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男は異世界に生まれ変わる。だがそこも地獄の様と呼ばれ強制労働させられる鉱山だった。だけど俺ってば仕事中毒だから平気、むしろ生き甲斐が出来て楽しーや。  作者: くろねこ教授
第7章 シャナ湖に棲む……

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第58話 紋章魔術《シギラム》

「良かったな、ジジィ。

 ガキが助けてくれるってよ」

「お前がガキを助けるつもりだったんだろうが。

 逆転しちまったな。

 ギャハハハハハハハ」


 監視の男どもがヒンデル老人を嘲笑う。

 ヒンデルは顔が紙の様に白っちゃけている。先ほど彼は本気で死を覚悟していたのだ。刻まれた紋章魔術シギラムが発動し左肩が弾け飛ぶ。そのスイッチであるロッドを頭の悪い監視の男が持て遊んでいるのだ。


「やる。

 ……僕が貴方達の言う通り裸で踊る。

 だからもう324番に構わないでくれ」


 セタント・クラインは覚悟を決めたのだろう。

 辛そうではあるが、美しい顔をしていた。他人のため自分が笑いものになる事を厭わない覚悟。

 暗い坑道の中を照らす蝋燭の光。それに照らされた真っすぐな金髪。

 少し前まで貴族の子供だった彼にはこんな下卑た監視の言いなりになるのは、耐えがたい屈辱の筈だ。少し強張った頬と固い目線。唇を嚙みしめるようにしている。


 彼の腕が作業服の上着に掛けられ、一瞬ためらうように止まったが。すぐに金髪の美少年は上着を脱ぎ棄てた。


 暗がりに真っ白な肌が浮かび上がる。

 それは……俺には恐ろしく美しく見えた。美しく、男の視線を引き寄せてやまない

華奢で優美な曲線。いや、そんなエロティックな視線で見るのは失礼だろう。それは神聖な犯すべからざるものに俺には見えた。



 だが、監視の男どもは俺と同じ神聖さを見出しはしなかった。無粋な驚きの声を上げる。


「おい、ガキ!

 何だ、それは?!」

「ありゃあ……紋章魔術シギラムなのか?」


 セタントは作業着の下、何かを胸に巻いていた。包帯の様な布。サラシとか呼ぶんだったか。白い布を重ねて巻き付け胸部を隠している。

 だが監視の男達の言葉が指しているのはそのサラシでは無かった。


 背中。

 優美なカーブを描く腰からウエスト。そこから上へあがっていく華奢な肉体に黒い文様があるのである。


 その文様は俺にとっては特に意味をなさない。異様ではあるがそんな物より白い肌の方が遥かに俺の目を捉えてしまうのである。

 しかし、この世界の人間にとってはそうでは無い様だった。


 ヒンデル老人がつぶやく。


対魔騎士ナイトの紋章…………

 それもなんと大きく力強い。

 アレがナイト・オブ・ナイツに代々伝わると言う紋章魔術シギラムなのか……」


 俺はヒンデル老に教わった覚えがある。


 ナイト・オブ・ナイツ、騎士の中の騎士。魔物と戦う高貴な戦士、対魔騎士ナイツの中でも国一番の対魔騎士ナイト


「なん……だと。

 ナイト・オブ・ナイツ?

 この国に居る者なら子供の時に必ず聞いた事の在る称号じゃねぇか……」

「このガキが対魔騎士ナイトオブ対魔騎士ナイツだってのか……」


 監視どもが呆然とセタントの背中の文様を見つめる。


 あの文様は俺には分から無いが、このアホウで無粋な監視ですら恐れ入る程のナニカであったらしい。

 今かもしれない。

 俺は頭を回転させ、この場で自分が出来る事を探っていた。

 この監視どもを殴り飛ばす事は簡単だ。速度上昇アクセル筋力強化ストレングスも使っていない状態であっても、俺の肉体は日々の労働で鍛えられている。この監視官達も本来は兵士であるらしい。多少の訓練は積んでいるようだが、石の巨人(ゴーレム)を相手に戦闘訓練を行っている俺にとっては恐れるに足りない。

 だが。

 それでも殴る訳にはいかない。

 相手は俺達の肩を吹き飛ばす事が出来るのだ。一人を倒しても、もう一人がロッドを使ってしまえば、セタントのヒンデル老の左肩が失われるのである。俺自身の事はともかく、そんな危険は犯せない。

 俺には何も出来ないのか。

 そんな筈は無い。俺はタダの17歳の青年では無い。

 俺の脳味噌には日本人として30年以上も生き続けて来た知識と経験が有るハズなのだ。ここでそれを役立てられないのなら、俺がここに居る意味など無い。

 ならば、ここはなんとか…………



「監視官閣下、監視官閣下」

「…………なんだ?」


「その辺でお止めになった方が…………

 聞いているでしょう、この若いのが711番。

 フェルガ副所長が傷つけるな、と言った新入りです」


「フェルガ副所長が?!」

「……それは知ってる。

 だが俺達は711番にケガなんかさせちゃいねぇぞ」


 少し警戒の表情になる監視。俺が何か言いつけるつもりとでも思ったのかもしれない。


「ああ、もちろん。それは分かっております。

 新人が仕事に慣れていないのを指導していただけですとも。

 ですが……副所長が何故そんな事を言ったのか、考えてみては如何でしょう」


「何だと?」

「フェルガ副所長が美少年を気に入ったんじゃないのか」


「それこそ下衆なウワサと言うヤツでしょう。

 副所長はちょっとおっかないですが、あれでも美人ですから。

 男に不自由するとは思えません」


「それはまぁ、確かに……」

「あのおっかなさはちょっと程度じゃ無いけどな」


 うん。それは俺も同意する。でも今はそこを考える必要は無い。


「あの若いのは……大きな声じゃ言えませんがクライン家の息子です。

 この国一番の騎士。

 ナイト・オブ・ナイツを継ぐ可能性も在るんですぜ」

この作品はカクヨム様にも投稿しています。

そちらの方が先行していますので、先が早く読みたい方はこちらへ。

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