鋼一と針ニ-7
「あ、そうか。」
と、鋼一が腑に落ちたと、いった感じで上の方を見て呟いた。そして、
(じいちゃんって、そんなに強そうには見えないけどな)
と、針ニに囁いた。
呑気な二人を見て、真言は冷静さを取り戻し、思い直した。
(そうか…今闘ってもしもおれが殺られたら、コイツらも犠牲になるのは必然。最悪人質になることも考えられる…か…)
「そうだな、義父にはどんな結果になろうとも、出しゃばらないように、釘を刺してから出直して来ることにする…それならいいだろ?」
真言は、今すぐ闘いたい衝動を抑えてこう言った。
「仕方ないの。孤路狼に、一筆書かせて来いよ。」
天狗は渋々といった様子で約束した。
「大天狗様ともあろう者が、随分慎重なことで。」
真言が皮肉を言うと。
「あやつも化け物じゃから闘うのは、骨が折れるが…それだけが理由ではない。」
「もし、お主を殺ったとして、全国の退魔師、陰陽師連中に追われるのは、割に合わんから一筆書けってことじゃ。」
天狗はそう言った。
「道理だな。そうするとしよう。」
二人は、お互いの懸案を払拭し、約束を交わした。
神社の帰り道。
「あの上から落ちて来た妖。スゲェ迫力だったな。」
と、鋼一がぼやくと、隣を歩いていた針ニも、
「ああ…おれ睨まれたもん。息が止まった。」
と、素直に怖がった。
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三人が、岐阜市の神乃神社に帰ると、もう陽が傾いていた。
美琴は、広大な神社の中庭で、蛟や飯綱と遊んでいたが、三人の姿を見つけるやいなや、頬っぺたを膨らませて駆け寄ってきた。
車が停まると、待ちきれず運転席のドアを外から開けて、父親に向かって覚えたてのかわいい悪口を浴びせた。
そして、真言が降りて来るのを待ちきれず“ ポカポカ ”と、叩きながら涙を浮かべた。
まだ五歳ということもあり、自分だけ置いてきぼりにされたと、感じたのだろう。
「ごめんごめん。」
真言はそう言うと、美琴を“ ひょい ”と、抱き上げ、
「でも、大事なご用で、出かけてたんだよ。」
《これ以上は無い》と、いう程の優しい目をして、そう言った。
鋼一が、
「大事なご用」
と、チャチャを入れると、針ニが空気を読んで鋼一を小突いた。
真言は、そのまま美琴を肩車すると、
「お母さんは?」
と、聞いた。美琴が、
「どーじょー…」
と、少しふてくされ気味に答えると、真言は、
「そうか。じいじも一緒か?」
「お父さん達、もう少しだけ用事があるから、じいじと、お母さんと一緒に待っててな?」
と、言って、道場に向かって歩き出した。
双子も黙って続いた。




