鋼一と針ニ-4
20m程謡坂を登ると、何かが転がって近付いて来るのが見えた。
そのすぐ後ろを、つむじ風が追いかけて来ているのも見える。
双子はすぐに身構え、臨戦態勢を取ったが、真言は何事も無いかのように、“ スッ ”と、右手を肩の高さ迄上げた。
軽く握った指を開くと、瞬く間に高さ3m、幅5m程の細かい目の網の様な物が現れた。
網はまるで意思でもあるかのように、自ら5m位前方に立ち塞がった。
これで、道は全て塞がれたことになる。
勢いよく転がって来た得体の知れない物体と何故かつむじ風…正確に言えば、つむじ風の中にいた奇妙な動物の様なモノが一緒に網に絡まった。
網には何か粘着性のものが有り、その動物達は、
「参った参った。」
「降参降参。」
と、口々に言った。
真言が腕を下げると同時に、たちまち音もなく網が消えた。
残された動物の様なモノが二匹、ブツブツ文句を言いながら、毛繕いしたり、体を舐めたりしている。
「オイオイひでぇ目に合わせやがって。」
「少し驚かせてくれって言ったのは、お前の方やぞ。」
二匹の人語を喋る生き物達は、口々に真言を罵った。
「悪い悪い。こんな勢いよく、転がって来るとは思わんかった。」
真言は、そう謝罪すると、“ ワハハ ”と、笑って双子に、「鼬と、蛇だ。」
と、紹介した。
「オイオイ!」
「なんだそのいい加減な紹介は?」
と、二匹は不満を漏らした。
「悪い悪い。」
と、言いながらも二匹の様子が余程滑稽だったのか、真言は込み上げる笑いを抑えながら、
「…鎌鼬と、槌の子だ。」
と、二匹を指差しながら紹介した。
双子は声を揃えて、
「え~っ!」
と、驚いた。
この年(1965年)の四月、和歌山県でツチノコの目撃情報が出ると、北海道を除く、日本全国からも、おれもおれもと目撃情報が集まり、“ アッ ”と、言う間に大ブームになった。
不思議なことに、地方によって呼び名は様々あるが、槌の子、槌ん子、槌転び、槌蛇、バチ蛇等の特徴を表した言葉や目撃された姿形が余りにも似通っているのだ。
双子は、
「ツチノコって…」
「…未確認生物じゃなかったの?」
と、茫然とした。
「妖だよ。」
“ 当然だよ ”と、いう素振りで、真言は答える。
「しかも、言葉を喋り、コミュニケーションも取れる」
「あちこちで目撃されてるのに、一匹も捕まって無いだろ?」
「妖だから、見える者にしか見えない事を、こいつらは良く解っとんのさ。」




