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月光の針魔王(リトライ)  作者: 爺増田
惨劇
48/73

惨劇-1

晴明(せいめい)様は熟考し、そして結論を出した。」


茨木童子(いばらきどうじ)酒呑童子(しゅてんどうじ)の頸を狙った理由を。」


「この時、平等院の宝物殿にあった、(あやかし)の遺骸は、桓武(かんむ)天皇の時代に坂上田村丸(さかのうえたむらまる)破邪の剣(ソハヤノツルギ)で討ち果たした、大嶽丸(おおだけまる)の頸だけだった。」


「そして、晴明様は、一つの考えに至った。」


「強大過ぎる(あやかし)は、何らかの理由で消しきれずに、何らかの理由で、いずれ復活するのであろう…と。」


「そして、一計を案じた。」


(あやかし)の頸は剥き出しにするのではなく、箱の中に安置し、12年に一度、御開帳の時にのみ、見られる決まりにしたのだ。」


「こうすることで、本物の頸を見える者(・・・・)達が、あちこちに分散し、隠し持つことが可能になった。」


「そして、その後、遺骸は玉藻前(たまものまえ)を加え三体となり、代々選ばれた陰陽師と退魔師の子孫が一組となり、託されることになった。」


「玉藻前も晴明様直系の安倍泰成(あべのやすなり)様が深く関わっており、他の二体同様、厳重に護られて行くことになった。」


「そして、千年近くが過ぎ、何度も名を変えた安倍と渡辺が、神乃(じんの)妖守(あやもり)になり、共に酒呑童子の頸を護ってきた。」


「…11年前迄は…」


真言(まこと)さん。本当のことを話してください。」


 針ニ(しんじ)が言った。鋼一(こういち)も、


「どんなことでも受け止めます。」


 懇願するように、言った。


 双子の両親…堅一(けんいち)心音(ここね)は、二人共に交通事故で死んだと聞かされている。


 しかし、二人共、口には出さなかったが幼い頃から、なんとなく(本当は違うんだろうな…)と、感じてはいた。


 そしてそれは、真言の先程からの思わせぶりな言い回しを聞いて確信に変わった。


 **********************


 退魔師と陰陽師は、その使命上、早死にすることが多い。


 その殆どは、(あやかし)討伐の際に亡くなることが多いが、妖守(あやもり)夫妻の場合は少し違っていた。


 11年前のその日、堅一は、いつものように書斎の机に向かって、日記を書いていた。


 それはまさしく“日記”であり、後世に残すための記録であった。


 **********************


 1954年の年末。雪が降り積もる中、神乃(じんの)家と同じ広大な敷地の中にある、妖守(あやもり)家の洋館風の建物の中には、堅一、心音夫妻と先日一歳になったばかりの双子の男の子達がいた。


 居間の暖炉には薪がくべられ、“パチパチ”と音を立てている。


 心音は、ソファーに腰掛け、双子の毛糸の帽子を編んでいた。


 横には双子が寝ているベビーベッドがあり、子供達がグズっても、すぐにあやせるようにしてある。


 突如、“冷やっ”と、した風が、流れ込んだと思うと、音もなく室内の灯りが消え、暖炉の薪の炎だけが怪しく揺れていた。


 心音も一流の退魔師だ。すぐに異変に気付き身構えた。









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