刺青の男-6
誰もが,口にする言葉を見つけられなかった。
美琴が、両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす声だけが、静まり返ったBARの中に響いていた。
痛々しいその姿を見かねて、鋼一 が、声を発した。
「ミコちゃん。騙してた訳じゃ…」
「違うの。」
鋼一の言葉を、遮り。続けた。
「お父さんは私を護って死んだんだ…」
「…そう思ったら、なんか…違うかも知れないけど…距離が縮まった、と言うか…もちろん私のせいなんだけど…」
「ミコちゃん。それはちが…」
「聞いて。」
「私がみんなの後を尾けたりしなければ、鬼に襲われることもなかったんだけど…」
「 “ そうかぁ…お父さんって私を護ってくれたんだ ”って…」
「お父さんのことは、殆んど覚えてなかったんだけど…不謹慎だけどね…なんか嬉しくなっちゃって。」
「おじいちゃん、お母さん、先生、針ちゃん…みんなに護られてたんだな…って、思うと、泣けて来ちゃって…」
「お~ん、お~ん」
今度はハンクだけじゃなくいつの間にか三人組も話を聞いていて、一緒に泣き始めていた。
(なんで、こいつらまで泣いてんだよ…)
針ニが、呟くと、鋼一が、
「あんた達青柳会の人達?」
と、聞いた。
「はい。そうです。」
先程迄の“べらんめえ口調”とは、打って変わって、かしこまった態度で白ジャケット(もうトランクス一枚だが…)が話した。
赤アロハ(すでに、腰にタオルを巻いているだけだが…)も坊主頭も、いつの間にか、かしこまってフローリングの床に正座して泣きべそをかいている。
「じゃあ事務所に電話して、迎えに来てもらってくれ。あ、ついでに着替えも持ってきてもらってな。」
鋼一が、そう言うと。
「…でも…“ 針魔王に、喧嘩を売った ” なんて言えば指の一本や二本では…」
白ジャケット改め、トランクスがそう言った。
「そんなん貰っても却って迷惑…あーもう。なんか、面倒になったら代わって。」
店の電話から、トランクスが事務所に電話して、
「…はい…そうです。喧嘩売った相手が…どうやら針魔王さんの弟さんだったらしくて…」
そこまで話すと電話の相手の上役らしき、人物が、受話器越しにもハッキリ分かる程の怒声を出した。
「てめえ!何してくれとんじゃ!!」
相手に見える訳もないのにトランクスは、ペコペコと受話器に頭を下げた。
「…はい…はい…一方的にこちらがやられただけでして…はい…はい…」
やがて静かになると、トランクスが、鋼一に電話を代わった。
「お久し振りです。……そういう事です。いえ、そんなんはいいんで、迎えに来て貰えません?」
相手も、組長と代わった。
しばらく押し問答した挙げ句、決着がついたらしい。
「そうですか…分かりました。じゃあ2~3日預かります。」
鋼一は、そう言って受話器を置いた。




