第63話 慌てる金髪の子
後から思い出してみると、その時俺は調子に乗っていたのかもしれない。
色んなコトが上手く行っている。俺に都合よく全てが回る、そんな気持ちになっていたのだ。
レプラコーンちゃんに作って貰った革靴は調子が良かった。最初こそ少し硬く感じたものの、履き慣れるとピッタリ足に馴染んだ。サンダルを履いて歩くのとは大違い。岩山の道を歩いて坑道にたどり着くのに何の支障も無い。
今度、セタントやヒンデル老の分も作ってくれと頼んでみようかな。
図々しいだろうか。
靴職人のレプラコーンちゃん。お礼は何を上げると良いんだろう。
代金払おうにも人間のお金を俺は持ってない。この鉱山でのみ使えるコインがあるだけ。これ多分質の悪い金属にメッキ塗ってるだけなんだよな。
元々に妖精のレプラコーンちゃんが人間のお金を喜んでくれるのか、とゆー問題も在る。
今のところ監視や他の労働者に靴に関してツッコまれてはいない。監視だってイチイチ男の足元なんか見ないよな。
セタントやヒンデル老にはさすがに気が付かれたのだが。売店で買ったとゆー事で押し通した。セタントが羨ましがっていた様なので、出来ればセタント用のも作って貰いたいのである。
でもアレだな。専用の革靴作って貰うからには足のサイズ図らないとムリだな。
セタント・クライン、金髪の美少年の生足を持ち上げて俺がその寸法を測るのか。
キレイですべすべした足に触れちゃったりなんかして。
「ちょっとくすぐったいよ。あまり触らないでくれ」「そう言われても、サイズを測るだけだ。ジッとしていればすぐ終わる」「いや! どこを触ってるんだい?!」
なんちゃって。あの子驚くと声が高くなって一層可愛らしいんだよな。俺が足の裏をコチョコチョしたら高い声を出してくれるかな。
だから!
男の子!
男の子の足に触る想像をしてナニをニヤニヤとしてるんだ、俺!?
そしてシャベルも調子良かった。最近では深夜に地下坑道で作業する時だけで無く、昼間もたまに使ったりする。
「アレ……?
999番、その道具何処から……」
「売店で買ったんだ……
じゃ無かった!
ルピナスに作って貰ったんだった」
「ルピナス……ルピナスさんね
……999番はズイブンとルピナスさんと仲良くなったみたいだね。
最近は毎日、彼女の工房に行ってるんだろう。
キミは……もしかしたらアレなのかい?
背が低い女性が好みのタイプとか……
そんなだったりするのかな」
セタントの目が珍しくジトっとしている。
いつもは目をキリっと開き、まっすぐ前を見るマナザシの強い少年なのだが。現在は目を半眼にして、こちらを見る目つきはなんだか暗いイヤなモノが感じられる。
んんんーーー?!
これはひょっとして……俺が背の低い女の子シュミだと思われている?!
むぅ、セタントの目にイヤな光があるのもトーゼンかな。
〇女趣味か。いくら性的嗜好が多様であっても、認められないモノは認められない。
「そ、そんなコトは無いっ!
ルピナスとは別に仲良くないぞ。
シャベルの作成を頼んでいるだけだ」
「……そうかな?
それにしてはいつも仲良く話してるみたいだけど……」
俺は必死で否定するのだが、金髪の子の目つきは変わらない。ウソを付いても分かるよ、と言わんばかりの表情。
確かにルピナスはこちらにノッてボケを繰り広げてくれる話しやすい相手ではあるのだが。
「違う!
仲が良いと言うのなら……
俺は711番との方がよっぽど仲が良いつもりでいる!」
「なっ?!
な、なななななななにを言っているんだ。
誰と誰の仲が良いって?!」
「俺とキミに決まってる。
ルピナスとは確かに最近毎日のように会っているが、せいぜい30分弱だ。
711番とは毎日鉱山で半日同じ作業をしているし。
寝床でも食事をする時も一緒なんだ。
遥かに深い仲だろう」
「そ、そそそそそそそういう事を言ってるんじゃ無くて……
僕はキミとルピナスさんとの間に男女の恋愛的な感情があるのかどうかが、凄く気になってる訳で。
僕とキミに関しては男と男なワケだからそう言う話とは別次元の話であって…………
……違った、ナイショだけど、わたし男の子じゃ無いんだった……
……すると999番はわたしを女の子と知って、つまりより仲が深い関係だと言ってる?!……
……いや、違う違う、わたしが女の子って事は言って無い、例え彼にだって知られていない……
……999番の事を信頼してない訳じゃ無いけど、それとは別問題なの。わたしはクライン家の人間として……
……そう言う話じゃなくて、今問題なのは、もしかして999番がわたしの事を女の子と気づいてるかもしれない、って事で……
……なぜ気が付かれたの……そうだわ、彼とは毎日同じベッドで寝ている……
……まさかわたしが寝ている間に……」
金髪の美少年は聞こえない様な小声で何か言っていた、かと思うとその頬がみるみるウチに赤く染まる。
「……そうよ。毎日999番の横でわたしは寝ちゃってた……
……寝てる間に、わたしを女の子だと感づいてしまったの……
……そんな……女の子だと気づくようなナニが……
……もしかして……意識を失ってるうちにわたしのカラダを……
違う、違う。
そんなハズ無いっ。
999番はそんな人じゃ無いっ!」
赤くなっていたかと思うと一瞬蒼ざめて、今度はキッと睨むようなマナザシ。俺はその100面相をボケラっと眺めていた。
反応したのはヒンデル老だった。
「711番、落ち着け。
声が大きくなっとるぞ。
他の人間に注目されるし。
監視だってさすがにほっておかんぞ」
「……ゴメンなさい。
つい興奮しちゃた。
すいません、324番さん。
999番もゴメンなさい」
「気にするな。
大丈夫だ」
セタントはヒンデル老の注意で我に返ったらしい。
俺の後ろで鉱石を整理する作業を始めた。
「なんでこんな話になったんだっけ。
そうだ、999番の道具の話だ。
何処で手に入れたかじゃなくて……
さっきまで持って無かったと思ったんだけど、何処から取り出したのか。
それが気になったんだった」
「…………服の中にしまっていた」
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