表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光の針魔王(リトライ)  作者: 爺増田
惨劇
50/73

惨劇-3

 けたたましく窓を蹴破り真言(まこと)が、部屋の中に入って来た。


 !!


(外の見張り共はどうしたのじゃ?)


 茨木童子が呟くように自問した。


「あの鬼共か?」


 足元の暗闇で誰かの声がした。


「わしらが全て葬ったわ」


 いつの間にか音もなく孤路狼(こじろう)が片膝立ちで、堅一(けんいち)を抱きかかえていた。


 堅一の首に刺さった編み物棒からは、ぽとりぽとりと血が滴っていたが、それを抜けば大量の血液が吹き出すことは自明だった。


「正確にはおれが二匹、あとは全部義父(おやじ)だがな。」


 そう言いながら、真言は、ゆっくりと歩き、破邪の剣(はじゃのつるぎ)を左の掌から現出させつつ、茨木童子との間合いを摘めて行く。


「八体も居て役立たず共が…」


「…いや…気づかせもせず、一刀で葬る技を持っているということか…」


 茨木童子は素直に認めるしかなかった。


「さて。心音(ここね)の身体を明け渡せ…と、言っても無駄じゃろうの。」


「仕方ない。」


 そう言うと孤路狼は心音の腹部に片手で発勁(はっけい)を、放った。


 その威力たるや凄まじく。ゼロ距離からの電光石火の一撃は不可避でもある。


 茨木童子は数m離れた壁まで吹き飛ばされたが、最初何が起きたのか分からなかった。


 膝から崩れ落ちて行く心音の後ろ姿を見て、やっと自分が強制的に弾き出されたことを理解した。


 孤路狼が残った腕で心音を受け止めると、ほぼ同時に真言が凄まじい速さで、茨木童子に斬りつけた。


 まるで申し合わせたような、見事な阿吽の呼吸だ。


 間一髪、破邪の剣(はじゃのつるぎ)の斬撃を(かわ)した、茨木童子は美しい顔を歪ませ叫んだ。


 まさに鬼の形相だ。


「おのれ!よくも我を地べたに這わせたな!この茨木童子様を!」


 茨木童子が自尊心を傷つけられたのは、およそ千年程昔、京の二条大橋での事以来だった。


 渡辺綱(わたなべのつな)の振るう鬼切丸(はじゃのつるぎ)…髭切に酒呑童子の頚を自らの腕ごと取り返された事案だ。


 相当な自信があるのに、見張りを八体も立てるなどの用意周到さもある。


 にも係わらず真の目的、酒呑童子の頸の在りかに辿り着けなかったことが余計に腹立たしかった。


(コイツら一体何なのだ!今までの退魔師連中とは明らかに違う。)


 茨木童子は、そう思った。


(とくにあの大袈裟な髭を生やした年上の男。)(…あいつは危険だ。)


 堅一が、最後に呟いた言葉もあながち嘘吹いた訳ではなさそうだ。


 茨木童子は、そう思った。


 心音と堅一をカーペットの上に、静かに横たえると、孤路狼はゆっくりと立ち上がった。


 そして、両掌を下に向けると眩い光を放った。


 やがて光が収まると共に、それぞれが二尺程の刃を持つ、三尺程の短い薙刀の様になった。


 孤路狼は、二本の柄を繋げると、六尺程の長さの両刃の剣を(こしら)えた。


 流れるようにその剣を構える孤路狼を見た茨木童子は、ゾクリと首筋を走る、悪寒を感じるや否や後ろ向きに跳び、窓硝子を突き破った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ