鬼岩-6
「ありゃりゃ…どういう組み合わせか、さっぱり分からんのぉ。」
天狗がとぼけた声を出した。
「嘘だね。あんたの眼なら俺達が、ここに来る遥か彼方から見えてた筈だ。」
「それに《おとろし》が、帰りやなくて行きに落ちてきたってのは、そういう事やったんやろ?」
針ニが、そう言うと、
「ホッホッホ…お見通しか…結局二人で、闘うのかえ?」
と、天狗が答えた。
「いや…今日はそういうつもりで来たんじゃない…」
鋼一が、言いかけると、山童が遮って話した。
「月子が昨日拐われた。それで、この男の命と引き替えに…」
そう、言いながら鋼一を指し示すと、
「鬼岩におるらしいんやが…結界を張っとるらしくて見えんし、入れん。どうすりゃええんか教えてくれんか?」
と、天狗に尋ねた。
「《関の太郎》か…あれは忠告してやったに。惚けとるでじゃ。わしも昔人間と一緒に暮らしたが、悲しい結末しか産まん。そもそもわしらとは寿命が…」
説経が長くなると思った山童が、話を遮って悲痛な面持ちで訴えた。
「後でゆっくり聞くで!早う教えてくれ!」
「わかったわかった。そう急かすでない。」
天狗が続けて言った。
「結界を破れる術師がおれば簡単な話じゃが、お前達の中にはおらん…みたいやな?」
「かといってワシが直接人間に手を貸すわけにはいかんしのぉ…」
天狗はしばらく考えて思いつき、柏手を打った。
鋼一と針ニも、ほぼ同時に、
「じいちゃん…」
と、言った。
どうやら、それが一番の近道らしいので、渋々神乃家に電話して鬼岩のドライブインで1時間少し後に合流した。
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駐車場にベージュのカリーナバンが停まると運転席から妙に口髭の長い、長岡外史のような老人が、出てきた。
助手席からは、美琴があさっての方を見ながら降りて来て、“バンッ!”と、勢いよくドアを閉めた。
そのツンケンした態度からすると、相当ご立腹なようだ。
鋼一と針ニは、美琴がここに来ない様に努力した。
それは孤路狼の願いでもあった筈だった。
しかし…しかしだ。この老人は孫娘のお願いをどうしても断れないという性を、持っていた。
それが解っていたからこそ、双子は“孤路狼には相談しないでおこう”と、暗黙の了解を取り決め、すぐに出かけて来たのだ。
鋼一と針ニの恨めしそうな視線を受けながら孤路狼は、
「これはじゃなぁ…今回はワシも行く事になったし、戦力も多そうだから連れて行ってもええと思ったんじゃ」
「勿論戦闘はお前らに任せてワシは美琴の警護に専念するで安心せぇ」
と、弁解した。




