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月光の針魔王(リトライ)  作者: 爺増田
異国の密林
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暁-1

 暁 伊織(あかつき いおり)妖守 鋼一(あやもり こういち)と、針ニ(しんじ)太刀合(たちあい)をじっと、見ていた。


 まだあどけなさの残る双子の少年達はそれぞれかなり太刀筋もよく、伊織は、


(剣の才能って、やっぱ遺伝するんちゃうん?)


 そう思って見ていた。


 彼女の両親は見える者(・・・・)達であり、当然、伊織も一族の掟を教え込まれてきたが、3年前の(あやかし)討伐に於いて、ふとした気の緩みが原因で母は死に、父は再起不能となった。


 伊織が、大阪から岐阜にやって来たのは、その事件の後、“そはやの(つるぎ)”の斡旋で神乃家に預けられたからだ。


 元来勝ち気な性分の彼女に、人に害を為す(あやかし)に対する復讐を兼ねた討伐という明確な目標が出来た。


 以来もっと強くならねばならないと、と、神乃道場でがむしゃらに鍛練を積んで来た。


 そのようにして、13歳で、単身岐阜に来た、暁 伊織も孤路狼(こじろう)と、真言(まこと)の元で、妖守兄弟と一緒に暮らし、修行に励み、既に16歳になっていた。


 しかし、ある日を境に双子達と真言は道場でも、屋敷でも見かけなくなった。


 美子(よしこ)の作る食事をテーブルで囲んでいる時にも、“ 騒がしい双子とそれを(たしな)める真言 ”がいない光景というのはとても寂しかったが、孤路狼と美子は頑なに口を閉ざし、誤魔化したり、話をはぐらかしたりした。


 そう、“そはやの(つるぎ)”から箝口令が敷かれていたからだ。


 2ヶ月後くらいに双子が帰って来たが、真言は相変わらず姿を見せなかった。


 そして明らかに二人の雰囲気が変わっていた。


 以前のような、おちゃらけたところは無くなり、無口になり、眼光は鋭い。


 二人共、怒気とも悲哀とも言えぬ物を纏っていた。


 特に針ニの外見は、驚く程の変貌を遂げていた。


 左顎の頬骨に沿って、骨まで深く抉られたような傷が出来ていた。


 見た目は、良くできていて、“パッ”と見は、分からないが、彼の左腕はおそらく義手だ。


 道場でも、針ニはずっと長袖のシャツを着ていたが、それを『何故か?』などと軽々しく尋ねられるような雰囲気ではなかった。


 まだまだ、双子より、四歳年上の分、技も術も格上の伊織だったが、以前のように姉御肌で上から物を言えるような様子は無くなり、ヒリヒリとした空気が二人を包んでいた。


 結局真言は帰って来ず、伊織にも聞こえるように、食事の席で美琴(みこと)に父は交通事故で死んだのだと伝えた。


 伊織は、(ああ()られたのか…)


 と、思った。


 事故で死んだとしても、(あやかし)に殺されたとしても、真言はもう帰って来ない、という事実を突き付けられた。


 退魔師や陰陽師をやるということは、そういうことなのだ。


(儚いなぁ…)と、伊織は思った。


 そうして2年が経ち、18歳になった伊織は大阪に帰った。


 鋼一と針ニも中学二年になり、それぞれの思う道を歩みだした。

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