刺青の男-7
「お前達も東濃迄一緒に行くから。」
三人組に、鋼一が、受話器を置いてから言った。そして、
「…と、言うわけで…7~8人以上乗れる車をレンタルしてくれ。今すぐに。」
と、針ニに言った。
「今回は鬼が相手だから、ハンクも用心してくれ。」
「ミコちゃんは悪いけど、留守番ね。」
鋼一が指示を出すと、
「チョッ…ちょっと待ってよ!」
美琴が、即座に文句を言った。
「私も一緒に行きます。」
「今の話や山童さんの話を聞いて、なんで私が留守番すると思えるんですか?」
「…悪いけど…って、言ったけど?…」
と、鋼一が言うと。
「あ~話が通じない。」
美琴は頭を抱えた。
「要約すると、“危険だから連れて行けないし、足手まといだから、待ってて”…ってことだよ。」
針ニが、分かりやすく言い直した。
「じゃあ何。ハンクとその三人組は足手まといじゃ無いっての?妖も見えないのに?」
美琴が、食い下がる。
「ハンクは見えるし、十分闘えるよ。いつも針ニとやってるしね。」
「三人組は向こうに着いたら、当然車から降ろして、置いてくから。」
鋼一は続ける、
「さっき、青柳会の会長と話したら“エンコ詰めさせて侘びを入れさせる”って。」
「それで、そんなん要りませんって言ったら“何にも無しってのはケジメがつかんから、せめて暫くの間、奉公させてくれ”との事だったんで何処かで暇を潰して適当な話を作って帰ってくれ。」
三人組に会長との、約束をあっけらかんと伝え、尚且つ“嘘をつけ”と、言った。
美琴は納得が行かない様子で、頬を膨らませ、
「大体何よ。その“ 針魔王 ”って?」
と、全然関係無いが、誰もが聞きたかった事をズバリ聞いた。
「………………」
鋼一が、黙っていると、
「あんたが言ったんだから、ちゃんと説明しなさいよ!」
と、美琴がトランクスに詰めよった。
鋼一の顔をチラチラと上目遣いで伺いながら、トランクスが説明をする。
「え~まず、青柳会の者でしたら針魔王伝説はみなさん存じ上げてます。」
「針魔王伝せつぅ~?」
伝説と聞いて、途端に胡散臭い話になって美琴、針ニ、ハンクは訝しい顔になった。
「事務所で毎朝、朝礼をやるんですが。神棚を拝み、訓戒を読み、組長と針魔王さんが並んで写ってる写真に手を合わせる…っていう流れになってます。」
「それでですね、伝説ってのは、入会した時から毎日のように聞かされる訳ですよ。」
「そりゃあそうですよ、組長と親しげに写ってる若い男なんて違和感有りまくりですから、絶対に聞きますから。“あれって何方ですか?”って、ね。」
トランクスも段々調子が上がってきて。高座に上がった咄家みたいに成ってきた。
「あっしが入る2~3年前だから、今から7~8年前の事だと思うんですが…」
「兄貴分の一人が、借金の肩に女を一人、風呂に沈めて…まあ…よくある話なんですがね…針魔王さんが、その娘を取り返しに、たった一人で乗り込んで来たらしくて…」
「その時たまたま組長も事務所に居たらしいんですが、針魔王さんが、とんでもない早さで針一本で、8人居たヤクザ者を次々動けなくしていったらしくて」
「そりゃ、無条件降伏ですわ。」
「その時の鋼一さんの形相が、鬼気迫ってたらしくて組長が“針魔王って名付けたんですが、昔の特撮ヒーローで“怪傑ハリマオー”ってのがいて、だじゃ…語呂合わせらしいです。」




