第11話 おかしな妄想
「良いのか、放っておいて」
「仕方無いだろ」
ヒンデル老は俺に問いかけるが、本人にああ言われては。
俺は怪しげな集団から新入りの少年を助けようと、一芝居打ったのだ。しかし、助けようとした少年に否定されてしまった。その場をそそくさと逃げ出した俺なのである。
「セタント・クラインが心配じゃ」
「誰だって?」
「なんじゃ、知らなかったのか。
あの新入りの少年の名じゃ」
「良く知ってるな」
「有名人じゃ。
間近で見るのは初めてじゃが、この国の人間なら大抵知っておる……
そうか、999番、貴方は…………
前に話したじゃろ。
クラインはこの国でも指折りの貴族じゃ」
そう言えば聞いた気がする。有能な貴族だが王様でも物怖じせず意見するので煙たがられているとか。
騎士の中の騎士とか。
「そうじゃ、どこかで一線越えて王の気に触れたんじゃろ。
難癖付けられたんじゃろて。
跡取り息子がこんな犯罪者の放り込まれる鉱山に送られるとはな」
「……ひどい話だな。
その貴族とやらも良く従うモノだ」
「逆らうのなら、反逆者として一族郎党捕まる覚悟が必要じゃ。
王の機嫌を取っておけば、いずれ恩赦を願う事も出来る」
なるほど。そんな仕組みだから王様が好き勝手出来るんだな。
俺も社長だった時に役員の息子を人質に取れれば…………
ってそんなマネ出来るモノかーっ!
お巡りさんが許さないし、子供を人質に取る俺の方だって精神的にストレス、マッハで胃に穴が開きそうだ。
そう言えば、戦国時代の武将は同盟を組んだ相手の子供やら嫁を人質に預かると聞いたな。アレは人質を預かる方の大名はストレス感じたりしなかったんかな。
もう少しヒンデル老の話を聞きたかったが、ゆっくりと食事を取らせてくれる施設じゃない。
俺達は「グズグズするな」と監視員に怒鳴られながらメシを胃に流し込み、鉱山へと向かった。
「少し様子を見てやった方がええと思う」
「心配し過ぎじゃないか」
ここでは監視も見回ってる。鉱山を出てからコインを奪われるのを防いでやればいいだろう。
老人は心配性だな。あのくらいの少年は孫にでも見えるのか。
それとも、俺が考えてるのとは別の心配?
もしかして…………
あのセタント・クラインと言う子は相当な美少年だった。
真っすぐな金髪に華奢な体つき。スカートでも履かせれば美少女と見間違う。
ここの労働者どもは女日照り。何日も何年も女性と触れあっていないハズだ。その中にあの美少年をブチ込んだなら…………
おおうっ、なんてこった?!
LGBTの概念が当たり前の日本人の記憶を持ちながら全く考え付かなかった。
俺の頭の中はパニック。
あのセタント少年が女性の服装でオッサン達に襲われる映像まで浮かぶ。
ミニスカートで作業させられる美しいセタント。その絶対領域に労働者達の視線が集中する。近くを通り過ぎる男がその度に尻を撫でて行くのだが、セタントに抗う事は許されない。ピンク色の唇を歪めて泣き出すのをガマンするだけ。
監視官のスキを狙う男ども。「お前見張ってろ」「男だろうが女だろうがこれだけキレイならどうでもいいぜ」「穴はあるんだからな」「げへへへ、おじちゃんの固いモノを今くれてやるからな」「俺にも、俺にもやらせろ」
はたまた。
スクール水着を着せられた金髪の可愛い子を複数の中年男が抑えつける図とか。「いや」か細い声で抗うセタントに男達はぬるぬるした液体をかけていく。と細い体のラインがますます露わに、胸の頂きには小さなぽっちまでがハッキリと。
あーーーーー!!!
いかんいかん。
なんだか前世の怪しげなコミックの影響か、おかしな妄想が混じっている気もするが。あの美少年が中年男どもにそんな目に合うのを黙って見過ごせるモノか。
「おい、999番。
なんだか目の色が変わっとるぞ。
やたら興奮しているみたいだが……どうした?」
「子供がひどい目に合うのは見過ごせん。
救いに行くぞ!」
「そ、そうか……
力が入り過ぎな気もするが、良いじゃろう」
俺達は作業しているフリをしつつ、鉱山の坑道を移動する。
作業員66番とやらが仕切る集団の作業場に近い場所に陣取り、鉱石を掘る。掘り返した鉱石を運びながら様子を窺うと、金髪の小柄な人影が見える。どうやら間違いは無さそう。
「フム、考え過ぎだったんじゃないか。
今のところフツーに作業を教えているみたいだぞ」
「まだ、監視官が多い時間帯じゃからな。
午後になると奴らも休憩しよるから、目も行き届かん」
そんなものか。とりあえず、俺は鉱山労働に精を出す事にした。こっちだって作業を進めないと監視に見咎められる。
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