第18話 チャラ男
「対魔騎士を名乗っているなら、専門家だろう。
キサマらで何とかせんか!」
フェルガと名乗る偉そうな女に言われてしまった、二人の対魔騎士である。
「フェルディアッド、何とかする方法無いんか?
あのデカブツの弱点とかよ」
「ローフ、シアバーンなんて遥か太古の怪物やで、俺かて弱点なんてしるかい。
フツーに考えたら、木なんや。炎に弱いやろうが…………
ナナカマドの魔物やろ。
火と相性の良い樹木なんや。簡単に燃えてくれそうにないわ」
ローフとフェルディアッド、背の高い険の在る顔つきの男と金髪の美青年。二人の対魔騎士だって逃げたくて、逃げた訳では無いのである。
多数の人間の前で監視の男に対魔騎士と言ってたくせに逃げて来やがった、などと言わせておきたくは無い。
それでも。
「あのサイズは反則やろ。10メートルはあるで」
「なんせ年数重ねた木なんや、そのくらい在ってもフシギは無いわ」
10メートルの巨人である。10メートルの高さから木のこん棒が振り下ろされるのは怖い。メッチャ怖い。
魔物相手に戦ってきた二人でも怖い。
「くっそ、見掛け倒しで実は弱いゆー可能性に賭けてみるか?」
「やめときたいんやけどな。
やらなしゃーないやろか」
フェルディアッドとしてはバカでかい魔物なんぞと戦いたくは無いのである。
あーゆートンデモないのはスァルタムやスカアハ師匠のようなトンデモ無いのに任せてしまいたい。
しかし周囲に人が集まっている。鉱山施設の人々。
「あの二人、対魔騎士なのか?」
「ホントに対魔騎士っていたんだな。俺半分お伽噺だと思ってたぜ」
「魔物が居るんだもんよ。対魔騎士だって実際にいるだろ」
「なら、あのデカイのも倒せるのか?」
「そりゃ、そうじゃねーか。対魔騎士だってんだから」
ムチャ言うんやない!
魔凶鴉かて、半豚半馬かて、普通の兵士であれば10人がかりでやっと倒す魔物なのだ。
それを1対1で倒せるなんて、俺ら超人やろうが。
そやけどな、あんなん対魔騎士が二人いたって倒せるかい!
フェルディアッドは声には出していない。胸の中で言っているだけで、言葉にすることで我慢している訳である。
しかし、ローフの方はガマン出来なくなったらしい。
「行くで、フェルディアッド。
さすがに一太刀も浴びせんで、逃げたままやあかん。
対魔騎士としてカッコがつかんやろ」
フェルガと言う女は見張りの兵士と話している。
少しキツイ性格ではありそうだが、外見はフェルディアッドの見たところ一級品。美女中の美女、年齢的と言い、熟れたプロポーションと言い、自然に溢れ出る色気と言い、正にフェルディアッドのストライクである。
「イズモとクー・クラインが勝負の為に山に出て行った?
だから!
何故そう言う話を私に報告せんのだ!」
「すんません。
あいつが……止めようにもイズモのヤツが勝手に決めて出て行っちゃったんで……」
「そうだね。
イズモってば優柔不断に見えて、何かスイッチが入ると脇目も振らずに勝手に動くよね」
会話に参加してきたのはこれまた女性。細身で美しい外見の女性であるが、下半身が不自然。動物の毛が生えたズボンを履いているのだろうか。
色気のある美女と言うよりは、格好良い女性。フェルディアッドのドストライクとは多少ズレがあるのだが、そのズレがまた良い。たまにはこう言う女性を口説きたい。ベッドで乱れさせたい。
そこまで一気に考えるのが、フェルディアッドなのである。
あの女もイズモの知り合いのなのか。
フェルガ総監にクー・クライン、そして毛皮の女性。美人がやたら多くて、全員イズモの知り合いだと。
「羨ましいやんけ。
なるほど、他に女がいるからクーに手ぇ出してへんのか」
つい声に出してつぶやいてしまうフェルディアッドである。
「とっとと行くで、フェルディアッド」
ローフに言われるものの、そんな事に構う気になれはしないのだが…………だけど、しかし。
「そこのお嬢さん、お名前教えて貰えますか?
あ、私フェルディアッドと申します」
飛び切りの美声を響かせる。コノートなまりは元気の良いキャラには受けがいいのだが、品の良い美人には敬遠される可能性が高い。
「あれ、僕に声を掛けてるのかな?」
「ええと、先ほど勝負の審判を引き受けてくれた方でしたよね。
お名前を聞きそびれてしまったんです」
軽く肩に手を置いてみると、抵抗しない。美女は逃げもせず、フェルディアッドに微笑みかける。
「おやおや、馴れ馴れしいフンイキ。
これはひょっとするとアレかな。
人間の男が僕の事を交尾の相手として見ているのかもしれないのかな」
「こ、交尾?
ちゃいます、ちゃいます。
私はそんな下品な気持ちじゃ在りませんよ。
単に美しい女性を見て、お知り合いになりたい、とそう純粋に思った次第です」
「なーんだ、つまんない。
人間の男をもっと詳しく観察できるかな、と思ったのに」
「あー、間違えました。
実はすっごく交尾に興味あるんや。
お姉さんと交尾出来るんなら、俺死んでもええわ」
一瞬で方向転換するフェルディアッドである。
「キサマ、そこの対魔騎士!
女に声をかけている場合か。
あのバケモノを何とか出来るなら、女くらい私が手配してやる」
言ったのはフェルガ総監である。
フェルディアッドにとってどストライクの方。さっとその手を握る。
「分かったで、ほなフェルガさんがお相手してくれるゆーこっちゃな。
俺、ホンマはフェルガさんが一番タイプやねん」
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