刺青の男-4
“TATOO YOU since1982~”
そのBARはあまり目立たない所に、小さな文字でそう書かれていた。
「ひい…はぁ…もうダメ。み、水を飲ませてぇ…」
赤アロハを背負った白ジャケットが何度目かの弱音を口にした時、アーケードの場末にあるその店に辿り着いた。
「ほら、もう着いたから、とっとと歩けよ。」
針ニがこれもまた何度目かの蹴りを白ジャケットの尻に喰らわせ、軽々と坊主頭を担いだままでそう言った。
“キィ~ッ”と、音を立てて扉を引いて店に入るとカウンター席が目に入って来る。
右手には、椅子が三脚づつある丸テーブルが二つ。
左手にはトイレの入り口の扉があるだけだ。
客は一人も見当たらない。
「ちょうどよかった」
鋼一がそう呟くと、カウンターの下から“瞳はトルコ石のブルー、額は禿げ上がってる、口元に天使のピアス”
と、いった風貌の身長180cm位、ガッチリした体格の30~40歳代の欧米人らしきバーテンが面倒くさそうに立ち上がり、
「イラッシャイマセー」
と、言って藪睨みでこちらを見た。
「ハンク。眼鏡。」
そう鋼一が声をかけると、ハンクと呼ばれたバーテンは、慌てて胸ポケットから丸型レンズの眼鏡を取り出し、それをかけながら、
「OH~鋼一、美琴~久しぶり~」
と、親しげに挨拶した。
つい先程の藪睨みの強面と同一人物とは思えないような満面の笑みで。
「おまえの顔、ただでさえ恐いんだからさ、人前では絶対に眼鏡外すなって。」
針ニが冗談半分で言う。
気を失って担がれている、二人を見て、ハンクが真顔で、
「ションベン臭い…アカンで!早よ洗わな!」
と、叫び、カウンターの奥の居住エリアに繋がる扉を開けて“早く早く!”と、促した。
針ニは坊主頭を壁にもたれさせると、赤アロハをおぶった白ジャケットを、扉の奥の廊下の突き当たりにある、風呂場へ案内して、
「しっかり洗わんと、ハンクに殺されるゾ。」
と、脅しとも冗談とも取れるような言葉をかけて風呂場の扉を閉めた。
「ハンクって相変わらず、焦ると関西弁が出るのね。」
美琴が、そう言ってカウンター席に座ると、針ニが戻ってきた。
針ニは、「で、話ってのは?」と、切り出した。




