第4話 サウナ
「おーい、ルピナス」
俺はお風呂作れないかなと思って魔法技士の女性を探していた。見つけた彼女は数人の人間と一緒に何か話している。
「ありがとうございます、ルピナスお嬢」
「おかげさまでワインの買取価格も上がったし」
「ぶどうジュースも前より高い値段で引き取ってもらえるし」
「鉱山仕事でこんなに貰えるなんて」
「ルピナスお嬢の紹介のおかげですっ!」
「いや、私は大した事は……
イズモのヤツがワインは飲めないから、ぶどうジュース欲しいと言っただけだな……
しかし、褒められるのは気分良いな。
うむっ、この天才魔法技士ルピナスになんでも言ってくると良いぞ。
わははははっはははははは」
「俺が何だって?」
「わぁっ?!
イズモ、何処から湧いて出た?」
さっきからルピナスの名前呼んでたじゃん。
男の人達は鉱山仕事に出稼ぎに来ていた人達であった。そろそろ春なので、地元に帰って農業の支度に入るらしい。
この鉱山に比較的近い領地の人達で、そいでもって、そここそルピナスの実家だったりするらしいのだった。
「そんなにルピナスの実家、近かったのか?」
「まーな、だからここの仕事に就いたのだ。
フツーだったら犯罪者収容所の仕事だぞ。
私の様な美しい大人女性が着くには向かない場所だろ」
ルピナスが美しい大人女性かはともかく。この人達は元々ワインを作っていて、鉱山収容所に納品したりもしていたらしい。
俺、ワインはあまり飲めないから葡萄ジュース無いの? とそう言えばフェルガさんに言った様な気もする。
買取価格も以前は、国王の施設に提供するのに金を取る気か、とやっすい値段で買いたかれていたらしい。それに関しても近隣から食料集めたいなら高く買えばいーじゃん、とフェルガさんに俺が言ったかもしれない。
「にしてもビックリする程、鉱山労働の報酬高かったそうだぞ。
あのフェルガ・マクライヒが良くそんなに出したな」
魔法石を幾つか渡しただけで、フェルガさんは狂喜した。予算上の問題は何も無いと言いだしていた。
それって、俺が持ってる中では比較的小さいヤツなんだよね。親指大の魔法石。魔法石【大】と今後は呼ぼうか。拳大の、魔法石【特大】をもっとたくさん俺が持っているのは現状ナイショ。
だって……フェルガさん五月蠅そうなんだもの。
親指大のが地下坑道でだけ手に入るとゆー話になっている。
「うん。労働者の待遇改善をお願いしたら、フェルガさんが気持ちよく引き受けてくれたんだ」
「…………アカラサマに怪しいな。
あの女がそんな親切なワケは無い。
どーせイズモが何かしたんだろうけど……まあいい。
あまり詮索しないでおく事にする。
男に詮索し過ぎないのが良い美人大人女性の条件だからな」
俺はその出稼ぎ労働者の人も交えて風呂に関して訊いてみる。
「風呂……と言うと蒸し風呂の事か?」
「ここには無いみたいだけど……ちょっとした村なら大体あるもんだよ」
「蒸し風呂で体を温めて、川で冷やすんだ。
最高に気持ち良いよな」
蒸し風呂ってサウナの事かな。日本のイメージのお湯に浸かる浴場はあんまり普及していないみたい。
「蒸し風呂はな。
良いんだが、男女一緒の施設が多くて……
分かれていないと私のようなセクシー大人は入れない」
ルピナスの台詞である。
一応浴衣もあって女性はそれを身に着けたりもするのだが、ほとんどの男はそんなの着けない。男のムサイ裸に囲まれるのはゴメンとゆー話らしい。
お湯に浸かる風習は一般的には無いのだが、山の近くの温泉地などではお湯に浸かる事もある。湯治で傷ついた体を癒す風習もあるらしい。
サウナ施設を作るのって……お風呂を作るよりメンドくさそーな気がするけど……酸素が足らなくならない様に換気を考えたり、熱効率やらなんやら。
「あんなの単純だぞ。
木で小屋作って火を燃やして水を湯気にすればいいだけだ」
むう、恐るべし異世界。
木で出来た小屋ならそこまで密閉空間にもならない。熱くなり過ぎたら扉を開けて外気を入れる。寒くなったら火を強くする。体があったまりすぎたら近くの水場に飛び込む。それだけで全部オーケー、万事解決。
そんな訳で俺は建物の隅にサウナ施設を作った。水場も鉱山の水から冷水を引き込んだ。薪を燃やすのが手間だなー、と思っていたが赤魔石で良かった。水をガンガン蒸発させて、サウナ部屋を熱気で包む。後は入るだけ。
「ありがとう、イズモ。
蒸し風呂で体を温めて、水で洗い流すって良いね。
体の芯があったまったし、サッパリもしたよ」
クーが言う。
うるうるのつやつやのお肌。普段から美少女なんだけど、今はそれが5割り増し状態。
俺も交替で入る。
うー、頭が暑さでクラクラするまでガマンして、冷たい水を頭から浴びる。
きっもち良いーーーーー!
なんとなく体の中の老廃物が全て流されて出て行ったようなサッパリした気分。冷水で頭もシャッキリしている。これが整うってヤツだな。
ベッドに腰かけていたクーがサウナから出た俺に近づく。
最近できた二人の習慣である。
お風呂が終わったらハグをする。
言うな!
何をしとんじゃ、とか言わないで欲しい。
必要なの!
この前まで一緒のベッドで寝てたの。
体がくっついたり抱き合ったりしてたの。お互いの呼吸と体温を感じて眠ってたの。
お互いを感じないと気持ちよく熟睡出来ない気がするんだよ。
俺だけじゃないの。
クー・クラインも一緒なの!
そんならもういっそ同じベッドで寝ちゃえば、とゆー説もあるんだけどさー。その場合、多分俺の理性が崩壊するの。
それに日本ではあまりしないかもだけど。
海外ではハグもキスも親愛の表現として家族や友人と普通に行うものだったと思う。ここも日本とは常識が異なるので多分おっけー。
なので。
俺達は腕をお互いの体に回して抱き合う。
その状態が極めて自然であるかのようにいつまでも抱き合っていられるような気がする。
体が溶けて、精神の中にあるわだかまりや余計なストレス、そんな不要なモノすべてがすーっと無くなって行くような気持になるのだ。
とゆー訳でサウナ上がりの体をお互いにハグしている俺とクーなのである。
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