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月光の針魔王(リトライ)  作者: 爺増田
鋼一と針ニ
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鋼一と針ニ-3

「コイツに気をつけて魚を捕るように言って、なるべく人の目に触れんよう伝えた。そんでそん時は済んだ。」


「それから、ここにもちょくちょく来て、この辺の様子を見たり、コイツから他の(あやかし)の情報を仕入れたりしてた。」


「少し前にはお前らを連れて来るから、姿を見せてやってくれとも伝えといた。」


「コイツは、この沼で暮らしとるで、湖を探さんでもええで、楽やしな。」


 ざっくりと説明すると、真言は双子に向かって、


「害の無い(あやかし)の三平だ。」


 と、(あやかし)を紹介した。


「オイオイ勝手に名前を付けるなよ。」


 と、(あやかし)は、反論した。


「昔から、お前みたいな奴は、“三平”って決まってるんだよ。」


 と、言って真言は笑った。


「おれの方が遥かに長生きしとんのやけどな。ゲッゲッゲ」


 (あやかし)は、おそらく笑い声であろう声を上げた。


 真言と(あやかし)は、旧くからの友人同士のように冗談を交えて会話を楽しんだ。


「ここに来る前は、尾張の池に400~500年済んでて5年位前に川を遡ってここに来た。」


 (あやかし)は、懐かしそうに言うと思い出したように、


「まだ出来上がっとらんかったけど、鮒や鯉は、もう山程居ったなあ。」


 と、呟いた。


「そう言やあ、この下の大きな岩が積み重なっとるところな?昔は鬼が棲んどったらしいで。」


 (あやかし)が双子に言った。


「京で酒呑童子(しゅてんどうじ)が暴れまくってた頃に、ここらで鬼といえば、鬼岩の“関の太郎” やったらしいな。」


 真言が付け加えた。


 (あやかし)に別れを告げると真言は双子に、


「どうや?流暢に会話が出来るやろ?」


 と、自分の事のように、少し誇らしげに自慢した。


「アイツみたいに良く喋る奴もいれば、無口で心を開かん奴もおる。」


「人間も(あやかし)も、あまり変わりはない。」


 真言は最後にこう言った。


「鬼以外はな…。」


 **********************


 《♬ 牛んぼ 牛んぼ 何処で鼻欠いた 西洞(さいと)の坂で 鼻欠いた ♫》


 と、いう唄もある “牛の鼻欠け坂” に続く謡坂(うとうざか)(土地の人は、おとざか と、言う)は、あまりにも長くて急な坂が続くため、旅人が気を紛らわす為に唄を謡ったという云い伝えもある。


 次に真言が双子を連れて来たのは、そんな中山道の通り道だった。


 まず、石畳が敷き詰められた、軽トラ一台がギリギリ通れる程度の “牛の鼻欠け坂” を民家の脇を抜けて歩いた。


 途中放し飼いになっている、元気な鶏達が縄張りを主張して、三人を突ついた。


 突然、両側が背の高い杉林に変わり、石畳も砂利道に変わると、ここからが謡坂(おとざか)だ。












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