第6話 魔凶鴉
俺は赤魔石と青魔石を取り出す。
石の巨人。
ほっとくと時々現れる。コバエみたいなヤツだな。
俺は地獄の炎と瞬間冷凍の連続技を使ってあっという間に敵を数体倒していた。
「石の巨人って……
確か人間にとっては強敵だったと思うんだけど。
羽虫扱いなんて豪気なのよだわさ」
妖精少女が何か言ってるが、気にしない。
俺は日本人としての記憶を取り戻して思ったのだ。
前世の俺は人目を気にし過ぎていた。他人に二代目社長とか気楽なボンボンと言われるのがガマンならなかった。
そんな俺の事を知りもしない連中の言葉などどうでも良かったじゃないか。
俺は頑張っている。
自分がその事を分かっていればどうでもいい。
「うーーん。
良いコト言ってる気もするんだけどなのよ……
単にワガママで他人の意見を聞かないマイペース野郎になっただけって気もするだわさ」
えーい。
うるさい、うるさい。
気にしないったら、気にしないのだ。
「さて……そろそろ今日はここまでかな」
「あっ、そうねなのよ。
もう二時間もすれば夜が明けちゃうだわさ。
いくらアンタがタフだって言っても少しは休まなくっちゃなのよね」
いや、休むんじゃないんだが……
俺は思ったのだ。
仕事は勿論する。
人一倍頑張る。
ただ、気晴らしや楽しみもあるべきだ。
そうでなければ、すぐ同じ失敗を繰り返すだろう。
「気晴らし……?
ナニをする気なのよだわさ」
俺は山を駆けめぐっていた。樹に登り、崖を滑り、岩に座る。
ハイキングみたいで楽しい。
「ハイキング……って。
この山は険しくてマトモな人間なら歩けやしないのよさ」
そうなのか。
確かに鉱山から逃げ出す人間がいない様にか。山の平坦な箇所には塀と紋様が巡らせてあった。
紋様はデンジャラスなシロモノ。それを通り過ぎようとすると紋章魔術が発動すると言う。片腕が肩からぶっ飛ぶのである。
それが無い場所は崖や急角度の険しい山や谷。普通の人間なら進めない。
だけど緑魔石で速度上昇を使って。黄魔石で筋力強化を使った。
そんな俺には子供のハイキングコースだ。
ギャハァ ギャギャア
なんだか汚らしい泣き声がする。
俺が見上げると大きなカラスが群れて騒いでいる。
「キャッ!
魔凶鴉なのよ。
カラスのモンスターなんだけど、飛び回るし、あの声で鳴かれると人間は混乱を来すって言われてるヤバイモンスターなんだわさ。
逃げた方が……」
俺は妖精少女の言葉を最後まで聞かずにツルハシを持って飛び跳ねていた。
赤魔石を握りしめる。
地獄の炎!
俺がツルハシを突き立てた大ガラスは一瞬で黒コゲになった。
鳴き声も出せずに落ちていく。
ギャギャギャ! ギャハァギャギャハァ!
なんだかカラスどもが慌てたような声を上げる。
俺は気にせずツルハシを振り回す。
数分後、俺の周りには焼き上がった巨大トリが多数落ちていた。
俺はそのモモ肉を引き裂いて口に放り込む。
「フーン、少しばかり固いがなかなか美味い。
味が薄いな。
焼き鳥のタレが必要だな」
俺の周りを妖精少女が飛ぶ。
「呆れるわーなのよ」
「お前も食べるか?」
俺は妖精少女にヤキトリを差し出す。
串が無いので手掴みだ。お行儀は悪いが、仕方あるまい。
「そんなの妖精は食べないなのよ」
「なら何を食べるんだ」
「植物の朝露とか。
果物の汁なのよ」
「菜食主義か。
タンパク質もたまに取らないと大きくなれないぞ」
だからそんなにちみっちゃいんだな。
「違うわよだわさ!」
俺は妖精のマントを確認する。
妖精少女から労働の代償としてもらったモノだ。人には見えない空間にモノを隠して置ける。
俺は労働で拾った多数の魔石をコイツに包んでポケットに隠し持っていた。マントと呼んではいるが、妖精少女用なのだ。人間にとってはごくフツーのハンカチサイズでしかない。
既に収拾した魔法石は取り出して全て積み上げてみると、このハンカチサイズを優に超える。
と~ころがなんでだか、妖精のマントにくるむと入っちゃうんだよな~。
他の人間からは見えないので、不審に思われる事も無い。
妖精少女に送り届けて貰い、俺は他の作業員どもがイビキを立ててる部屋に帰りつく。
そろそろ日本で言うなら明け方5時くらい。
一時間くらいは休んでおかないと体に毒だよな。
俺はベッドで目を閉じる。
今日も良く働いた。
石の巨人も多数潰したし。
適度な運動もした。
タンパク質も取れた。
身体にいい事ばかりだ。
焼き鳥のタレ欲しいな。
どこかでシャベルも手に入らないかな。
あまりガマンばかりせず、やりたい事や欲しいモノも考えておこう。
俺、健康だぜ。
満足して眠りにつく俺である。
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