもらいたい。
「分かった…………
イズモがそこまで言うのなら、アナタに従うわ」
クー・クラインがなんだかキラキラした瞳でうなずく。良かった。分かってくれたか。やっぱり人間正直が一番だな。
「…………あー、キミ達二人きりかの様に見つめあっているけど。
此処には私も居るんだぞ。
私の意向を無視して勝手に話を進めないでくれないか」
ルピナスが機嫌悪そうに言い出すまで、俺とクーは見つめあっていたのであった。
「キミの要望は分かった。
女性だと言うのなら、2、3日くらい自分の部屋に泊めるのもやぶさかではないけれど。
しかし彼女はここの囚人と言うことになっている。
いつまでもは置いておけないぞ」
「そこ、なんだが…………
セタント・クラインをキミの助手に雇う事は出来ないか?」
「助手だって?」
「ああ、キミは魔法技師としてこの施設に雇われている。
助手の一人くらいいてもおかしくないんじゃないか、と思うんだけど。
……それで可能ならば、なんだが…………
もう一人老人も一人助手としてここの作業の手伝いをさせられないだろうか。
さらにアクマで出来ればで良いんだが……俺もここの助手と言う事に出来ないか?」
ルピナスは呆れたタメイキをつく。
「こんな赤魔石を差し出すなんて、ムチャな話だろうと予想はしたけれども、予想以上だな。
…………セタントは良い。
彼女は有名な貴族の一人息子だ。息子と言う事になっている存在だ。
だから、魔石の扱いにも慣れている。助手と言っても話は通じる。
場合によってはそんな願いも出せば、通るかもしれない。
だけどな。
キミともう一人までは難しい。
モチロン、この魔石を金にでも替えてしまえば、その位は通りそうだし。
この施設、丸ごと買収できるかもしれない。
でもこれは大っぴらには出来ない魔法石なんだろう」
「いや、ルピナスが金に替えられると言うのなら、替えて貰って構わない。
この施設のエライ人間を買収して可能性が上がりそうならそうして欲しい。
正直、俺は囚人でこの鉱山のこと以外知らない17歳のガキでしか無い。
ルピナスは貧乏貴族と言ってはいたが、貴族なんだろう。
キミが俺の望みを叶えるために有効と思う方法を実行可能なものからとってくれ。
その為なら………………
いくらでも魔石は差し出そう」
俺は妖精のマントから取り出していた。
手づかみできる程度の魔石。
赤魔石
青魔石
黄魔石
緑魔石
色とりどりの魔石をザラっと手から床にブチ撒ける。
しばらくルピナスは固まっていた。クー・クラインも同じく。床に転がっているモノが何だか分かりません。とゆー表情。
二人はゆっくり顔を見合わせてから叫んだ。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?!?!?!」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ?!?!?!」
この作品はカクヨム様にも投稿しています。
そちらの方が先行していますので、先が早く読みたい方はこちらへ。
https://kakuyomu.jp/works/16817139554585514621
X:twitterにて、くろねこ教授マークⅡ名義でこの小説のイメージイラストも投稿しています。
興味が有る方は覗いてくださいませ。【イラストAI使用】
https://twitter.com/kuronekokyouju
ノベルピアにて別小説連載中です。
心の広い方は覗いて戴けると最高です。
https://novelpia.jp/novel/5203
宣伝でした。




