鬼岩-1
岐阜市からずーっと走って来た国道21号線の直線が突然急勾配の上り斜面になり、更に右に急カーブになる。
ここが次月峠の入り口だ。
まだ急勾配は、果てなく続くが、右カーブの終わりと、共に歩道橋の下をくぐると、急斜面の道路の右側に鬼岩ドライヴイン。
左側の切り立った崖の上に、屋上に空中ブランコとかの遊具を備えた、今は既に廃業しているボウリング場がある。
ドライヴインから歩道橋を渡り、細い小径を下ると鬼岩温泉街だ。
川の両側に競い合うように旅館やホテルが4軒程建っている。
そして…一番奥に国定公園鬼岩の入り口がある。
鬼岩とは、一つの岩の事ではなく、数百万年前からある巨大な花崗岩がゴロゴロと重なりあっている場所のことである。
とにかく巨大で全ての岩が、想像する3倍はデカイので思わず絶句して見上げてしまう程だ。
急峻な遊歩道を登って行く道もあるが、もう一つ岩くぐりという過酷なルートがある。
ただし、閉所恐怖症の方はやめた方が賢明だ。
何故なら岩くぐりとは、谷を流れる川の上を花崗岩の巨岩が積み重なり通路や部屋のようになっている所を通るからである。
非常に狭く、圧迫感のある暗くて恐ろしい岩の隙間を這いつくばるように進まなければならないからだ。
下流の入り口がある場所は、鬼の俎板岩と呼ばれている縦×横×高さ、7m×20m×1m程のまさに俎板の様な長方形の岩の上を通って、反対側から俎板の下を這ってくぐるとようやく辿り着く。
川が“ゴオゴオ”と音を立て、冷んやりとした岩の隙間をくぐって行く。
ただでさえ表面に起伏のない花崗岩が永き年月湿度が高い環境下に置かれていた事もあり所々…特にあまり踏まれないところは苔むしている。
そういう場所をうっかり踏むとたちまち滑り、岩の隙間から滑り落ち、その衝撃で頭を打てば即死。
もし、足から落ちても川から這い上がる術はなく溺死。
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この時点(1980年代後半)だけでも筆者が知るだけで酔ってくぐるという暴挙を冒した観光客が二人亡くなっている。
以前にはもっと居ただろうが、昔は記録に残っていない。
1990年代以降にも、少なくとも二人亡くなっている。
その内の一人はまだ小さな少女だった。
筆者はその時、脳梗塞を発症する十数年以上前のことで、ドライブインの中の飲食店で働いていた。
ある日(季節は覚えてないが…)の日中電話が鳴った。
「岩くぐりをしていて、少女が岩の隙間から転落したからすぐに来てくれ!」と、言う電話だったので、店から飛び出し現場へ向かった。
ドライブインから公園に向かうのには歩道橋、小径を通る以外にも、一度国道に出て左に50m位行った所で、鋭角に右折する道もあるが、先に行っても旅館とホテルの駐車場しかないので通常時には使わない。




