鋼一と針ニ-5
「ソイツらがこの前言ってたお前の弟子か?」
「あんまり強そうには見えねえなあ?」
鎌鼬と槌の子が言うと鋼一が、
「何~、じゃあ勝負するかぁ?なんならまとめて来いよ!」
と、好戦的な一面を覗かせた。
反対に針ニは、
「やめなよ、真言さんの知り合いだろ?それに相手の能力も知らないのに戦うなんて無謀だよ。」
と、冷静な判断をした。
「ほぉ~っ…まだ、こっちの坊主の方が、見込みが有りそうやなぁ。」
鎌鼬がそう言うと鋼一の顔が益々茹でた蛸のようになった。
「まあまあ…」
真言は仲裁に入ると、
「爺さんは、いつもの松の枝に座ってんのか?」
と、話題を変えた。
怒りの矛先を突然逸らされて、鋼一は振り上げた拳をオズオズと引っ込めた。
「いや…今日はまだ見てないから、耳神社の方やないか?」
槌の子がそう言うと、
「そうか…すまんなつきあわせて。じゃあまたな。」
と、真言は踵を返し歩き出した。
双子は、
「また戻るの?」
と、不満を漏らしたが、真言が、
「何だ?もうへばったのか?」
と、言って嘲笑すると、
「そんなわけ無いじゃん!」
と、スタスタ歩き出した。
負けん気の強い双子を、真言は上手く操っているようだ。
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耳神社とは昔は違う名前だったが、大工の男が高熱を出して、生死の境を彷徨った時、女房が毎日神社に祈願して、生還したことが起源となる。
命は助かったものの、高熱に晒されたせいで男の耳は、まるで空気が詰まったようになって殆んど聞こえなくなっていた。
男は自分の命を救ってくれた神様に、毎日感謝を伝える為に、神社に参拝した。
ある朝、目を覚ますと男は、小鳥の囀ずりや近くの小川のせせらぎがハッキリ聞こえる事に気が付いた。
男は大喜びして、神社に御礼の参拝に行き、何を奉納したらいいか考えた。
それで、空気が詰まったような耳を、まるで孔が空いたかのように、すっきり通してくれたことを、自分の大工道具にかけて錐を年齢の数、簾のように編んで奉納することにした。
以来その噂が広まり、全国でも珍しい耳に効能がある神社として知る人ぞ知る名所となった。
その神社は、いつからか耳神社と呼ばれるようになって久しい。
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耳神社の短い階段を登ると、石で造られた鳥居がある。
双子はさっさと拝殿迄行く気で、鳥居をくぐるつもりだったが、“ グイッ ”と、二人の襟首をつかみ、真言が止めた。
と、同時に双子の鼻先をかすめ、鳥居の上から何かが凄い音と共に落ちて来た。
鋭い大きな爪。仔牛位なら、まるまる口に入りそうな巨大な口。“ ギョロリ ”とした、威圧感のある大きな目と眉。その妖は“ おとろし ”と、いう名前だった。
何よりも異様だったのは、“ おとろし ”には、顔と腕しかなかったことだ。




