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第3話 パストライフメモリー

 速度上昇アクセル


 唱えると風の魔法が俺の身体を包み込む。魔力が見える人間なら緑色に見えるらしい。



 俺は魔石を更に取り出す。

 今度は赤魔石ルビー


 地獄の炎(ヘルファイヤ)


 唱えながらツルハシを石の巨人(ゴーレム)に打ち込む。

 高さで俺の背丈を超える巨人。2メートルは間違いなくありそうなデカブツ。だが、動きは速度上昇のかかった俺の敵じゃない。


 俺のツルハシはそのデカイ身体の表面に刺さった。

 と言っても相手の体も固い石製だ。深く刺さりはしない。しかしツルハシが表面に当たっただけで、巨人の身体を赤く光を放つ。

 熱されているのである。


グオゥオオオオオオオオ


 熱さを感じるのか、石の巨人(ゴーレム)は身体の何処かから叫び声の様なモノを上げる。

 俺はそれを聞きながら、又魔石を取り出す。

 お次は青魔石サファイヤ

 

 瞬間冷凍フリージング


 動きの鈍った石の巨人(ゴーレム)に俺はツルハシを突き立てる。今度は石の巨人(ゴーレム)の表面をピキピキとナニカが覆って行く。

 石の巨人(ゴーレム)は凍り付き、氷の彫像と化していた。


 かと思うとスゴイ音を立てて壊れていく。

 石の巨人(ゴーレム)が内部から割れて粉々になったのだ。

 

 

「なーに今の?

 石の巨人(ゴーレム)を粉々にする魔法なんて初めて見たのだわさ」


「違う。

 石の特性だ。

 石ってのは熱されると膨張する。

 冷やしてやると収縮する。

 その時に均等に膨張収縮しないから歪むんだ。

 石の結晶構造が断ち切られる。

 後はあんなデカブツだろ。

 自分の重みだけで壊れちまう」

 

「へー。

 ようするにアンタ石の巨人(ゴーレム)を粉々にする魔法が使えるのよね」

「……妖精少女パック、お前ゼンゼン分かって無いだろ」




 一ヶ月程前の話だ。

 夏の夜散歩していた俺はこの妖精少女パックに出くわした。


「アンタ、わたしの姿が見えるのよね。

 言葉も聞こえるのだわさ。

 ラッキーなのよ、ならちょっと手伝ってだわさ」

「…………!!!……

 半裸! エロイ恰好のちみっちゃい少女!」


 俺はパニックに陥った。

 自分が妄想を見てると考えたのである。

 その少し前から不思議な光景が俺の頭にチラついていて、自分の頭がどうかなってしまったと思い込んだんだ。


 そんな俺をしばらく眺めて妖精少女パックは言った。


「アンタ不思議なステータスなのよ。

 子供の頃から鉱山労働をしていて、体力と筋力が人一倍なのはトーゼンだわさ。

 だけど……なんなのよ、この称号?

 仕事中毒ワーカホリック

 前世記憶パストライフメモリー

 どっちも中途半端に発動してるみたいだわさ。

 わたしが発動させてあげるのよ」


 その瞬間、俺は全てを思い出していた。




 日本にいた俺、出雲働いずも・はたらく

 ロクでもない名前だが、俺の父親は労働こそ人間の喜び、なにより尊いモノだ、等とのたまう人間だったのだ。


 その父親は俺が大学生の時亡くなった。

 俺が子供の頃は小さい鉄工所の社長だったが、俺が成長するのに合わせて会社も急成長していた。父が死んだときにはすでに社員は500人を超えていた。既に中小企業を名乗る事は出来ない規模だ。


 俺はいきなり大学生と社長の二足のわらじを履かされることになった。

 俺は社長の座に固執する気は無かったが、今際のきわに父親が言い残したのだ。

「会社を頼む。

 他の奴には任せられん」

 さすがに遺言を無視できる根性は俺には無かった。


 仕事を引き継いで、父親の仕事スケジュールを確認して驚いた。

 休日が無い。夜遅くまで自社の工場に出向き、朝早くから作業員と朝礼、昼は取引先の会社周り。休憩時間も睡眠時間もロクにありゃしない。

 こりゃ早死にするのもアタリマエだ。


 だが否応なく俺もそんなペースで働くことになった。

 休みなんて取ろうとすれば、周囲の連中の目が冷たい気がするのだ。

「けっ、所詮甘やかされた二代目社長だよな」

「いいよな、親の財産を引き継いで、気楽な社長稼業かよ」

 もちろん、面と向かって言われた訳では無いが陰でコソコソ言ってるのは目に見えている。


 俺は人一倍働いた。

 父親に言われて大学で経営学を学んでいたのでそっちはなんとか恰好が着いた。

 問題は会社のメイン事業である製鉄の方だ。俺はほとんどシロウトだったのだ。慌てて本を買い込み、インターネットで調べて、人に頭を下げて知識を叩きこんだ。

 やっと社長として恥ずかしくないレベルになったと思えたのは十年が経ってからだ。


 なんとか技術者との打ち合わせや、取引先への商談も恰好が着くようになって一息ついた俺。

 その頃には父親を越えるレベルで働くのが常になっていた。

 この数年、休日など一日も取っていない。

 朝早くから、夜遅くまで働くのが習性の仕事中毒の男が出来上がっていたのだ。


 それが俺、出雲働いずも・はたらくだった。

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