第2話 お義母さん?
そうなのである。村で目が覚めた俺は、牛の暴走が襲ってきそうと言われて、落とし穴を作成した。前世の知識に従ったのである。
牛が暴走するとプロのカウボーイでも止める事は出来ない。上手く誘導して崖から突き落とす。
何処で習ったのか覚えていない。多分テレビ番組の類であろう。
それは上手く行った。
スァルタムさんや他のナイトが来た時には、魔物牛は全滅していた。
危険が去った事を゙知った村人たちは狂喜乱舞した。
「さっすが、スァルタム様!」
「クァルンゲの雄牛が100体いても、恐れるもの無しだぜ」
「ちゃうちゃう。
俺じゃねぇよ。
イズモってヤツがやってのけたのさ」
「スァルタム様じゃ無い?」
「イズモって……まさかウワサのイズモ様?!」
ってな訳で俺は宴の中心に引っ張り出された。人々がみんな乾杯して、俺にも次々ワインを゙注ぎに来る人が現れる。
あのー、あんまりお酒は得意じゃ無いし。ワインって確かアルコール度数も高いんじゃなかったっけ。
遠慮したかったのだが、嬉しそうな人たちがどんどんやって来るのだ。全部断るのも場の雰囲気を悪くしちゃいそう。
「ちょっとで良いです。
あぁあぁ、そんなに注がないで」
そして肉の焼けるいい匂いがそこら中に立ち込める。
牛肉。
焼肉の王様、バーベキューの主役である。その牛肉が呆れかえるほどあるのである。
クァルンゲの雄牛であってたかな。多数の死体となった魔物。みんなして運び上げた。
「こんなには食べきれませんよ」
「良いじゃねぇか。
悪くなる前に、食えるだけ食っちまおう!」
スァルタム・クラインさんと村人たちが盛り上がって、牛を解体しては焼いている。俺は革と角を少し分けてくれと頼んである。
「もちろん、イズモ様の物ですから」
「と言うか、ホントにこのお肉、私達が無料で貰っちゃって良いんですか?」
「商人にでも売ればひと財産になりますよ」
てな訳で少し肉も貰う事にした。でも生肉は怖い。妖精のマントに入れてしまえば、食材は傷まない。そうグラシュティグさんに聞いてはいるが、でもなー、何処まで本当やら分からない。
村では燻製を作ったりもするらしい。牛のベーコン。燻製肉を゙貰う。
スァルタムさんはまだ半生だってのに、平気で口に放り込む。
「うめぇ!
ジャンジャン持って来てくれ」
確かに木の串に刺して、火であぶった牛肉からは脂が流れ落ち、凄まじく良いニオイを放っている。
俺にも串が渡される。
「ありがとう。
すいません、もう少し良く焼いた方を゙貰えますか?」
スァルタムさんと同じ赤い部分の多いレア肉を゙貰ったのだが、取り替えて貰った。
だって。
魔物の肉なんだよね。魔物の成分が残ってたりしたら、どーするの。
もちろんジョーダンである。
魔物成分なんてモノがもしホントに在った場合、焼いたらなんとかなるなんて保証は何処にも無い。
それでも、まー、気分で良く焼いてあった方が良いや。
焼いた牛肉は少しばかり歯ごたえがあったもののメチャ美味い。
年上の女性が持って来てくれた。少しの塩と香りづけ。
「焼く時に香草を゙巻いて蒸し上げているんです」
「美味しい。
やっぱりアイフェが焼くとそれだけで違うね」
クーが目を輝かせている。
女性はクーの知人であるらしい。
「紹介するよ、イズモ。
アイフェさん。うちの屋敷の専属料理人なんだ。
でも単に使用人じゃなくて、幼かった私を゙育ててくれた乳母でもある。
だから、家族の一員とも言える女性なんだ」
なんと、クーの育ての母親?!
それは…………ついに来てしまったのか。
お付き合いしている異性の家族に面会する瞬間。
俺の心臓がいつもより煩く動き出す。鼓動が早まり、焦った感情が顔の表面に出てい無いか、凄く気になってしまう。
「あ、あのその、私はイズモ。
イズモ・ハタラクと言います。
クーさんにはいつもお世話になっていて…………」
俺は頭を下げつつ、常套句を並べて何とかしようと思ったのだが。相手は俺の言葉なんか聞いちゃいなかった。
「まー、クーお嬢様。
家族なんてもったいないですわ。
それでっ!
先ほど、スァルタム様が仰っていた、旦那を連れて来たってのはホントウなんですか?
水臭いじゃありませんか。
結婚するのになんの連絡も相談も無いなんて。
私だって、一応はアナタを育てた女なんですよ」
「いやっ!
アイフェ、 結婚はしてないっ!
落ち着いて、相談は私もしたいと思ってたんだ」
「……結婚していない……?……
まさかと思いますけど……この男性、アナタの体だけ弄んで、そのままオサラバする気なのでは…………
イズモと言う方が何やらスゴイ人だとウワサは私だって聞いていますが、それだってどこまで真実だか。
クーお嬢様は男の事を知らないでしょう。
不安ですわ」
「待って、待って、アイフェ。
色々説明するし…………
本当に相談もしたいんだって。
…………そのつまりイズモとは……恋人に近い関係にはなれたと思っているんだけど……でもその、今アイフェが言った「体だけ弄んで」みたいなのが……まだ……無くて……だから、そこも相談したいって言うか…………」
アイフェさんと呼ばれた女性が俺の顔を睨みつけて、言うのである。
「なんですって?
恋人になったのにお嬢様の体に手を出していない?!
ちょっと!
アナタ、イズモさん。
私が手塩にかけて育てた、この美しいお嬢様のどこが気に入らない、って言うんですかー--っ!!!!」
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