第64話 ドルイドとは
ミューギンちゃんが話すのを俺とクーは聞いている。
ケルちゃんが引く馬車の荷台にミューギンちゃんとクーはいて、厚い布地から顔を出している。俺は御者席。実際にはケルちゃんを御すなんて事はしていなくて、単に座ってるだけじゃん、とゆー見方も出来るが。
一応街道を移動しているのだ。他の旅人だって行き来している。御者が誰も居なかったらビックリするだろう。
まー、鹿の角を見ただけでみんなビックリしていて、二度見している旅人も多いのだが、細かい事は気にしないでいこう。
ミューギンちゃんは話が上手い。フェルガさんの様に論理的に説明するわけでは無い。友達のように気楽なしゃべり言葉で、ポンポンと話していて、それでいてこちらの顔色を伺いながら、意味が分からないとなると、サッと説明を差し込んでくれる。そういった気づかいに長けている。
何も考えていないお気楽少女の様なフンイキだが、実際には俺なんかより頭が良いんじゃないだろうか。
「あたしは……実は呪術師の家系で、魔法医師なんですけど……
それ以上に伝承詩人になりたいと思っていたんです。
でも今伝承詩人って職業無いですし…………
そしたら 舞踊劇の脚本家かなって」
正直、俺には意味がサッパリである。単語と単語の意味がつながって行かない。
そんな俺の顔色を見て、サッとミューギンちゃんは言葉を足してくれるのだ。
「魔素を魔力に変えて使える才能を持った人間が呪術師か対魔騎士です。
頭脳派、武闘派みたいなカンジでしょうか。
対魔騎士は対魔騎士ですけど……
呪術師はその中でも枝分かれするんです」
魔力を使える通常の人間に無い能力を持った存在。
それで魔物と戦うのが対魔騎士。
呪術師の方はもう少しフクザツ。
その力を人々の生活に役立てる、ケガをした人を治療する魔法医師。
魔法を使って戦う人間もいる、対魔騎士のように直接戦うのではなく、兵士を強化したり、援護するこれが本家本元呪術師。
ただ一言呪術師と言ったら、この戦闘系呪術師。
伝承詩人はどうやら法律家ちっくな存在らしい。各地の伝承や知識を蓄え、王に進言する賢者。もしくは裁判官や弁護士ちっくな役割を持っていた。
現在では伝承詩人を名乗る者はいない。ほとんど貴族になり替わった。王に進言する臣や、軍で知略を振るう参謀となった。
そんな訳で彼女は伝承詩人に憧れていたのだが、魔法医師となっている。
呪術師の家柄として、戦闘系の呪術師になるか魔法医師になるか、どちらかは選択しないと居場所が無いらしい。
いろいろ大変なんだな。
そういえば……舞踊劇の座長うぃるっちが彼女を紹介する時。
コナータのお偉いさんとか、クイーンメイブの末の妹とか。
そんな事を言っていたような…………
コナータってウルダと戦っているって言う国じゃん。そこのクイーンてことは……敵国の王女様……?!
そんな雰囲気の少女では無いけど…………もしかしてそうなのか。
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「んじゃな」
「待て、待て待て待てーーーい。
スァルタム・クライン、勝手に軍から離れる事が許されると思っておるのか?」
「カスバドさんよ、勝手じゃねぇ。
キチンと大将のエメルには許可もらったぜ」
「なんだと、聞いておらんぞ。
呼び捨てにするな、エメル王女殿下と呼ばんか」
「兵隊もジャマだから連れてってくれ、ってよ。
だから100人ほど護衛に残して、しょうがねぇから後は連れてくぜ」
「バカな、兵を無くしてどうするんだ。
あのアホウ姫め」
王女殿下と言う敬称を忘れてるぜ、と男はイチイチ突っ込んだりはしない。面倒くさい。
相手は呪術師。本当に戦闘に役立つかは知らないが、王の勅命を受けて参謀をやっているカスバドなのである。
「待て、半分は残していけ。
1500人…………さすがに多いか。
500人置いていけ」
「別に1000でも2000でも置いて行くけどよ…………
良いのかい?」
「こちらが本隊なのだ。
500人以下でウルダ王の軍隊と名乗れるか」
「あいよ」
スァルタムはカスバドを置いて、その場を立ち去る。
それなりの年齢なのだが、若々しい精気を放つ男。ヒゲを剃れば、もっと若く見えるかもしれない。しばらく剃っていないヒゲが伸び放題になっているのだ。
兵士がたむろしている中を抜けていく。
兵士と言っても、自衛隊や近代軍隊を想像してはいけない。ここにはいないイズモ・ハタラクが見たら、「兵隊?! 山賊でしょ」と言いそうな男どもの集団。
「スァルタムだ」
「|対魔騎士の中の対魔騎士」
兵士が騒めく。本物のスァルタム・クラインを目にするのは初めてなのだ。
「この軍の副将になったって言うからよ。戦う所が見れるかと期待したってのに、いまだに鉱山にすら辿り着いていないんだからな」
「スァルタムはいったん軍を離れるって言うぜ」
「うそっ、何処行っちまうんだよ」
「一度クライン領に戻るんだってさ」
兵士達の間にため息が漏れる。
「そりゃ、そうだ」
「やってられねーよな」
「俺達だってとっとと帰りたいぜ」
3千人の兵士達が向かうのはスレイブドナードの鉱山である。王都エヴァン・マハから出発し、本来街道を強行すれば一週間程度の距離である。3千人の大所帯ゆえ、宿泊場所を選んだり、軍の編成や魔物との戦いに時間を取るとしても10日から15日。
ところが兵士達はすでに一ヶ月も途上にいて、しかも進んだ距離は半分程度なのである。
兵の中には村から強引に連れて来られた者もいる。敵の首を取れば報奨金が貰えると自分から志願した腕自慢やらゴロツキに近い者まで入り混じる。そういった者たちは、メシは最低限出る物の、戦う事無くもちろん報奨金も無い現実が不満であった。強引に戦場に送られた村人にとっては用が無いなら帰りたいに決まっている。
兵士達にイラだつ雰囲気の者が多いのも当然と言えた。
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