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男は異世界に生まれ変わる。だがそこも地獄の様と呼ばれ強制労働させられる鉱山だった。だけど俺ってば仕事中毒だから平気、むしろ生き甲斐が出来て楽しーや。  作者: くろねこ教授
第三部 変わりゆく世界 第一章 クライン家

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第10話 魔法医師

「貴方もクーを信じているなら、俺の事も少しだけでいい。

 信用してくれ」

「ちっ 口が上手いな。

 分かったよ。

 俺が、てめぇサギだったら殺すぞ、って殺気を放ってるのに微動だにしやがらねぇ。

 どうやら、本物か…………

 それとも胆のすわった大悪党か、どちらかだな」


 コンラさんは俺の言葉で前をふさぐのを止めた。

 殺気……放ってたの? 目つきは少し怖かったけどさ。それでもクーが怒った時の全身から放たれる鬼気。あれに比べれば、子供が怒ってるようなモノ。それでビビッていたらクー・クラインとは付き合っていられない。


「ありがとう」


 俺は言って木の扉を押し開ける。

 薄暗くした部屋。窓はあるが、カーテンが閉められ、日の光は薄くしか差し込まない。

 病院特有のフンイキ。重く湿ったような体にまとわりつく空気。部屋自体は掃除され、清潔なのだが、さわやかさと切り離された異空間。

 病室に入っていくのって、少し緊張するよね。中に居るのが重病人と分かっていれば、なおさら。

 俺はためらいを表に出さないように進む。

 部屋の中央にベッドがあって。

 

 そこにクー・クラインが寝ていた。


 金髪のまっすぐな髪が額にかかる。目をとしているのでまつ毛の長さが目立つ。整った顔立ち。


 違う。

 クー。クラインは俺の後ろから部屋に入って来る。クー・クラインの訳は無かった。


「…………セタント」


 彼女がつぶやく。

 そうだ。頭を働かせればすぐ分かる。あまりにもクーに似た顔がベッドに横になっていたので、一瞬脳みそがトンデしまったが。

 横たわった人間こそがセタント・クライン。クーの弟。よく似ていると言われた姉弟。

 そう思って観察すれば、少し顔立ちも違う。髪の毛は男にしては長い。寝ているので切りそびれているのか。一度男を装うため、短くして伸びてきたクーと同じくらいの長さ。

 だけど。

 面差しが弱い。目を閉じているのでハッキリとはしないのだが、クーから感じられる意志の強さ、凛々しい雰囲気と言う物に欠けている。むしろセタントの方が女性の様な柔らかさ、弱弱しさにあふれる。

 それは本人の特性なのか、病気のせいなのか。通常のセタントを知らない俺には判断が付かない。

 頬がこけて、顔色が悪く感じられるのは、部屋が暗いせいだろうか。



「前に見た時より、瘦せてしまったみたい……」


 クーがつぶやく。


「ああ、一日に数回しか意識を取り戻していないんだってよ。

 その時にメシを食うんじゃ栄養が足りねぇ。

 おふくろから聞いた話じゃ、寝ていても無理やり口を開けて、重湯を飲ましているんだ。

 でも…………やっぱ足りねぇよな」


「そんな……状態まで……

 わたしが最後に会った時は……具合は悪そうだったけど……もっと普通だった」

「俺が出る前もそうだ。

 弱っちゃいたが、意識を半日も取り戻さない、なんてことは無かった」


 クーの目も弱弱しくなっている。

 あまり仲は良くなかったと聞いてはいるが、それでもたった一人の弟。衰弱した姿を見るのはショックなのだろう。


「イズモ先生、イズモ先生」


 俺に話しかけたのはミューギンちゃん。彼女は小声でひそひそと話しだす。


「あたしも一応は魔法医師(デアドラ)なので…………

 難しいかもしれません。

 魔法医師(デアドラ)はこう習います。

 『病気を治すのは患者だ。

 魔法医師(デアドラ)はその手助けをするだけ』

 あたしたちは魔素(プネウマ)魔力(プシュケー)にして患者の体に送り込む事が出来ますけど、それは患者さんに力を与えているんです。

 小さい傷ならだれでも自然に治癒する力があって、時間さえかければ治るでしょう。その人間の治癒能力に力を貸すだけなんです。

 だから、治ろうとする力の無い人間には効果がありません。

 お年寄りだったりすると、もう自分を治そうとする気力が無いんです。

 だから、魔法医師(デアドラ)がいくら魔力(プシュケー)を送ってもムダ、ムリ、意味が無いんでーす」


 病気を治すのは患者自身、医者はそれに力を貸すだけ。

 そんな言葉は俺も聞いた事がある。医療系のドラマか何かだろうか。

 相変わらず、ミューギンちゃんは説明が上手い。パっと俺の頭に入ってくる。その医者の役割はこの世界でも同じらしい。

 …………だけど。


「しかし、彼はまだ若い。

 今は衰弱して意識がハッキリしていないかもしれないが……

 意識を取り戻せば、当然治りたいと願うだろう」


 セタント君は若い。年齢はクーの一つ下だと聞いた。ならば17歳。ピッチピチのセブンティーンなのである。


「…………いいえ。

 セタントさんの事をよく知らないですから、なんとも言えない部分もありますけど…………

 あの患者さんからは生きようとする気力が感じられません。

 王族の一員としての人気取りサービスみたいなものがあるんです。

 病院を回って、戦場でケガした人とかを魔法医師(デアドラ)の力で癒すんでーす。

 お仕事ですし、感謝もされるから気持ちのいいお仕事なんですけど…………

 でも…………

 一線を越えてしまった人、もう魔力(プシュケー)を送っても回復しない人も混じっていて。

 そんな人は見れば分かるんです。

 あ、もうこの人ダメだな……って。

 セタントさんも同じです。

 あたしには…………彼はもう回復しないように思えます…………」

この作品はカクヨム様にも投稿しています。

そちらの方が先行していますので、先が早く読みたい方はこちらへ。

https://kakuyomu.jp/works/16817139554585514621



YOUTUBE様にてこの小説の朗読動画/オーディオブック投稿中です。

心の広い方はチャンネル登録して下さると最高です。


https://www.youtube.com/@%E3%81%8F%E3%82%8D%E3%81%AD%E3%81%93%E6%95%99%E6%8E%88%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9C%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%89


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